第15話 京都
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「・・・和紗」
五条さんに呼びかけられて、私は慌てて表情を引き締めた。
「な、何ですか?」
「あの廃墟ホテルに行った時、和紗と一緒にいたのは慶太だけだった?」
「え・・・」
「他に誰か一緒じゃなかった?」
「・・・・・・」
どうしてそんなことを訊くのだろう。
私もすぐに否定すればいいのに、五条さんのサングラス越しの視線に射止められて、黙り込んでしまった。
「現場の廃墟ホテルにふたつの『残穢』が見つかったんだ」
五条さんは言った。
その言葉につられて、私はハッとして顔を上げた。
「『残穢』って・・・」
確か、『こほろ坂』でひったくりの呪詛師が使っていた言葉だ。
私の言葉を受けて、五条さんは言った。
「言わば呪術の残り香だね。術式を行使した後の痕跡だよ」
「それがふたつ・・・ですか?」
「・・・・・・」
五条さんはジッと私の目を見つめてから頷いた。
「そう。正確にはひとつだけ、なんだけどね」
「・・・どういうことですか」
「元々あった一つ目の残穢を上書きするかのように、同じ場所で他の術式が行使され二つ目の残穢が残されていたんだ」
「・・・・・・」
「二つ目は、未登録のアンノウンの呪力。一つ目は、二つ目と交じり合ってしまって判別がつかなかった。僕の『眼』を以てしてもわからなかった」
残穢がふたつ?
上書きされた一つ目が夏油さんのものだとして、でも二つ目って・・・。
「今回の件とは関係ないのかもしれないけど、妙に引っかかってね。それで、和紗にきいたんだ」
と言うと、五条さんは私の目をジッと見て、もう一度質問した。
「昨夜、本当に他に誰もいなかった?」
だけど、私は答えられなかった。
張り詰めた沈黙の時が続く。その時だった。
「和紗ちゃん?」
ふいに呼びかけられて、私だけでなく五条さんも声の方を振り返った。
するとそこには、グレイヘアーの初老の女性が私の顔を確かめるようにジッと見つめていた。
「・・・・・・」
彼女が誰なのかすぐにはわからず、私はしばらく黙って彼女を見返していた。
だけど彼女は確信を得た様子で、
「やっぱり和紗ちゃんね・・・!」
と、私の目の前まで歩み寄ってきた。
彼女が目の前に来て、私はようやく思い出した。
「・・・おばあちゃん」
それを聞いて、その初老の女性・・・おばあちゃんは微笑んだ。
「何だか似てる子がいると思って声かけたら、やっぱり・・・!すっかり大きくなって!でも、小さな頃の面影が残ってるわ・・・!」
「おばあちゃんこそ・・・」
「髪も白くなってすっかりオバアチャンになっちゃったでしょう?って、そんなことよりどうして京都に?」
「あ、専門学校の行事で・・・」
と、おばあちゃんと会話を繰り広げていたら、間にいた五条さんが口を開いた。
「和紗、この人、誰?」
「あ・・・祖母です。母方の・・・」
私がそう答えると、五条さんは驚いたように短く息を飲んだ。
「和紗ちゃん、こちらの方は?」
今度は、おばあちゃんが五条さんのことを尋ねてきた。
「えっと・・・」
例によって答えあぐねていたら、五条さんが私を押しのけるようにおばあちゃんの前に出た。
「初めまして、おばあさま!僕は五条悟といいます!将来の和紗のお婿さんです!」
「あ、こらっ!」
また勝手なことを言って!
「え、婿?」
五条さんの言葉を聞いて、おばあちゃんは目をパチクリさせる。
「婿って、和紗ちゃんまだ確か18歳やそこらでしょ?もうそんな相手が?」
「いや、その、五条さんは・・・」
「耕造さんと耕嗣郎さんがよく許したわねぇ」
「・・・・・・」
おじいちゃんとお父さんの名前が出てきて、私は口をつぐんだ。
だって、おばあちゃんは知らない。
おじいちゃんが亡くなったことも。
お父さんが音信不通なことも。
私は、一切知らせていなかった。
五条さんに呼びかけられて、私は慌てて表情を引き締めた。
「な、何ですか?」
「あの廃墟ホテルに行った時、和紗と一緒にいたのは慶太だけだった?」
「え・・・」
「他に誰か一緒じゃなかった?」
「・・・・・・」
どうしてそんなことを訊くのだろう。
私もすぐに否定すればいいのに、五条さんのサングラス越しの視線に射止められて、黙り込んでしまった。
「現場の廃墟ホテルにふたつの『残穢』が見つかったんだ」
五条さんは言った。
その言葉につられて、私はハッとして顔を上げた。
「『残穢』って・・・」
確か、『こほろ坂』でひったくりの呪詛師が使っていた言葉だ。
私の言葉を受けて、五条さんは言った。
「言わば呪術の残り香だね。術式を行使した後の痕跡だよ」
「それがふたつ・・・ですか?」
「・・・・・・」
五条さんはジッと私の目を見つめてから頷いた。
「そう。正確にはひとつだけ、なんだけどね」
「・・・どういうことですか」
「元々あった一つ目の残穢を上書きするかのように、同じ場所で他の術式が行使され二つ目の残穢が残されていたんだ」
「・・・・・・」
「二つ目は、未登録のアンノウンの呪力。一つ目は、二つ目と交じり合ってしまって判別がつかなかった。僕の『眼』を以てしてもわからなかった」
残穢がふたつ?
上書きされた一つ目が夏油さんのものだとして、でも二つ目って・・・。
「今回の件とは関係ないのかもしれないけど、妙に引っかかってね。それで、和紗にきいたんだ」
と言うと、五条さんは私の目をジッと見て、もう一度質問した。
「昨夜、本当に他に誰もいなかった?」
だけど、私は答えられなかった。
張り詰めた沈黙の時が続く。その時だった。
「和紗ちゃん?」
ふいに呼びかけられて、私だけでなく五条さんも声の方を振り返った。
するとそこには、グレイヘアーの初老の女性が私の顔を確かめるようにジッと見つめていた。
「・・・・・・」
彼女が誰なのかすぐにはわからず、私はしばらく黙って彼女を見返していた。
だけど彼女は確信を得た様子で、
「やっぱり和紗ちゃんね・・・!」
と、私の目の前まで歩み寄ってきた。
彼女が目の前に来て、私はようやく思い出した。
「・・・おばあちゃん」
それを聞いて、その初老の女性・・・おばあちゃんは微笑んだ。
「何だか似てる子がいると思って声かけたら、やっぱり・・・!すっかり大きくなって!でも、小さな頃の面影が残ってるわ・・・!」
「おばあちゃんこそ・・・」
「髪も白くなってすっかりオバアチャンになっちゃったでしょう?って、そんなことよりどうして京都に?」
「あ、専門学校の行事で・・・」
と、おばあちゃんと会話を繰り広げていたら、間にいた五条さんが口を開いた。
「和紗、この人、誰?」
「あ・・・祖母です。母方の・・・」
私がそう答えると、五条さんは驚いたように短く息を飲んだ。
「和紗ちゃん、こちらの方は?」
今度は、おばあちゃんが五条さんのことを尋ねてきた。
「えっと・・・」
例によって答えあぐねていたら、五条さんが私を押しのけるようにおばあちゃんの前に出た。
「初めまして、おばあさま!僕は五条悟といいます!将来の和紗のお婿さんです!」
「あ、こらっ!」
また勝手なことを言って!
「え、婿?」
五条さんの言葉を聞いて、おばあちゃんは目をパチクリさせる。
「婿って、和紗ちゃんまだ確か18歳やそこらでしょ?もうそんな相手が?」
「いや、その、五条さんは・・・」
「耕造さんと耕嗣郎さんがよく許したわねぇ」
「・・・・・・」
おじいちゃんとお父さんの名前が出てきて、私は口をつぐんだ。
だって、おばあちゃんは知らない。
おじいちゃんが亡くなったことも。
お父さんが音信不通なことも。
私は、一切知らせていなかった。