第14話 秘密の接吻(キス)
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「げとう・・・?」
「夏に油とかいて夏油。珍しいよね。私も最初は戸惑ったよ」
と、夏油さんは自分の苗字のことなのに、まるで他人のことのように言った。
「自己紹介も済んだことだし、先に進もうか」
「・・・はい」
こうして、私と夏油さんは共に歩き出した。
私たちの前を、サトルが意気揚々と歩く。
夏油さんはそんなサトルを見て、
「あれは呪骸だね」
と、言った。
なので、私は頷く。
「そうなんです。ご存じなんですね、呪骸のこと」
「もちろん。『傀儡操術』・・・興味深い術式だ」
「こら、サトル。そんなに先々行かないの!はぐれたら危ないでしょ」
「サトル?あの呪骸の名前?」
「あ・・・はい」
しまった。人前なのに名前を呼んでしまった。
・・・恥ずかしい。
「サトルって」
夏油さんは冷やかすような笑みを浮かべながら言った。
「和紗の好きな人の名前?」
「ち、違います!」
「違うの?女の子は縫いぐるみに好きな人の名前をつけがちでしょう」
「つ、つけませんよ!これはサトルをくれた人が勝手に自分の名前をつけて・・・!妙にこの名前に馴染んじゃって、他の名前に変えにくくなったんです」
「そうなんだ?和紗の恋バナが聞き出せると思ったのに」
「夏油さん、僧侶なのにそんな俗っぽい話したがるなんて変ですよ」
「ふふふ。生臭坊主なんでね、私は」
暗く不気味な廃墟に、夏油さんのカラカラとした笑い声が響いた。
「・・・夏油さん」
ふと疑問に感じて、私は尋ねた。
「夏油さんは手駒にするため呪霊を集めてるって言ってましたけど、それは何のためですか?」
「・・・・・・」
やや間があってか、夏油さんは応えた。
「戦争のためだよ」
その不穏な響きに、私は「え」と戸惑いの声が出た。
しかし、
「・・・冗談だよ」
と、すぐに夏油さんは笑って、
「さっき和紗が言ってただろう。ポケモンみたいだって。私はコレクションを完成させたい。それだけだよ。私は、呪霊マスターになりたいんだ」
「・・・呪霊マスターって」
「ふふふ」
と、夏油さんは目を糸のように細めた。
優しい笑顔。
気さくな態度と柔和な話し声。
とても親しみやすい人だと思う。
・・・それなのに、心が騒めくのは何故だろう。
この人が、本心で笑っていないような気がするのはなぜなのだろう。
「・・・・・・」
そうだ。
初めて会った時もそうだった。
心がどこか他のところににあるような、そんな印象がこの人にはあった。
どうしてそんなことを思うのかはわからない。
だけど、心の奥底で渦巻く不穏が私自身に警告していた。
「気をつけろ」と。
最上階の五階フロアーまで辿り着いても、祐平さん達は見つからず、陵先生とも合流出来ずにいた。
夏油さんが探し求める、上級呪霊も。
「残るは屋上か・・・」
と、夏油さんは呟く。
「・・・・・・」
夏油さんは、強い。
ここまでたどり着くまで、相当な数の呪霊に遭遇したけれど、全てあっという間に夏油さんが祓ってしまった。
警戒心を抱いているのに、一緒にいると頼もしくて心強い。
そんな相反する気持ちで、心はなんだか奇妙な感じだ。
階段を上り、屋上に続く扉を開ける。
その瞬間、ザワッとざらつくような気配を感じた。
(これは・・・)
不快感に私は眉をひそめた。
不快なだけじゃない。なんだか息苦しい。
それくらいの、圧倒的な呪いの気配。
すると、いつも勇猛果敢なサトルが怯えるようにブルブル震え出して、ついには鞄の中へ入ってしまった。
只事ではないと不安に思いつつ、夏油さんに続いて私も屋上へ足を踏み出した。
ズチャッ・・・ズチュッ・・・グチャッ・・・ズブッ・・・
これもまた不快な、粘着質な音が聞こえてくる。
屋上に出てすぐに夏油さんは立ち止まり、
「・・・これは」
と、呟いた。
何があったというのだろう。
私は夏油さんの背後から覗き込み、その目の前の光景を目撃した。
「夏に油とかいて夏油。珍しいよね。私も最初は戸惑ったよ」
と、夏油さんは自分の苗字のことなのに、まるで他人のことのように言った。
「自己紹介も済んだことだし、先に進もうか」
「・・・はい」
こうして、私と夏油さんは共に歩き出した。
私たちの前を、サトルが意気揚々と歩く。
夏油さんはそんなサトルを見て、
「あれは呪骸だね」
と、言った。
なので、私は頷く。
「そうなんです。ご存じなんですね、呪骸のこと」
「もちろん。『傀儡操術』・・・興味深い術式だ」
「こら、サトル。そんなに先々行かないの!はぐれたら危ないでしょ」
「サトル?あの呪骸の名前?」
「あ・・・はい」
しまった。人前なのに名前を呼んでしまった。
・・・恥ずかしい。
「サトルって」
夏油さんは冷やかすような笑みを浮かべながら言った。
「和紗の好きな人の名前?」
「ち、違います!」
「違うの?女の子は縫いぐるみに好きな人の名前をつけがちでしょう」
「つ、つけませんよ!これはサトルをくれた人が勝手に自分の名前をつけて・・・!妙にこの名前に馴染んじゃって、他の名前に変えにくくなったんです」
「そうなんだ?和紗の恋バナが聞き出せると思ったのに」
「夏油さん、僧侶なのにそんな俗っぽい話したがるなんて変ですよ」
「ふふふ。生臭坊主なんでね、私は」
暗く不気味な廃墟に、夏油さんのカラカラとした笑い声が響いた。
「・・・夏油さん」
ふと疑問に感じて、私は尋ねた。
「夏油さんは手駒にするため呪霊を集めてるって言ってましたけど、それは何のためですか?」
「・・・・・・」
やや間があってか、夏油さんは応えた。
「戦争のためだよ」
その不穏な響きに、私は「え」と戸惑いの声が出た。
しかし、
「・・・冗談だよ」
と、すぐに夏油さんは笑って、
「さっき和紗が言ってただろう。ポケモンみたいだって。私はコレクションを完成させたい。それだけだよ。私は、呪霊マスターになりたいんだ」
「・・・呪霊マスターって」
「ふふふ」
と、夏油さんは目を糸のように細めた。
優しい笑顔。
気さくな態度と柔和な話し声。
とても親しみやすい人だと思う。
・・・それなのに、心が騒めくのは何故だろう。
この人が、本心で笑っていないような気がするのはなぜなのだろう。
「・・・・・・」
そうだ。
初めて会った時もそうだった。
心がどこか他のところににあるような、そんな印象がこの人にはあった。
どうしてそんなことを思うのかはわからない。
だけど、心の奥底で渦巻く不穏が私自身に警告していた。
「気をつけろ」と。
最上階の五階フロアーまで辿り着いても、祐平さん達は見つからず、陵先生とも合流出来ずにいた。
夏油さんが探し求める、上級呪霊も。
「残るは屋上か・・・」
と、夏油さんは呟く。
「・・・・・・」
夏油さんは、強い。
ここまでたどり着くまで、相当な数の呪霊に遭遇したけれど、全てあっという間に夏油さんが祓ってしまった。
警戒心を抱いているのに、一緒にいると頼もしくて心強い。
そんな相反する気持ちで、心はなんだか奇妙な感じだ。
階段を上り、屋上に続く扉を開ける。
その瞬間、ザワッとざらつくような気配を感じた。
(これは・・・)
不快感に私は眉をひそめた。
不快なだけじゃない。なんだか息苦しい。
それくらいの、圧倒的な呪いの気配。
すると、いつも勇猛果敢なサトルが怯えるようにブルブル震え出して、ついには鞄の中へ入ってしまった。
只事ではないと不安に思いつつ、夏油さんに続いて私も屋上へ足を踏み出した。
ズチャッ・・・ズチュッ・・・グチャッ・・・ズブッ・・・
これもまた不快な、粘着質な音が聞こえてくる。
屋上に出てすぐに夏油さんは立ち止まり、
「・・・これは」
と、呟いた。
何があったというのだろう。
私は夏油さんの背後から覗き込み、その目の前の光景を目撃した。