第16話 五条の事情
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現地実習は終われど、夏休みはまだまだ続く。
そして、姉妹校交流会での復学を目指して、悠仁君の潜伏生活と修業の日々も続いていた。
「ご、五条さん、こ、これ。ゆ、悠仁君に」
と、悠仁君への差し入れのお弁当を五条さんに差し出した。
お弁当を差し出す手も、呼びかける声も、ぎごちなく小刻みに震えている。
現地実習から戻ってから、ずっとこんな調子だ。
妙に意識してしまって、どうにも不自然になる。
それなのに、
「お、久々の和紗のお弁当だぁ」
五条さんはいつも通り飄々としてお弁当の中身を覗き見している。
「おー、美味そう〜。飾り気なしのアルミホイルの仕切りに、西京焼きと筑前煮・・・相変わらずおばあちゃんっぽい・・・もとい渋いお弁当だねぇ」
と、ひとこと多いのも相変わらずだ。
「あ、あとこれも、渡しといてくれますか?」
と、私は紙袋を差し出す。
それを見て、五条さんは小首を傾げる。
「何これ?」
「お土産です・・・きょ、京都の・・・」
「あぁ、そっか」
京都という言葉を口にするだけで、一連の出来事を思い出して私は動揺してしまうのに、五条さんに少しの動揺もみられない。
「お土産買うのすっかり忘れてたよー。了解、渡しとくね」
「お、お願いします」
と、五条さんが紙袋を受け取ろうと手を差し出した。
その時、私の指先が五条さんの手に触れて、
「あっ」
私は慌てて手を引っ込めた。
そのせいで危うく紙袋を落としそうになったのを、
「おっと」
五条さんがキャッチする。
「危ない危ない」
「・・・・・・」
「どうしたの、和紗。実習から帰ってからなんかおかしくない?」
「・・・・・・」
どうしたの、じゃなくて、どうしてあなたはそんなに今まで通りでいられるの?
勿論そんなこと言葉に出して尋ねることなんて出来なくて、口をつぐんで身を固くしていたら、
「疲れてる?熱でもある?」
と、五条さんが私の顔を覗き込んできた。
「!」
思わず私はビクッと肩を震わせ後ろにのけぞった。
さすがに五条さんもこの反応に戸惑うようにキョトンとしている。
「だ、大丈夫です。何でもないです」
そう言いながら、私はクルリと五条さんに背中を向けた。
「私もそろそろ出かけますね。野薔薇ちゃんと伏黒君に会うんです。お土産渡しに・・・」
「そうなんだ。ふたりによろしく~。あ、そうそう。くれぐれも悠仁のことは内緒にね。再会には感動のサプライズを演出しようと思って・・・」
「じゃ、行ってきます!!」
五条さんの言葉を最後まで聞かずに、私は部屋を飛び出した。
(だ、ダメだ・・・)
全っっっ然、滅っっっ茶苦茶、浮足立ってる!!
私だけが京都での出来事を引きずってる・・・。
(あぁぁあああ~~~っ)
私は心の中で唸り続けながら、待ち合わせ場所に向かった。
「和紗さーん!」
待ち合わせ場所のカフェに着くと、既に野薔薇ちゃんが来ていた。
私は野薔薇ちゃんが座る席に駆け寄る。
「ごめんね、お待たせ」
「大丈夫。私もさっき来たところだから」
「伏黒君は?」
「少し遅れて来るって」
「そっか」
と、私は野薔薇ちゃんの向かいの席に座った。
そして、改めて互いの顔を見る。
「・・・久しぶりだね」
私の言葉に、野薔薇ちゃんは深くうなずく。
「うん・・・、ホント。ずっと和紗さんに会いたかったんだけど、色々あって・・・」
「うん・・・」
「・・・アイツのこと、聞いてるでしょう」
アイツのこととは悠仁君のことだ。
野薔薇ちゃんは、本当は悠仁君が生きていることをまだ知らない。
「う、うん。五条さんから聞いた」
「驚いたでしょう」
「うん・・・。野薔薇ちゃんこそ、辛かったでしょう。大丈夫?」
「私は大丈夫」
野薔薇ちゃんは気丈にも言った。
「ただ、悔しくて。私、何も出来なかった。・・・だから、絶対強くなるって決めたんだ」
「・・・・・・」
そうは言っても、きっと悲しみは深かっただろう。
それでも、野薔薇ちゃんはそんな悲しみさえ抱えて前を向いている。
(でも・・・)
本当は、悠仁君生きてるのーっ!
あぁ、本当はいますぐそのことを伝えたい・・・。
でも、五条さんに口止めされてるし・・・。
そして、姉妹校交流会での復学を目指して、悠仁君の潜伏生活と修業の日々も続いていた。
「ご、五条さん、こ、これ。ゆ、悠仁君に」
と、悠仁君への差し入れのお弁当を五条さんに差し出した。
お弁当を差し出す手も、呼びかける声も、ぎごちなく小刻みに震えている。
現地実習から戻ってから、ずっとこんな調子だ。
妙に意識してしまって、どうにも不自然になる。
それなのに、
「お、久々の和紗のお弁当だぁ」
五条さんはいつも通り飄々としてお弁当の中身を覗き見している。
「おー、美味そう〜。飾り気なしのアルミホイルの仕切りに、西京焼きと筑前煮・・・相変わらずおばあちゃんっぽい・・・もとい渋いお弁当だねぇ」
と、ひとこと多いのも相変わらずだ。
「あ、あとこれも、渡しといてくれますか?」
と、私は紙袋を差し出す。
それを見て、五条さんは小首を傾げる。
「何これ?」
「お土産です・・・きょ、京都の・・・」
「あぁ、そっか」
京都という言葉を口にするだけで、一連の出来事を思い出して私は動揺してしまうのに、五条さんに少しの動揺もみられない。
「お土産買うのすっかり忘れてたよー。了解、渡しとくね」
「お、お願いします」
と、五条さんが紙袋を受け取ろうと手を差し出した。
その時、私の指先が五条さんの手に触れて、
「あっ」
私は慌てて手を引っ込めた。
そのせいで危うく紙袋を落としそうになったのを、
「おっと」
五条さんがキャッチする。
「危ない危ない」
「・・・・・・」
「どうしたの、和紗。実習から帰ってからなんかおかしくない?」
「・・・・・・」
どうしたの、じゃなくて、どうしてあなたはそんなに今まで通りでいられるの?
勿論そんなこと言葉に出して尋ねることなんて出来なくて、口をつぐんで身を固くしていたら、
「疲れてる?熱でもある?」
と、五条さんが私の顔を覗き込んできた。
「!」
思わず私はビクッと肩を震わせ後ろにのけぞった。
さすがに五条さんもこの反応に戸惑うようにキョトンとしている。
「だ、大丈夫です。何でもないです」
そう言いながら、私はクルリと五条さんに背中を向けた。
「私もそろそろ出かけますね。野薔薇ちゃんと伏黒君に会うんです。お土産渡しに・・・」
「そうなんだ。ふたりによろしく~。あ、そうそう。くれぐれも悠仁のことは内緒にね。再会には感動のサプライズを演出しようと思って・・・」
「じゃ、行ってきます!!」
五条さんの言葉を最後まで聞かずに、私は部屋を飛び出した。
(だ、ダメだ・・・)
全っっっ然、滅っっっ茶苦茶、浮足立ってる!!
私だけが京都での出来事を引きずってる・・・。
(あぁぁあああ~~~っ)
私は心の中で唸り続けながら、待ち合わせ場所に向かった。
「和紗さーん!」
待ち合わせ場所のカフェに着くと、既に野薔薇ちゃんが来ていた。
私は野薔薇ちゃんが座る席に駆け寄る。
「ごめんね、お待たせ」
「大丈夫。私もさっき来たところだから」
「伏黒君は?」
「少し遅れて来るって」
「そっか」
と、私は野薔薇ちゃんの向かいの席に座った。
そして、改めて互いの顔を見る。
「・・・久しぶりだね」
私の言葉に、野薔薇ちゃんは深くうなずく。
「うん・・・、ホント。ずっと和紗さんに会いたかったんだけど、色々あって・・・」
「うん・・・」
「・・・アイツのこと、聞いてるでしょう」
アイツのこととは悠仁君のことだ。
野薔薇ちゃんは、本当は悠仁君が生きていることをまだ知らない。
「う、うん。五条さんから聞いた」
「驚いたでしょう」
「うん・・・。野薔薇ちゃんこそ、辛かったでしょう。大丈夫?」
「私は大丈夫」
野薔薇ちゃんは気丈にも言った。
「ただ、悔しくて。私、何も出来なかった。・・・だから、絶対強くなるって決めたんだ」
「・・・・・・」
そうは言っても、きっと悲しみは深かっただろう。
それでも、野薔薇ちゃんはそんな悲しみさえ抱えて前を向いている。
(でも・・・)
本当は、悠仁君生きてるのーっ!
あぁ、本当はいますぐそのことを伝えたい・・・。
でも、五条さんに口止めされてるし・・・。