第14話 秘密の接吻(キス)
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「嫌やーっ!俺を一人にせんとってーっ!」
祐平さんの友達を駐車場に残して、ホテル内に向かうことにした。
「君はここで待ってて」
と言いながら、陵先生はすがりつく彼を何とか引き離す。
そうして、私と陵先生はホテル内に入った。
完全に廃墟化した建物は、壁や窓などあらゆる部分が損壊している。
壁は鉄骨が剥き出しになっていて、大規模なグラフィティアートの落書きが描かれている。
窓ガラスは割れてひしゃげた枠組みだけが残され、そこからは冷たい夜風が吹き込み、ボロ切れと化したカーテンを揺らしている。
床には窓ガラスの破片が散らばり、でこぼこになったタイルの隙間からは木の根が生え出ている。
それでも、華美なソファやシャンデリアなどの家具や、壁に飾られた絵画などの調度品が残されていて、ここがかつて賑わっていたホテルだった面影を忍ばせている。
だけど。
(・・・あちこちに呪いの気配がある)
入った瞬間にわかった。
もはや、ここは日常の世界ではなくて呪いの世界なのだ。
陵先生もそれを感じ取ったようで、緊張の面持ちでそっとポケットから一本の小刀を取り出した。
「それは?」
「これ?五条さんからもらった呪具なんだ」
私の問いかけに、陵先生が答えた。
「僕から漏れ出た呪力を吸収するらしい」
「あぁ、それが」
そういえば五条さんがそんなこと話してたな。
確かに和菓子作りに使う道具に似ていて、使い勝手がよさそうだ。
・・・っていうか、そんなことより。
「陵先生、呪霊のことは?以前から存在を知ってたんですか?」
「いや、五条さんに修業つけてもらうようになってからだよ。ちゃんと見えるようになったのも」
「そうなんですか」
「・・・鶴來さんは、いつから?」
「私もはっきり見えるようになったのは最近のことです」
今度は私が問いかけに答える。
「私の故郷は祓えない呪いを受けていて、その呪いから故郷の人達を護るために、五条さんから呪術を教わっているんです」
それを聞いた陵先生は、驚いた顔をした。
「そっか・・・そんな事情が・・・」
「・・・・・・」
「ごめん。鶴來さんだって大変な事情を抱えてるのに、僕ばかりが辛いみたいなことを・・・」
「いいえ。私は別に・・・私自身が呪いを抱えてるわけじゃないし」
そして、私は話題を切り替えることにした。
これ以上私自身のことを話し続ければ、『糠田が森』『額多之君』『額多ヶ守』の禁句を口に出しかねない。
「陵先生、呪霊に遭遇してもくれぐれも『みささぎ』は・・・」
「わかってる」
陵先生は小刀を握る手にグッと力を込めながらうなずいた。
「顕現させない。暴走なんてさせない。僕は、僕の呪力 は人を護るために使いたいんだ」
「・・・・・・」
その言葉を聞いて、私は気づいた。
陵先生自身は気づいてないかもしれないけど、先生は変わったことを。
階段を上り、まず二階のフロアーを探索することにした。
もちろん二階にもフロアーにも呪霊の気配があるのだけれど、
『オ、オユウショクハ、エンカイカイジョウニテテ、バ、バイィキンンングニナリマァアススス・・・』
『チ、チェックイイインン、オネガイシマス・・・』
呪霊は物陰に隠れながら、遠巻きにこちらの様子を伺っているだけで、襲いかかってくる気配はない。
(そうか。『みささぎ』がいるから)
自分たちより強力な呪いの存在があるから、私たちに近づけないんだ。
だけど、そんなことは露知らず、陵先生はキョロキョロ怯えながら周囲を警戒している。
二階に誰もいなかったので、続いて三階フロアーを探索していた時だった。
ミシッ・・・
部屋のひとつを探索していたら、私の足元の床が大きな音を立てて軋んだ。
その次の瞬間、
「!!」
床が突然、バキバキバキバキ・・・・!!と、激しい音を立てたと思った時には、
「きゃーーーっ!?」
床板が抜け落ちて、私はそのまま下の階へ落下していた。
祐平さんの友達を駐車場に残して、ホテル内に向かうことにした。
「君はここで待ってて」
と言いながら、陵先生はすがりつく彼を何とか引き離す。
そうして、私と陵先生はホテル内に入った。
完全に廃墟化した建物は、壁や窓などあらゆる部分が損壊している。
壁は鉄骨が剥き出しになっていて、大規模なグラフィティアートの落書きが描かれている。
窓ガラスは割れてひしゃげた枠組みだけが残され、そこからは冷たい夜風が吹き込み、ボロ切れと化したカーテンを揺らしている。
床には窓ガラスの破片が散らばり、でこぼこになったタイルの隙間からは木の根が生え出ている。
それでも、華美なソファやシャンデリアなどの家具や、壁に飾られた絵画などの調度品が残されていて、ここがかつて賑わっていたホテルだった面影を忍ばせている。
だけど。
(・・・あちこちに呪いの気配がある)
入った瞬間にわかった。
もはや、ここは日常の世界ではなくて呪いの世界なのだ。
陵先生もそれを感じ取ったようで、緊張の面持ちでそっとポケットから一本の小刀を取り出した。
「それは?」
「これ?五条さんからもらった呪具なんだ」
私の問いかけに、陵先生が答えた。
「僕から漏れ出た呪力を吸収するらしい」
「あぁ、それが」
そういえば五条さんがそんなこと話してたな。
確かに和菓子作りに使う道具に似ていて、使い勝手がよさそうだ。
・・・っていうか、そんなことより。
「陵先生、呪霊のことは?以前から存在を知ってたんですか?」
「いや、五条さんに修業つけてもらうようになってからだよ。ちゃんと見えるようになったのも」
「そうなんですか」
「・・・鶴來さんは、いつから?」
「私もはっきり見えるようになったのは最近のことです」
今度は私が問いかけに答える。
「私の故郷は祓えない呪いを受けていて、その呪いから故郷の人達を護るために、五条さんから呪術を教わっているんです」
それを聞いた陵先生は、驚いた顔をした。
「そっか・・・そんな事情が・・・」
「・・・・・・」
「ごめん。鶴來さんだって大変な事情を抱えてるのに、僕ばかりが辛いみたいなことを・・・」
「いいえ。私は別に・・・私自身が呪いを抱えてるわけじゃないし」
そして、私は話題を切り替えることにした。
これ以上私自身のことを話し続ければ、『糠田が森』『額多之君』『額多ヶ守』の禁句を口に出しかねない。
「陵先生、呪霊に遭遇してもくれぐれも『みささぎ』は・・・」
「わかってる」
陵先生は小刀を握る手にグッと力を込めながらうなずいた。
「顕現させない。暴走なんてさせない。僕は、僕の
「・・・・・・」
その言葉を聞いて、私は気づいた。
陵先生自身は気づいてないかもしれないけど、先生は変わったことを。
階段を上り、まず二階のフロアーを探索することにした。
もちろん二階にもフロアーにも呪霊の気配があるのだけれど、
『オ、オユウショクハ、エンカイカイジョウニテテ、バ、バイィキンンングニナリマァアススス・・・』
『チ、チェックイイインン、オネガイシマス・・・』
呪霊は物陰に隠れながら、遠巻きにこちらの様子を伺っているだけで、襲いかかってくる気配はない。
(そうか。『みささぎ』がいるから)
自分たちより強力な呪いの存在があるから、私たちに近づけないんだ。
だけど、そんなことは露知らず、陵先生はキョロキョロ怯えながら周囲を警戒している。
二階に誰もいなかったので、続いて三階フロアーを探索していた時だった。
ミシッ・・・
部屋のひとつを探索していたら、私の足元の床が大きな音を立てて軋んだ。
その次の瞬間、
「!!」
床が突然、バキバキバキバキ・・・・!!と、激しい音を立てたと思った時には、
「きゃーーーっ!?」
床板が抜け落ちて、私はそのまま下の階へ落下していた。