第15話 京都
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「じゃあ僕はそろそろ行くね」
「はい・・・」
「和紗は観光楽しんで」
そうして五条さんは私の頭から手を放し、一歩踏み出した時だった。
「あ、いたいた。鶴來さーん!」
私たちがいる方へ駆けつける大野君の姿が見えた。
「大野君」
「あれ、五条さん?」
大野君は五条さんの姿を目にすると、驚きの声を上げた。
「ご無沙汰してます!どうして京都に?」
「出張」
大野君の質問に、五条さんはそっけなく答える。
五条さんは相変わらず大野君には感じが悪い。
だけど、大野君は気に留めることなくにこやかにしている。
「そうなんですか!それはお疲れ様です!あ、鶴來さん、一緒に観光して回ろうよ」
「あ、うん。いいよ」
「やった!じゃ、どこ行こ・・・」
「あー、どうしようー、困ったなー」
大野君の言葉に被せるように、どこかわざとらしい声を五条さんが上げた。
「僕、府立病院に行かなきゃならないんだけど、京都の右も左もわかんないやー。あ、ねぇねぇ大野君、道案内してくんない?」
「あ、それならあっちの案内所に尋ねれば・・・」
「まぁまぁ、そう言わず付き合えよぉ」
「え、あ、あのっ」
「じゃあね~、和紗~」
そして、大野君の首に右腕を回して強引に連れて行ってしまった。
「はっ!」
それまで放心状態だったモイちゃんが意識を取り戻した。
「あ、あれ?五条さんは!?」
「あ、もう行っちゃったよ」
「そうなんや・・・残念。もう少し話したかった。それにしても鶴來ちゃん・・・」
「ん?」
モイちゃんはギロリと鋭い目線を向けて言葉を続けた。
「自分は恋愛興味ないって顔しといて、実はあんな超絶美形イケメンと婚約済みなんて・・・・そりゃ余裕シャクシャクやわな」
「ち、ちがーう!それ誤解ーーーっ!!」
「誤解?何が誤解なん?はっきりお婿さん言うたやん、五条さん」
「お、お向かいさん、お向かいさんだって言ったの!」
と、弁明してモイちゃんの誤解をなんとか解いてから、私たちは観光地と甘味処を巡り歩いた。
テレビや写真でしか見たことなかった風景に感動して、観光地の賑やかな喧騒にワクワクして、匠の味と細やかな細工に感激して、目にも耳にも口にも刺激が沢山で忙しい。
だけど。
『これが、呪霊の味だよ』
ふとした瞬間に、あのことを思い出してしまう。
心の隙間を縫って、あの不愉快な感触が味が侵食してくる。
それを許さないために、私ははしゃいだ。
忘れるために、無理矢理はしゃいだ。
「いやぁ~、さすがに腹いっぱいやなぁ。それに歩き疲れたわー」
甘味処を八件回った後、歩き回って疲れた足と満腹のお腹を休ませるために、私とモイちゃんは鴨川沿いの川原に座り込んだ。
「しっかし暑いなぁ。東京より暑いんちゃうか、京都の夏は」
「京都は盆地っていうからね」
鴨川の水面が真夏の太陽の光を反射してキラキラしている。
とても暑いはずなのに、サラサラと流れる川の水音を耳にすると、不思議と涼やかな気分になるから不思議だ。
「・・・・・・」
この風景、見覚えがある。
ああ、そうだ。私が小さかった頃、京都に住んでいた頃・・・お母さんがまだ生きていた頃。
私は、お母さんと一緒にこの川辺に来たことがある。
確か、幼稚園の年長の時で・・・そうだ、河原町のデパートにランドセルを買いに行って、その後ここに。
『和紗』
お母さんの声を、思い出す。
『春が来たら小学生になるんだね。和紗がこのラベンダー色のランドセル背負う姿、お母さん、楽しみだなぁ』
ふいに思い出して、つい目が潤んで、川が眩しいフリして目を閉じた。
隣のモイちゃんはそんなことには気づかず、私に言った。
「さ、休憩したし、次はどこ行こか?」
「・・・モイちゃん」
「ん?」
私はゆっくり立ちあがった。
「ちょっと寄り道してもいいかな?」
「はい・・・」
「和紗は観光楽しんで」
そうして五条さんは私の頭から手を放し、一歩踏み出した時だった。
「あ、いたいた。鶴來さーん!」
私たちがいる方へ駆けつける大野君の姿が見えた。
「大野君」
「あれ、五条さん?」
大野君は五条さんの姿を目にすると、驚きの声を上げた。
「ご無沙汰してます!どうして京都に?」
「出張」
大野君の質問に、五条さんはそっけなく答える。
五条さんは相変わらず大野君には感じが悪い。
だけど、大野君は気に留めることなくにこやかにしている。
「そうなんですか!それはお疲れ様です!あ、鶴來さん、一緒に観光して回ろうよ」
「あ、うん。いいよ」
「やった!じゃ、どこ行こ・・・」
「あー、どうしようー、困ったなー」
大野君の言葉に被せるように、どこかわざとらしい声を五条さんが上げた。
「僕、府立病院に行かなきゃならないんだけど、京都の右も左もわかんないやー。あ、ねぇねぇ大野君、道案内してくんない?」
「あ、それならあっちの案内所に尋ねれば・・・」
「まぁまぁ、そう言わず付き合えよぉ」
「え、あ、あのっ」
「じゃあね~、和紗~」
そして、大野君の首に右腕を回して強引に連れて行ってしまった。
「はっ!」
それまで放心状態だったモイちゃんが意識を取り戻した。
「あ、あれ?五条さんは!?」
「あ、もう行っちゃったよ」
「そうなんや・・・残念。もう少し話したかった。それにしても鶴來ちゃん・・・」
「ん?」
モイちゃんはギロリと鋭い目線を向けて言葉を続けた。
「自分は恋愛興味ないって顔しといて、実はあんな超絶美形イケメンと婚約済みなんて・・・・そりゃ余裕シャクシャクやわな」
「ち、ちがーう!それ誤解ーーーっ!!」
「誤解?何が誤解なん?はっきりお婿さん言うたやん、五条さん」
「お、お向かいさん、お向かいさんだって言ったの!」
と、弁明してモイちゃんの誤解をなんとか解いてから、私たちは観光地と甘味処を巡り歩いた。
テレビや写真でしか見たことなかった風景に感動して、観光地の賑やかな喧騒にワクワクして、匠の味と細やかな細工に感激して、目にも耳にも口にも刺激が沢山で忙しい。
だけど。
『これが、呪霊の味だよ』
ふとした瞬間に、あのことを思い出してしまう。
心の隙間を縫って、あの不愉快な感触が味が侵食してくる。
それを許さないために、私ははしゃいだ。
忘れるために、無理矢理はしゃいだ。
「いやぁ~、さすがに腹いっぱいやなぁ。それに歩き疲れたわー」
甘味処を八件回った後、歩き回って疲れた足と満腹のお腹を休ませるために、私とモイちゃんは鴨川沿いの川原に座り込んだ。
「しっかし暑いなぁ。東京より暑いんちゃうか、京都の夏は」
「京都は盆地っていうからね」
鴨川の水面が真夏の太陽の光を反射してキラキラしている。
とても暑いはずなのに、サラサラと流れる川の水音を耳にすると、不思議と涼やかな気分になるから不思議だ。
「・・・・・・」
この風景、見覚えがある。
ああ、そうだ。私が小さかった頃、京都に住んでいた頃・・・お母さんがまだ生きていた頃。
私は、お母さんと一緒にこの川辺に来たことがある。
確か、幼稚園の年長の時で・・・そうだ、河原町のデパートにランドセルを買いに行って、その後ここに。
『和紗』
お母さんの声を、思い出す。
『春が来たら小学生になるんだね。和紗がこのラベンダー色のランドセル背負う姿、お母さん、楽しみだなぁ』
ふいに思い出して、つい目が潤んで、川が眩しいフリして目を閉じた。
隣のモイちゃんはそんなことには気づかず、私に言った。
「さ、休憩したし、次はどこ行こか?」
「・・・モイちゃん」
「ん?」
私はゆっくり立ちあがった。
「ちょっと寄り道してもいいかな?」