第16話 五条の事情
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「二日間、お疲れ様でした」
東京駅に着き下車し点呼を取った後、陵 先生が解散の挨拶を始めた。
「実習で得た経験を二学期からの学習に役立ててください」
と、差し障りない言葉で終わるのかと思いきや。
「そして・・・、この二日間予期せぬハプニングで皆んなに不安な思いをさせたことにお詫びします。ひとえに僕の指導力不足のせいです」
と、陵先生は私たち生徒に向かって頭を下げた。
「すみません、でした」
その沈痛な面持ちに、生徒一同は目を点にして一斉に静まり返る。
「あ、えっと・・・」
静けさの中、陵先生は気まずそうに続けた。
「じゃ、家に着くまでが遠足といいますので、その、寄り道はせず、気をつけて帰ってください」
すると、生徒の皆んなは一斉にドッと笑い出した。
「先生ー、何その挨拶〜」
「遠足って、小学生かよー」
「それに、先生がそんな責任感じることないって!」
「そうそう!」
思いがけない暖かな雰囲気に、陵先生だけでなく私も驚く。
(そっか)
陵先生は、皆んなに受け入れられていたんだ。
そのことが伝わったのか、
「・・・ははっ」
と、陵先生ははにかむように笑った。
私はそれが嬉しくて笑った。
「じゃー鶴來ちゃん、お疲れー!」
路線が異なるモイちゃん達と別れて、私は自分が乗る電車のホームへ上がっていく。
すると、そこで陵先生を見つけた。
「陵先生!」
私は駆けつけて声をかけた。
すると、陵先生は少し驚きながらこちらを振り向いた。
「鶴來さん」
「お疲れ様です」
「うん、お疲れ様」
「ご自宅はこっちの方向なんですか?」
と尋ねると、陵先生は首を横に振った。
「いや、学校に向かうんだ。色々報告しなくちゃいけないことがあるし・・・」
「そうなんですね。それはお疲れ様です・・・。大丈夫ですか?今朝まで入院してたのに・・・」
「うん、大丈夫。やるべきことはちゃんとやっておきたくて」
そして、陵先生は小さな声で言った。
「この実習が、僕の最後の授業だから」
聞き流しそうになったところで、
「・・・え?」
私は慌てて訊き返した。
「最後ってどうしてですか?ひょっとして、廃墟での事件せいですか?」
「ち、違うよ!」
陵先生は慌てて首を横に振った。
「休職中の先生が2学期から復職されるんだよ。僕はそれまでの臨時講師だからね」
「そっか・・・」
そういえばそうだった。
それでも急な事のように思えて、私は動揺を隠せなかった。
すると陵先生が、
「でも、鶴來さんとは五条さんを通じてまた会うこともあるかもしれないね」
と、私を気遣うように言った。
その言葉に私は頷く。
「そうですね」
「それに『あけづる』のことも、僕にアドバイス出来ることがあったらいつでも質問してくれたらいいから」
「・・・ありがとうございます」
気遣いの言葉がありがたく、一方で自分がお別れに駄々を捏ねた子どもの様で恥ずかしい。
私は気持ちを切り替えるべく、陵先生に質問した。
「・・・今後はどうされるんですか?」
「秋頃、専門学校時代の先輩が店を開くんだ。声をかけてもらってね。そこで職人として働くつもりだよ」
「そのお店って東京ですか?」
「うん。渋谷の方」
そこまで話すと、ホームに電車が滑り込んできた。
「じゃあ、僕はここで」
そう言って、陵先生は私に右手を差し出した。
「色々とありがとう」
「・・・・・・」
ありがとうだなんて、私は何もしていないのに。
私は返す言葉もなく、陵先生の手を握り返した。
そうして握手を交わした後、
「それじゃあ」
と、陵先生は電車に乗り込んだ。
それから間もなく反対側のホームに私が乗る電車がやって来た。
私も電車に乗り込み、帰路についた。
こうして、波乱万丈な二日間の現地実習が終わった。
東京駅に着き下車し点呼を取った後、
「実習で得た経験を二学期からの学習に役立ててください」
と、差し障りない言葉で終わるのかと思いきや。
「そして・・・、この二日間予期せぬハプニングで皆んなに不安な思いをさせたことにお詫びします。ひとえに僕の指導力不足のせいです」
と、陵先生は私たち生徒に向かって頭を下げた。
「すみません、でした」
その沈痛な面持ちに、生徒一同は目を点にして一斉に静まり返る。
「あ、えっと・・・」
静けさの中、陵先生は気まずそうに続けた。
「じゃ、家に着くまでが遠足といいますので、その、寄り道はせず、気をつけて帰ってください」
すると、生徒の皆んなは一斉にドッと笑い出した。
「先生ー、何その挨拶〜」
「遠足って、小学生かよー」
「それに、先生がそんな責任感じることないって!」
「そうそう!」
思いがけない暖かな雰囲気に、陵先生だけでなく私も驚く。
(そっか)
陵先生は、皆んなに受け入れられていたんだ。
そのことが伝わったのか、
「・・・ははっ」
と、陵先生ははにかむように笑った。
私はそれが嬉しくて笑った。
「じゃー鶴來ちゃん、お疲れー!」
路線が異なるモイちゃん達と別れて、私は自分が乗る電車のホームへ上がっていく。
すると、そこで陵先生を見つけた。
「陵先生!」
私は駆けつけて声をかけた。
すると、陵先生は少し驚きながらこちらを振り向いた。
「鶴來さん」
「お疲れ様です」
「うん、お疲れ様」
「ご自宅はこっちの方向なんですか?」
と尋ねると、陵先生は首を横に振った。
「いや、学校に向かうんだ。色々報告しなくちゃいけないことがあるし・・・」
「そうなんですね。それはお疲れ様です・・・。大丈夫ですか?今朝まで入院してたのに・・・」
「うん、大丈夫。やるべきことはちゃんとやっておきたくて」
そして、陵先生は小さな声で言った。
「この実習が、僕の最後の授業だから」
聞き流しそうになったところで、
「・・・え?」
私は慌てて訊き返した。
「最後ってどうしてですか?ひょっとして、廃墟での事件せいですか?」
「ち、違うよ!」
陵先生は慌てて首を横に振った。
「休職中の先生が2学期から復職されるんだよ。僕はそれまでの臨時講師だからね」
「そっか・・・」
そういえばそうだった。
それでも急な事のように思えて、私は動揺を隠せなかった。
すると陵先生が、
「でも、鶴來さんとは五条さんを通じてまた会うこともあるかもしれないね」
と、私を気遣うように言った。
その言葉に私は頷く。
「そうですね」
「それに『あけづる』のことも、僕にアドバイス出来ることがあったらいつでも質問してくれたらいいから」
「・・・ありがとうございます」
気遣いの言葉がありがたく、一方で自分がお別れに駄々を捏ねた子どもの様で恥ずかしい。
私は気持ちを切り替えるべく、陵先生に質問した。
「・・・今後はどうされるんですか?」
「秋頃、専門学校時代の先輩が店を開くんだ。声をかけてもらってね。そこで職人として働くつもりだよ」
「そのお店って東京ですか?」
「うん。渋谷の方」
そこまで話すと、ホームに電車が滑り込んできた。
「じゃあ、僕はここで」
そう言って、陵先生は私に右手を差し出した。
「色々とありがとう」
「・・・・・・」
ありがとうだなんて、私は何もしていないのに。
私は返す言葉もなく、陵先生の手を握り返した。
そうして握手を交わした後、
「それじゃあ」
と、陵先生は電車に乗り込んだ。
それから間もなく反対側のホームに私が乗る電車がやって来た。
私も電車に乗り込み、帰路についた。
こうして、波乱万丈な二日間の現地実習が終わった。