第14話 秘密の接吻(キス)
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お茶を頂いてひと息ついた後、さっそく実習が始まった。
工房に向かい、最中の製造を体験させてもらう。
餡や生地を練るのは力を要し、最中の生地を焼くのは真夏の今とても過酷で、そんな作業をずっと立ちっぱなしで行う実習は、夕方まで続いた。
「ただいまーっ」
実習が終わりに差し掛かり片付けをしていると、大学生のくらいの男の人がひょっこりと工房に顔を出した。
すると、さっきまで穏やかで優しく最中づくりを教えてくれていた御当主の顔がカッと鬼の形相に変わった。
「祐平!どこ遊びに行っとった!?今日は店の手伝いをしろと言ってたやろ!」
祐平と呼ばれたその男の人は、どうやら御当主のもう一人の息子さんらしい。
(つまり、陵先生の義弟 さん・・・)
血の繋がりがないから、やはり似ていない。
そうでなくても、茶髪にピアスの祐平さんはどこか軟派な印象で、陵先生とは真逆のタイプだ。
祐平さんは怒鳴られるのもどこ吹く風といった様子で、
「ゴメンゴメン。うっかりアルバイトのシフト入れてもうてたからさ」
と、言った。
それを聞いて御当主は溜息をついた。
「バイトなんかせんでもこの店の手伝いをすればええやろう」
「いややって。バイトの方が時給ええもん。それに、バイト先には可愛ええ女子おるしな」
「・・・アホ言うてんと実習生の皆さんに挨拶せんかっ」
すると、祐平さんは私たちの方を向いて非常に軽い調子で自己紹介を始めた。
「あ、どーも。俺、この家の三男の三間祐平っていいまーす。よろしくおねがいしまーす」
そして、私の方へ近づいて来ると顔を覗き込んできた。
「さっきはああ言うたけど、やっぱ店の手伝いしときゃよかったなぁ。実習生、可愛ええコおるやん。キミ、名前何て言うの?」
「・・・え・・・」
私が困惑していると、
「祐平」
陵先生が私と祐平さんの間に割って入ってきた。
すると、祐平さんは私から陵先生の方へと顔を向けた。
「慶太兄ちゃん、おかえり!久しぶりやなぁ。元気やった?」
「うん」
「今晩一緒に飲まへん?」
「飲める訳ないだろ。今回はプライベートの帰省じゃないんだ。実習で生徒を連れてるんだから・・・」
と、会話する二人の顔を私は交互に見る。
(意外にも仲良し・・・)
「でも、慶太兄ちゃんなかなか帰省せぇへんねんもん。今回だって実習じゃなきゃ帰るつもりなかったんやろ?せっかくの機会やん。飲もうや〜」
と、祐平さんは諦めない。
しかし陵先生は首を振った。
「言っただろ。無理だって」
「ちぇっ」
と、祐平さんはようやく諦めたようだった。
そして再び私の方に向き直すと、
「じゃ、またねー」
と言い残して工房から去って行った。
(なんかすごく軽い人だな・・・)
と、呆気にいると、
「弟が馴れ馴れしくしてごめん」
と、陵先生が言った。
「昔から異常に人懐っこいヤツなんだ。初めて会う人に対しては物珍しさで余計に。悪気はないんだよ」
「あ、大丈夫です」
私は言った。
陵先生と面と向かって会話するのは久しぶりだ。
「久しぶりに会えたのに、一緒にゆっくり出来る時間がなくて残念ですね」
「・・・仕方ないよ。帰省してる訳じゃないから」
「あまり帰ってないんですか?さっき義弟さんが言ってた・・・」
「・・・うん」
そう頷くだけで、陵先生は何も言わなかった。
帰らない理由。言わなくてもわかるだろう。
そう言われたような気がした。
「・・・さ、片付けよう」
と、陵先生は作業に戻っていった。
「は〜ぁ、疲れたーっ」
実習を終えて宿泊する宿に着いて部屋で荷解きする中、モイちゃんが唸るように言った。
「一日ずーっと立ちっぱなで力仕事やし、ヘトヘトやぁ。やっぱ授業の実習とは違うなぁ」
「そうだねぇ」
「・・・と言ってる割に、鶴來ちゃんは平気そうやなぁ」
「ん?そうかな?」
「そっか。鶴來ちゃんは実家の手伝いで慣れてるもんな」
「んー、でも私が手伝ってたのは売り場だったから、やっぱり工房の仕事は疲れるよー」
「はぁー。早よ風呂入ろー」
「うん、そうだね」
と、私はボストンバッグから入浴セットとパジャマを取り出そうと中を漁る。と、その時、バッグの底から一通の茶封筒を見つけた。
工房に向かい、最中の製造を体験させてもらう。
餡や生地を練るのは力を要し、最中の生地を焼くのは真夏の今とても過酷で、そんな作業をずっと立ちっぱなしで行う実習は、夕方まで続いた。
「ただいまーっ」
実習が終わりに差し掛かり片付けをしていると、大学生のくらいの男の人がひょっこりと工房に顔を出した。
すると、さっきまで穏やかで優しく最中づくりを教えてくれていた御当主の顔がカッと鬼の形相に変わった。
「祐平!どこ遊びに行っとった!?今日は店の手伝いをしろと言ってたやろ!」
祐平と呼ばれたその男の人は、どうやら御当主のもう一人の息子さんらしい。
(つまり、陵先生の
血の繋がりがないから、やはり似ていない。
そうでなくても、茶髪にピアスの祐平さんはどこか軟派な印象で、陵先生とは真逆のタイプだ。
祐平さんは怒鳴られるのもどこ吹く風といった様子で、
「ゴメンゴメン。うっかりアルバイトのシフト入れてもうてたからさ」
と、言った。
それを聞いて御当主は溜息をついた。
「バイトなんかせんでもこの店の手伝いをすればええやろう」
「いややって。バイトの方が時給ええもん。それに、バイト先には可愛ええ女子おるしな」
「・・・アホ言うてんと実習生の皆さんに挨拶せんかっ」
すると、祐平さんは私たちの方を向いて非常に軽い調子で自己紹介を始めた。
「あ、どーも。俺、この家の三男の三間祐平っていいまーす。よろしくおねがいしまーす」
そして、私の方へ近づいて来ると顔を覗き込んできた。
「さっきはああ言うたけど、やっぱ店の手伝いしときゃよかったなぁ。実習生、可愛ええコおるやん。キミ、名前何て言うの?」
「・・・え・・・」
私が困惑していると、
「祐平」
陵先生が私と祐平さんの間に割って入ってきた。
すると、祐平さんは私から陵先生の方へと顔を向けた。
「慶太兄ちゃん、おかえり!久しぶりやなぁ。元気やった?」
「うん」
「今晩一緒に飲まへん?」
「飲める訳ないだろ。今回はプライベートの帰省じゃないんだ。実習で生徒を連れてるんだから・・・」
と、会話する二人の顔を私は交互に見る。
(意外にも仲良し・・・)
「でも、慶太兄ちゃんなかなか帰省せぇへんねんもん。今回だって実習じゃなきゃ帰るつもりなかったんやろ?せっかくの機会やん。飲もうや〜」
と、祐平さんは諦めない。
しかし陵先生は首を振った。
「言っただろ。無理だって」
「ちぇっ」
と、祐平さんはようやく諦めたようだった。
そして再び私の方に向き直すと、
「じゃ、またねー」
と言い残して工房から去って行った。
(なんかすごく軽い人だな・・・)
と、呆気にいると、
「弟が馴れ馴れしくしてごめん」
と、陵先生が言った。
「昔から異常に人懐っこいヤツなんだ。初めて会う人に対しては物珍しさで余計に。悪気はないんだよ」
「あ、大丈夫です」
私は言った。
陵先生と面と向かって会話するのは久しぶりだ。
「久しぶりに会えたのに、一緒にゆっくり出来る時間がなくて残念ですね」
「・・・仕方ないよ。帰省してる訳じゃないから」
「あまり帰ってないんですか?さっき義弟さんが言ってた・・・」
「・・・うん」
そう頷くだけで、陵先生は何も言わなかった。
帰らない理由。言わなくてもわかるだろう。
そう言われたような気がした。
「・・・さ、片付けよう」
と、陵先生は作業に戻っていった。
「は〜ぁ、疲れたーっ」
実習を終えて宿泊する宿に着いて部屋で荷解きする中、モイちゃんが唸るように言った。
「一日ずーっと立ちっぱなで力仕事やし、ヘトヘトやぁ。やっぱ授業の実習とは違うなぁ」
「そうだねぇ」
「・・・と言ってる割に、鶴來ちゃんは平気そうやなぁ」
「ん?そうかな?」
「そっか。鶴來ちゃんは実家の手伝いで慣れてるもんな」
「んー、でも私が手伝ってたのは売り場だったから、やっぱり工房の仕事は疲れるよー」
「はぁー。早よ風呂入ろー」
「うん、そうだね」
と、私はボストンバッグから入浴セットとパジャマを取り出そうと中を漁る。と、その時、バッグの底から一通の茶封筒を見つけた。