第15話 京都
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枝葉を揺らす風の音。
木洩れ日の揺らめき。
けたたましい蝉時雨。
その全てが、一瞬、静止した。
「・・・ぶっ」
私は空いている手で、思いっきり五条さんを突き飛ばした。
「ぶへぇーーーっ!!何するんですかーーーっ!?」
「えっ、そんなリアクションなの?さすがに僕も傷つくんだけど?」
「し、信じれない!!最低ーっ!!」
と、私はガシガシと手の甲で唇を拭った。
「・・・・・・」
そして、指先で自分の唇に触れる。
そこに残された、柔らかで温かい感触の余韻。
それを自覚したら途端に、頬が燃えるように熱くなった。
「ど、どうしてこんなこと・・・!」
「え・・・」
私の投げかけに、五条さんはしばし宙に視線を泳がせた後、答えた。
「んー・・・、わかんない」
「はぁっ!?」
なにそれ!!
「・・・でも、浮ついた気持ちでした訳じゃないよ」
と、五条さんはクスノキを見上げた。
「だって、和紗のお母さんが見てるし」
五条さんの視線につられて、私もクスノキを見上げた。
(・・・お母さん)
本当にここにいるのかわからないけれど、ずっと私を見守ってくれているのなら、もう心配いらないってわかるよね?
今の私には、大切な人達がいる。居場所があるの。
今一緒にいるこの人が、五条さんが、私を導いてくれたの。
私と五条さんの関係が何なのかは私にもわからない。
だけど、かけがえのない存在だということはわかる。
私はひとりじゃない。
だからお母さん、何も心配しなくていいからね。
「さ、何か甘いもの食べに行こうか」
と、五条さんは再び私の手を握って歩き出した。
(手なんか繋がなくても・・・)
と思うものの、私は何故かその手を振り払えなかった。
五条さんに曳かれるように、石段を降りていく。
その時、昨夜からずっと囚われていたあの不愉快な感触からやっと解放されたことに気づいた。
でも、『あのこと』を尚更五条さんに知られたくないと思った。
私はこの時、『呪い』にかけられたんだと思う。
───人を愛するという『呪い』に。
「どうしよう~!もう時間がない!」
再び市街地へ出て、大急ぎで行ってみたいお店を巡るものの、時間は刻々と過ぎて帰りの新幹線の時間が迫っていた。
「あの店もこの店もまだ行ってないのに~!」
「また今度来たらいいじゃない」
「そんな機会、またすぐにあると思えないもの・・・。せめて、あと一軒・・・」
と、私は石畳の路地を駆け足で行く。
その後ろを「やれやれ」と五条さんが悠然と続く。
「・・・あれ?」
石畳を進んでいくと、袋小路に行きついてしまった。
「迷っちゃった・・・」
「何やってんの」
ヒョコヒョコと追いついてきて五条さんが言う。
「地図アプリ見てたんじゃないの?いくら田舎者だからって迷わないでしょ、フツー」
「い、田舎者は事実ですけど、京都って碁盤の目でどこも似通ってて地名も難しくてややこしいんですよ・・・」
「っていうかこれ」
五条さんは言った。
「結界の中に入っちゃったね」
「結界?」
そう言われて、私は辺りを見回した。
すると、さっき通ってきた道が消えてなくなっていて私と五条さんは狭い袋小路の空間に閉じ込められていた。
「この通りに巣食う呪霊が張った結界に入り込んじゃったみたいだ」
「呪霊って、気づかなかったんですか?」
「気づいてたけど、和紗がさっさと行っちゃうんだもん」
「止めて下さいよ・・・」
「ま、入ったところで壊しちゃえばいいでしょ」
と、五条さんは右手を上げた、その時だった。
ピシッ
周囲を取り囲む木板造りの壁にヒビが入ったと思ったら。
バゴォン!
木板を突き破って、呪霊が飛び出してきた。
「ヌアァァァアーっ!」
飛び出して来たのは、呪霊だけではなかった。
提灯のような形の呪霊の頭を片手で掴んだ男の人がくっついて飛び出してきた。
木洩れ日の揺らめき。
けたたましい蝉時雨。
その全てが、一瞬、静止した。
「・・・ぶっ」
私は空いている手で、思いっきり五条さんを突き飛ばした。
「ぶへぇーーーっ!!何するんですかーーーっ!?」
「えっ、そんなリアクションなの?さすがに僕も傷つくんだけど?」
「し、信じれない!!最低ーっ!!」
と、私はガシガシと手の甲で唇を拭った。
「・・・・・・」
そして、指先で自分の唇に触れる。
そこに残された、柔らかで温かい感触の余韻。
それを自覚したら途端に、頬が燃えるように熱くなった。
「ど、どうしてこんなこと・・・!」
「え・・・」
私の投げかけに、五条さんはしばし宙に視線を泳がせた後、答えた。
「んー・・・、わかんない」
「はぁっ!?」
なにそれ!!
「・・・でも、浮ついた気持ちでした訳じゃないよ」
と、五条さんはクスノキを見上げた。
「だって、和紗のお母さんが見てるし」
五条さんの視線につられて、私もクスノキを見上げた。
(・・・お母さん)
本当にここにいるのかわからないけれど、ずっと私を見守ってくれているのなら、もう心配いらないってわかるよね?
今の私には、大切な人達がいる。居場所があるの。
今一緒にいるこの人が、五条さんが、私を導いてくれたの。
私と五条さんの関係が何なのかは私にもわからない。
だけど、かけがえのない存在だということはわかる。
私はひとりじゃない。
だからお母さん、何も心配しなくていいからね。
「さ、何か甘いもの食べに行こうか」
と、五条さんは再び私の手を握って歩き出した。
(手なんか繋がなくても・・・)
と思うものの、私は何故かその手を振り払えなかった。
五条さんに曳かれるように、石段を降りていく。
その時、昨夜からずっと囚われていたあの不愉快な感触からやっと解放されたことに気づいた。
でも、『あのこと』を尚更五条さんに知られたくないと思った。
私はこの時、『呪い』にかけられたんだと思う。
───人を愛するという『呪い』に。
「どうしよう~!もう時間がない!」
再び市街地へ出て、大急ぎで行ってみたいお店を巡るものの、時間は刻々と過ぎて帰りの新幹線の時間が迫っていた。
「あの店もこの店もまだ行ってないのに~!」
「また今度来たらいいじゃない」
「そんな機会、またすぐにあると思えないもの・・・。せめて、あと一軒・・・」
と、私は石畳の路地を駆け足で行く。
その後ろを「やれやれ」と五条さんが悠然と続く。
「・・・あれ?」
石畳を進んでいくと、袋小路に行きついてしまった。
「迷っちゃった・・・」
「何やってんの」
ヒョコヒョコと追いついてきて五条さんが言う。
「地図アプリ見てたんじゃないの?いくら田舎者だからって迷わないでしょ、フツー」
「い、田舎者は事実ですけど、京都って碁盤の目でどこも似通ってて地名も難しくてややこしいんですよ・・・」
「っていうかこれ」
五条さんは言った。
「結界の中に入っちゃったね」
「結界?」
そう言われて、私は辺りを見回した。
すると、さっき通ってきた道が消えてなくなっていて私と五条さんは狭い袋小路の空間に閉じ込められていた。
「この通りに巣食う呪霊が張った結界に入り込んじゃったみたいだ」
「呪霊って、気づかなかったんですか?」
「気づいてたけど、和紗がさっさと行っちゃうんだもん」
「止めて下さいよ・・・」
「ま、入ったところで壊しちゃえばいいでしょ」
と、五条さんは右手を上げた、その時だった。
ピシッ
周囲を取り囲む木板造りの壁にヒビが入ったと思ったら。
バゴォン!
木板を突き破って、呪霊が飛び出してきた。
「ヌアァァァアーっ!」
飛び出して来たのは、呪霊だけではなかった。
提灯のような形の呪霊の頭を片手で掴んだ男の人がくっついて飛び出してきた。