第14話 秘密の接吻(キス)
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それは『みささぎ』に呪われているから、などと知る由もないモイちゃんは、ますます不可解そうに眉をひそめた。
「・・・それが恋ゆうんちゃうの」
「だから違うって」
「いや、恋や恋!」
「違うったら」
「絶対に恋やって!認めぇや、素直ちゃうなー」
「違うってば!モイちゃんもしつこいよ」
「じゃあ、鶴來ちゃんは好きな人おらんの?まったくそんな話聞かへんからウチつまらんねんけど!」
「誰もいません。つまらなくてごめんね~」
「その顔、絶対おるやろ」
「だからぁ、いないってば」
と、私とモイちゃんが押し問答をしていたら、
「こ、恋って鶴來さんが誰に?僕も知りたいなぁ」
と、前の座席の大野君が何故かドキドキとした顔をこちらに覗かせてきた。
大野君の言葉に反応したのはモイちゃんだった。
「アンタはじゃないのは確かやわ。なっ、鶴來ちゃん?」
「うん!大野君は友達だもん!」
「・・・・・・」
そんなこんな会話をしているうちに京都に到着し、在来線に乗り換えて奈良県へ。そこからもう一本電車を乗り換えて、さらにバスに乗り換えて、ようやく実習先に辿り着いた。
三重県との県境の山間部にある小さな集落の中に、実習先である『三間堂』はあった。
『三間堂』は江戸時代中期に創業された老舗で、看板商品は『三間最中』。
三間最中は、県内の有名な神社やお寺の数々に奉納されている、由緒正しい和菓子だそうだ。
『三間堂』の古い日本家屋の店舗兼工房は、もちろん大きさは違うけれど、どこか『つるぎ庵』と似ていた。
「ようこそ。『三間堂』当主の三間と申します」
と、関西のイントネーションで出迎えてくれたのは、陵先生のお継父 さんである御当主、お義兄 さん夫婦、そして。
「遠路遥々お疲れ様でした。さ、ひとまず店に入ってお茶をそうぞ」
女将さん・・・陵先生の実のお母さんだった。
彫りの深い顔立ちが、陵先生とよく似ている。
勧められるままに私たちは店に入り、そこで緑茶と三間最中を頂いた。
(・・・おいしい!)
最中を一口食べて、私はカッと目を見開いた。
サクサクの最中の皮の中にホクホクの甘い餡子。その甘さを際立たせるようなキリッとした苦みも微かに感じる。
(これは柚子?この苦みのおかげで食べ飽きない甘さになってるなぁ)
なんてことをモグモグ咀嚼しながら考えていたら、
「どうですか?お口に合うかしら?」
と、声をかけられた。
声の方を振り返ると、そこには急須を片手に持った女将さんが立っていた。
私は慌てて彼女の方へ身体を向き直して言った。
「はい!とてもおいしいです!」
「それはよかったわ。お茶のおかわりどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「・・・引率の陵先生、ウチの息子なんです」
お茶を注ぎながら、女将さんは言った。
「ちゃんと先生が務まってるでしょうか?・・・昔から引っ込み思案で声も小さくて、人様の前に立って物事を教えるなんて想像がつかなくて」
そう私に尋ねる女将さんは心配そうで、でもどこか誇らしげで、少し離れた席に座る陵先生に視線を向けていた。
「・・・大丈夫ですよ」
私は言った。
「陵先生、とても丁寧な教え方でわかりやすいんです。この前も私がどうしてもうまく出来なかったお饅頭の作り方も一緒に考えてくれて、陵先生のアドバイスしてもらったら、上手く作れるようになったんです!」
すると、女将さんは嬉しそうに微笑んで、
「ありがとう。これからも息子をよろしくお願いします」
と、会釈して私の席から離れた。
私も会釈して席に座り直す。
そして、陵先生の方に視線を向けた。
陵先生は、お義父さんとお義兄さんと親し気に談笑している。
「・・・・・・」
その様子見て、ふと思った。
以前、陵先生がこぼした言葉。
『僕には居場所がないから』
あの言葉を聞いた時、義理の家族と折り合いが悪いとかそんな風に思っていたのだけれど、実際に会ってみるとそんな風には思えない。
私は、どこか違和感を感じた。
「・・・それが恋ゆうんちゃうの」
「だから違うって」
「いや、恋や恋!」
「違うったら」
「絶対に恋やって!認めぇや、素直ちゃうなー」
「違うってば!モイちゃんもしつこいよ」
「じゃあ、鶴來ちゃんは好きな人おらんの?まったくそんな話聞かへんからウチつまらんねんけど!」
「誰もいません。つまらなくてごめんね~」
「その顔、絶対おるやろ」
「だからぁ、いないってば」
と、私とモイちゃんが押し問答をしていたら、
「こ、恋って鶴來さんが誰に?僕も知りたいなぁ」
と、前の座席の大野君が何故かドキドキとした顔をこちらに覗かせてきた。
大野君の言葉に反応したのはモイちゃんだった。
「アンタはじゃないのは確かやわ。なっ、鶴來ちゃん?」
「うん!大野君は友達だもん!」
「・・・・・・」
そんなこんな会話をしているうちに京都に到着し、在来線に乗り換えて奈良県へ。そこからもう一本電車を乗り換えて、さらにバスに乗り換えて、ようやく実習先に辿り着いた。
三重県との県境の山間部にある小さな集落の中に、実習先である『三間堂』はあった。
『三間堂』は江戸時代中期に創業された老舗で、看板商品は『三間最中』。
三間最中は、県内の有名な神社やお寺の数々に奉納されている、由緒正しい和菓子だそうだ。
『三間堂』の古い日本家屋の店舗兼工房は、もちろん大きさは違うけれど、どこか『つるぎ庵』と似ていた。
「ようこそ。『三間堂』当主の三間と申します」
と、関西のイントネーションで出迎えてくれたのは、陵先生のお
「遠路遥々お疲れ様でした。さ、ひとまず店に入ってお茶をそうぞ」
女将さん・・・陵先生の実のお母さんだった。
彫りの深い顔立ちが、陵先生とよく似ている。
勧められるままに私たちは店に入り、そこで緑茶と三間最中を頂いた。
(・・・おいしい!)
最中を一口食べて、私はカッと目を見開いた。
サクサクの最中の皮の中にホクホクの甘い餡子。その甘さを際立たせるようなキリッとした苦みも微かに感じる。
(これは柚子?この苦みのおかげで食べ飽きない甘さになってるなぁ)
なんてことをモグモグ咀嚼しながら考えていたら、
「どうですか?お口に合うかしら?」
と、声をかけられた。
声の方を振り返ると、そこには急須を片手に持った女将さんが立っていた。
私は慌てて彼女の方へ身体を向き直して言った。
「はい!とてもおいしいです!」
「それはよかったわ。お茶のおかわりどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「・・・引率の陵先生、ウチの息子なんです」
お茶を注ぎながら、女将さんは言った。
「ちゃんと先生が務まってるでしょうか?・・・昔から引っ込み思案で声も小さくて、人様の前に立って物事を教えるなんて想像がつかなくて」
そう私に尋ねる女将さんは心配そうで、でもどこか誇らしげで、少し離れた席に座る陵先生に視線を向けていた。
「・・・大丈夫ですよ」
私は言った。
「陵先生、とても丁寧な教え方でわかりやすいんです。この前も私がどうしてもうまく出来なかったお饅頭の作り方も一緒に考えてくれて、陵先生のアドバイスしてもらったら、上手く作れるようになったんです!」
すると、女将さんは嬉しそうに微笑んで、
「ありがとう。これからも息子をよろしくお願いします」
と、会釈して私の席から離れた。
私も会釈して席に座り直す。
そして、陵先生の方に視線を向けた。
陵先生は、お義父さんとお義兄さんと親し気に談笑している。
「・・・・・・」
その様子見て、ふと思った。
以前、陵先生がこぼした言葉。
『僕には居場所がないから』
あの言葉を聞いた時、義理の家族と折り合いが悪いとかそんな風に思っていたのだけれど、実際に会ってみるとそんな風には思えない。
私は、どこか違和感を感じた。