第14話 秘密の接吻(キス)
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「ふさわしくない・・・?」
「・・・怖いんだ。僕があの家にいることで、家族を傷つけることになってしまったら」
車はグネグネとした山道に入っている。
陵先生は細かいハンドルさばきを繰り返しながら、言葉を続けた。
「・・・実際、一度『みささぎ』で同級生に怪我を負わせたことがあって、それで家族が近所から白い目で見られることがあった」
「・・・・・・」
「それで、僕は・・・」
「それで、私のことも避けてるんですか!?」
「え」
私の強い語気に、陵先生は驚く。
「陵先生、ずっと私のこと避けてましたよね!私だけじゃなくて、他の生徒との間にも壁を作って!」
「え、あ、う、あうぅ・・・」
私に問い詰められて、陵先生はしどろもどろになる。
車内がグラグラと揺れるのは、山道だけじゃなく、先生が動揺しているせいでもある。
だけど、私は問い詰めるのを辞めなかった。
「そうやって人と関わることから逃げて、それで良いって先生は本当に思ってるんですか?」
「・・・・・・」
「本当は、先生はもっと人と関わりたい、人から必要とされたいって、思ってるんじゃないんですか?」
「・・・・・・」
「じゃなきゃ、和菓子の先生になんてなるはずがない・・・!」
「・・・・・・」
「和菓子作りを通して、人と関わりたいって思ってるんじゃないですか?」
私は、ずっとずっとそう思ってきた。
和菓子を通じて、故郷に・・・糠田が森に深く根付きたい。人と繋がりたい。必要とされたい。
呪いじゃなくて、人の手から作られる小さな和菓子で。
そうして、私たちは繋がることが出来た。
私と五条さんも。
そして、私と陵先生だって。
それを無かったことにしたくないの。
「・・・一人きりで心を閉ざさないでください」
「・・・・・・」
「私も、五条さんも、陵先生の仲間なんですよ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
それから、車内は静まり返ってしまった。
だけど、それは気まずい沈黙じゃなかった。
陵先生を取り巻く空気が、少し柔らかくなった気がする。
それは、ほんのちょっぴりなのかもしれないけど。
分厚い壁が、少し薄くなった気がした。
それから間もなく山頂に着き、陵先生は車を【ホテル万畳】の駐車場へ停車させた。
敷地周辺は一応立入禁止のフェンスで囲まれていたけれど、老朽化してほぼフェンス役割は為していない。
廃墟なので当然街燈は点いておらず、周囲は真っ暗闇だ。
持ってきていた懐中電灯を片手に車を降りると、
「た、助けてくれ・・・!」
祐平さん達が乗ってきたと思われるミニバンから、男の子が一人降りてきて、こちらに駆け寄ってきた。
「君は、祐平の・・・」
陵先生が呟いた通り、その人は祐平さんの友達の一人・・・さっき私に凄んできた人だった。
「他の皆は?祐平は?」
「まだ、ホテルの中に・・」
「一体、どういう状況で・・・」
「・・・男女ひとりずつのカップルで、それぞれ時間差でホテルの中に入ろうってことになったんや・・・」
彼は説明を始めた。
その顔色は真っ青に青ざめている。
「俺と祐平はあぶれてもうて、二人で中に入ったんやけど・・・そしたら、先に入った連中の悲鳴が次々に聞こえてきて・・・そ、そんで・・・!」
ここまで話すと、彼は突然ブルブルと震え出した。
「ば、バケモノが、得体のしれんバケモノが、目の前に現れて・・・!」
それを聞いて、私と陵先生は息を飲んだ。
「祐平は皆のとこ行く言うて行ってしもうて・・・でも、俺はビビって逃げてもうた・・・」
(・・・呪霊だ)
やはり、この【ホテル万畳】には呪霊が発生している。
(・・・とにかく、ホテルの中にいる祐平さん達の救助を最優先だ。呪霊を祓うことは考えない方がいい。私と陵先生に、それほどの呪力 はないもの)
陵先生も同じことを考えたのだろう。
意を決したようにひとつ息を吐いてから、
「・・・祐平たちを探してくる。鶴來さんと君はここで待ってて」
と、言った。
当然、私は不服の声を上げる。
「嫌です。私も先生と一緒に行きます」
「え、でも・・・」
「先生も私が一緒にいた方がいいでしょう?」
『みささぎ』のこともあるし。
何より、この人と二人きりにされるのがイヤだ(キッパリ)。
そんな訳で。
「・・・怖いんだ。僕があの家にいることで、家族を傷つけることになってしまったら」
車はグネグネとした山道に入っている。
陵先生は細かいハンドルさばきを繰り返しながら、言葉を続けた。
「・・・実際、一度『みささぎ』で同級生に怪我を負わせたことがあって、それで家族が近所から白い目で見られることがあった」
「・・・・・・」
「それで、僕は・・・」
「それで、私のことも避けてるんですか!?」
「え」
私の強い語気に、陵先生は驚く。
「陵先生、ずっと私のこと避けてましたよね!私だけじゃなくて、他の生徒との間にも壁を作って!」
「え、あ、う、あうぅ・・・」
私に問い詰められて、陵先生はしどろもどろになる。
車内がグラグラと揺れるのは、山道だけじゃなく、先生が動揺しているせいでもある。
だけど、私は問い詰めるのを辞めなかった。
「そうやって人と関わることから逃げて、それで良いって先生は本当に思ってるんですか?」
「・・・・・・」
「本当は、先生はもっと人と関わりたい、人から必要とされたいって、思ってるんじゃないんですか?」
「・・・・・・」
「じゃなきゃ、和菓子の先生になんてなるはずがない・・・!」
「・・・・・・」
「和菓子作りを通して、人と関わりたいって思ってるんじゃないですか?」
私は、ずっとずっとそう思ってきた。
和菓子を通じて、故郷に・・・糠田が森に深く根付きたい。人と繋がりたい。必要とされたい。
呪いじゃなくて、人の手から作られる小さな和菓子で。
そうして、私たちは繋がることが出来た。
私と五条さんも。
そして、私と陵先生だって。
それを無かったことにしたくないの。
「・・・一人きりで心を閉ざさないでください」
「・・・・・・」
「私も、五条さんも、陵先生の仲間なんですよ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
それから、車内は静まり返ってしまった。
だけど、それは気まずい沈黙じゃなかった。
陵先生を取り巻く空気が、少し柔らかくなった気がする。
それは、ほんのちょっぴりなのかもしれないけど。
分厚い壁が、少し薄くなった気がした。
それから間もなく山頂に着き、陵先生は車を【ホテル万畳】の駐車場へ停車させた。
敷地周辺は一応立入禁止のフェンスで囲まれていたけれど、老朽化してほぼフェンス役割は為していない。
廃墟なので当然街燈は点いておらず、周囲は真っ暗闇だ。
持ってきていた懐中電灯を片手に車を降りると、
「た、助けてくれ・・・!」
祐平さん達が乗ってきたと思われるミニバンから、男の子が一人降りてきて、こちらに駆け寄ってきた。
「君は、祐平の・・・」
陵先生が呟いた通り、その人は祐平さんの友達の一人・・・さっき私に凄んできた人だった。
「他の皆は?祐平は?」
「まだ、ホテルの中に・・」
「一体、どういう状況で・・・」
「・・・男女ひとりずつのカップルで、それぞれ時間差でホテルの中に入ろうってことになったんや・・・」
彼は説明を始めた。
その顔色は真っ青に青ざめている。
「俺と祐平はあぶれてもうて、二人で中に入ったんやけど・・・そしたら、先に入った連中の悲鳴が次々に聞こえてきて・・・そ、そんで・・・!」
ここまで話すと、彼は突然ブルブルと震え出した。
「ば、バケモノが、得体のしれんバケモノが、目の前に現れて・・・!」
それを聞いて、私と陵先生は息を飲んだ。
「祐平は皆のとこ行く言うて行ってしもうて・・・でも、俺はビビって逃げてもうた・・・」
(・・・呪霊だ)
やはり、この【ホテル万畳】には呪霊が発生している。
(・・・とにかく、ホテルの中にいる祐平さん達の救助を最優先だ。呪霊を祓うことは考えない方がいい。私と陵先生に、それほどの
陵先生も同じことを考えたのだろう。
意を決したようにひとつ息を吐いてから、
「・・・祐平たちを探してくる。鶴來さんと君はここで待ってて」
と、言った。
当然、私は不服の声を上げる。
「嫌です。私も先生と一緒に行きます」
「え、でも・・・」
「先生も私が一緒にいた方がいいでしょう?」
『みささぎ』のこともあるし。
何より、この人と二人きりにされるのがイヤだ(キッパリ)。
そんな訳で。