第14話 秘密の接吻(キス)
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私は歌姫さんにこれまでの経緯と状況を説明した。
五条さんの言いつけ通り、『みささぎ』のことは伏せて。
そして、夏油さんのことも話さなかった。
ううん、話せなかった。
『もし話してしまった時は・・・あの被呪者を殺して『みささぎ』を貰う』
そう脅されたこともあるけれど、それだけじゃない。
夏油さんの顔を思い出すと、あのキスのことも思い出してしまう。
恥ずかしくて、悔しくて、怖くて。
早く、忘れたい。
あのキスも、出会ったことも。
忘れなくちゃ。忘れなくちゃ。
忘れないと。
いつしか、私は自分にそう暗示をかけていた。
「・・・そう」
一通り話を聞き終えて、歌姫さんは頷いた。
だけど、とても納得したとは言えない表情だった。
それから、陵先生と祐平さん達は京都校の呪術師の治療を受けた後、県立病院に輸送され入院となった。
この件は、【ホテル万畳】に肝試しに来た祐平さん達と、それを止めに来た陵先生が建物の崩落に巻き込まれた事故として警察に処理された。
警察から連絡を受けた専門学校関係者は、現地実習の中止を検討したが、どのみち二日目は自由行動だということや手配した帰りの新幹線のこともあり、自己責任として現地実習の続行を認めた。
───こうして朝が来て、現地実習2日目。
「ウチの祐平 がご迷惑をおかけしました!」
宿を出る前に、『三間堂』の御主人と女将さんが謝罪にやって来て、私たちに深々と頭を下げた。
だけど、私をはじめ学生の皆はどう返事をすればいいのか困惑するだけだった。
「別に息子さんだけのせいちゃうけど・・・楽しい気分に水を差された気分やで・・・」
と、モイちゃんはボソリと呟く。
だけど事故の一報を聞いた時、「あの時、揉めてでも止めるべきやった」と後悔していたのもモイちゃんだった。
「女将さん」
私は女将さん・・・陵先生のお母さんに駆け寄った。
「陵先生と祐平さんの容体は?」
「さっき本人から連絡がありました」
私の問いかけに、女将さんは答えた。
「慶太も祐平も・・・友達と学生さんも意識を取り戻して命に別状はないそうです」
「そうですか・・・」
それを聞いて、私は心の底からホッとした。
私の『反転術式』の利きが悪かったのは、どうやら単純に私の呪力が弱かったためらしい。
「慶太から聞きました。貴女も、一緒に祐平たちを助けに行ってくれたって」
ふいにそう言われて、私は我に返った。
「救急車や警察に連絡も貴女がしてくれたのね」
「いや・・・」
本当は、京都校の関係者が手配したんだけど。
そんなこと知る由もない女将さんは、もう一度私に頭を下げた。
「ありがとう。どうかこれからも慶太をお願いします」
それからバスと電車を乗り継ぎ、私たちは再び京都を訪れた。
駅ビルから京都タワーを見上げる。
本当ならハイテンションではしゃいでるはずなのに、私もモイちゃんも今朝からずっと口数が少ない・・・と思ったら。
「あーっ、辞めや辞め!」
突然、モイちゃんが大声で言った。
「過ぎたことを後悔してもしゃあない!誰も死んでないし怪我も大したことなかったんや。不幸中の幸い!もう忘れて、ウチらは楽しもう!」
それに私は頷く。
「うん、そうだね。先生たちにお土産買ってあげよう」
「そうやそうや!じゃ、さっそくどこ行く?」
「都路里の特製抹茶パフェ!」
「よっしゃ、行こう!」
と、私たちが歩き出した時だった。
沢山の観光客の人混みの中をかき分けるように、見覚えのある人物がこちらに向かって歩いてきた。
「和紗!」
と、その人は私に向かって手を振っている。
「・・・五条さん!?」
私は驚いて声を上げた。
そう、その人は五条さんだった。
五条さんは私の目の前にやって来ると、口元にニッと笑みを浮かべた。
「来ちゃった♡」
つづく
五条さんの言いつけ通り、『みささぎ』のことは伏せて。
そして、夏油さんのことも話さなかった。
ううん、話せなかった。
『もし話してしまった時は・・・あの被呪者を殺して『みささぎ』を貰う』
そう脅されたこともあるけれど、それだけじゃない。
夏油さんの顔を思い出すと、あのキスのことも思い出してしまう。
恥ずかしくて、悔しくて、怖くて。
早く、忘れたい。
あのキスも、出会ったことも。
忘れなくちゃ。忘れなくちゃ。
忘れないと。
いつしか、私は自分にそう暗示をかけていた。
「・・・そう」
一通り話を聞き終えて、歌姫さんは頷いた。
だけど、とても納得したとは言えない表情だった。
それから、陵先生と祐平さん達は京都校の呪術師の治療を受けた後、県立病院に輸送され入院となった。
この件は、【ホテル万畳】に肝試しに来た祐平さん達と、それを止めに来た陵先生が建物の崩落に巻き込まれた事故として警察に処理された。
警察から連絡を受けた専門学校関係者は、現地実習の中止を検討したが、どのみち二日目は自由行動だということや手配した帰りの新幹線のこともあり、自己責任として現地実習の続行を認めた。
───こうして朝が来て、現地実習2日目。
「ウチの
宿を出る前に、『三間堂』の御主人と女将さんが謝罪にやって来て、私たちに深々と頭を下げた。
だけど、私をはじめ学生の皆はどう返事をすればいいのか困惑するだけだった。
「別に息子さんだけのせいちゃうけど・・・楽しい気分に水を差された気分やで・・・」
と、モイちゃんはボソリと呟く。
だけど事故の一報を聞いた時、「あの時、揉めてでも止めるべきやった」と後悔していたのもモイちゃんだった。
「女将さん」
私は女将さん・・・陵先生のお母さんに駆け寄った。
「陵先生と祐平さんの容体は?」
「さっき本人から連絡がありました」
私の問いかけに、女将さんは答えた。
「慶太も祐平も・・・友達と学生さんも意識を取り戻して命に別状はないそうです」
「そうですか・・・」
それを聞いて、私は心の底からホッとした。
私の『反転術式』の利きが悪かったのは、どうやら単純に私の呪力が弱かったためらしい。
「慶太から聞きました。貴女も、一緒に祐平たちを助けに行ってくれたって」
ふいにそう言われて、私は我に返った。
「救急車や警察に連絡も貴女がしてくれたのね」
「いや・・・」
本当は、京都校の関係者が手配したんだけど。
そんなこと知る由もない女将さんは、もう一度私に頭を下げた。
「ありがとう。どうかこれからも慶太をお願いします」
それからバスと電車を乗り継ぎ、私たちは再び京都を訪れた。
駅ビルから京都タワーを見上げる。
本当ならハイテンションではしゃいでるはずなのに、私もモイちゃんも今朝からずっと口数が少ない・・・と思ったら。
「あーっ、辞めや辞め!」
突然、モイちゃんが大声で言った。
「過ぎたことを後悔してもしゃあない!誰も死んでないし怪我も大したことなかったんや。不幸中の幸い!もう忘れて、ウチらは楽しもう!」
それに私は頷く。
「うん、そうだね。先生たちにお土産買ってあげよう」
「そうやそうや!じゃ、さっそくどこ行く?」
「都路里の特製抹茶パフェ!」
「よっしゃ、行こう!」
と、私たちが歩き出した時だった。
沢山の観光客の人混みの中をかき分けるように、見覚えのある人物がこちらに向かって歩いてきた。
「和紗!」
と、その人は私に向かって手を振っている。
「・・・五条さん!?」
私は驚いて声を上げた。
そう、その人は五条さんだった。
五条さんは私の目の前にやって来ると、口元にニッと笑みを浮かべた。
「来ちゃった♡」
つづく
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