第14話 秘密の接吻(キス)
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すると、五条さんは「ハッ・・・!」と息を飲んだ。
「京都銘菓と言えば、井筒八つ橋の生八つ橋、出町ふたばの豆餅、阿闍梨餅本舗の阿闍梨餅、都路里の特製抹茶パフェ、それに・・・!」
「そうです!それにそれに・・・!」
五条さんの言葉を継いで、私は続けた。
「かざりやのあぶり餅、聚洸のわらび餅、養老軒のふるーつ大福、老松のせんざい、松屋常磐の味噌松風、六盛茶庭の抹茶スフレ、中村藤吉本店の生茶ゼリイ、月ヶ瀬のあんみつ、澤屋の粟餅、祇園饅頭の六方焼、仙太郎の老玉、小松屋のきんつば、etc、etc、etc・・・!」
名店銘菓を列挙しながら、私は興奮状態になる。
「1日だけじゃすべてのお店を巡るのに時間が絶対足りないってわかってるんですけど、全部行きたいんです!あぁっ!一体、どうしたら・・・!」
「和紗、落ち着いて。ルート順と時刻、時間配分をよく考れば完全制覇出来るはずだ!」
「でも全てのお店に行けたとしても資金が・・・!」
「お金も心配無用!」
と、五条さんはズボンのポケットからあるモノを取り出して私に手渡した。
「これで支払ったらいいから」
「って、クレジットカードじゃないですか!しかも、これって・・・」
「うん、ブラックカード」
「ブラックカードって選ばれしセレブしか持てないって・・・しかも確か利用金額が無制限って・・・」
「厳密には違うんだけどねー」
「・・・・・・」
そこで私は想像した。
五条さんのブラックカード片手に、京都のあちこちの和菓子店や甘味処で手あたり次第買い物するところを。
(・・・あれもこれも食べて、そして持ち帰りでもあれもこれも買って・・・って)
私は慌てて我に返って、
「ダメです!クレジットカードなんて他人に渡しちゃ!」
と、五条さんにカードを突き返した。
五条さんはキョトンとして首を傾げる。
「なんで?僕も京都の銘菓たくさん食べたいし。だからこれで買ってきてよ」
「そんな物騒なもの持ち歩きたくないです!万が一強盗に襲われたり落として失くしたりしたら嫌だもの」
「なるほど。和紗は現金派なんだね」
と言うと、五条さんはポケットをガサゴソ漁り始めた。そして、
「はい。じゃあこれで買ってきてよ」
と、無造作に一万円札を十枚ほど取り出した。
これぞホントのポケットマネー・・・っていうか、大金を雑に扱いすぎ!
もちろん、お金の受け取りも私は拒否した。
ーーーそうして週末。
実習先の奈良へは、新幹線でいったん京都へ向かい、そこから在来線に乗り換えるという経路で行くことになっている。
「点呼を取ります。名前を呼ばれた人は返事をしてください」
私たち生徒を引率するのは、陵 先生。
新幹線に乗り込む前に、ボソボソと小さな声で生徒の一人ひとりの名前を読み上げていく。
「・・・さん」
「はい」
「下井さん」
「はーい」
「鶴來さん」
視線は名簿に落としたまま。別に不自然な事じゃないけれど、そんな仕草でさえ自分が避けられているんだと感じてしまう。
「・・・はい」
私は、少し遅れて返事をした。
「お菓子交換しよーっ」
新幹線に乗り込み座席に着くなり、皆遠足気分ではしゃいでいる。
「陵先生もどうぞー」
と、生徒の一人が陵先生にお菓子を差し出すけれど、
「・・・いいです。それより他のお客さんに迷惑をかけないように」
と、すげなくそれを断った。
楽しい気分に水を差されて、生徒は静まり込んで自分の席に戻っていく。
「・・・・・・」
私はその様子を内心もどかしく思いながら見つめていた。すると、
「まぁたそんな切ない表情して~」
隣の座席のモイちゃんに声をかけられた。
私はハッとしてモイちゃんの方へ向き直した。
「切ない?誰が?」
「鶴來ちゃんに決まっとるやろ」
「私?」
「鶴來ちゃんが陵先生を見る時。いっつも切なそ~な顔してんでぇ」
「え」
そんな顔を自分がしているとは。しかもそんな自分で気づいてないことをモイちゃんが気づいてるとは。
戸惑っていたら、モイちゃんはますます戸惑わせるようなことを言ってきた。
「好きなん?」
「え?」
私はしばし瞬きを繰り返した後、苦笑いしながら言った。
「違う違う、そんなんじゃなくて・・・ただ、心配なだけだよ」
思わず心の声が漏れた。
「京都銘菓と言えば、井筒八つ橋の生八つ橋、出町ふたばの豆餅、阿闍梨餅本舗の阿闍梨餅、都路里の特製抹茶パフェ、それに・・・!」
「そうです!それにそれに・・・!」
五条さんの言葉を継いで、私は続けた。
「かざりやのあぶり餅、聚洸のわらび餅、養老軒のふるーつ大福、老松のせんざい、松屋常磐の味噌松風、六盛茶庭の抹茶スフレ、中村藤吉本店の生茶ゼリイ、月ヶ瀬のあんみつ、澤屋の粟餅、祇園饅頭の六方焼、仙太郎の老玉、小松屋のきんつば、etc、etc、etc・・・!」
名店銘菓を列挙しながら、私は興奮状態になる。
「1日だけじゃすべてのお店を巡るのに時間が絶対足りないってわかってるんですけど、全部行きたいんです!あぁっ!一体、どうしたら・・・!」
「和紗、落ち着いて。ルート順と時刻、時間配分をよく考れば完全制覇出来るはずだ!」
「でも全てのお店に行けたとしても資金が・・・!」
「お金も心配無用!」
と、五条さんはズボンのポケットからあるモノを取り出して私に手渡した。
「これで支払ったらいいから」
「って、クレジットカードじゃないですか!しかも、これって・・・」
「うん、ブラックカード」
「ブラックカードって選ばれしセレブしか持てないって・・・しかも確か利用金額が無制限って・・・」
「厳密には違うんだけどねー」
「・・・・・・」
そこで私は想像した。
五条さんのブラックカード片手に、京都のあちこちの和菓子店や甘味処で手あたり次第買い物するところを。
(・・・あれもこれも食べて、そして持ち帰りでもあれもこれも買って・・・って)
私は慌てて我に返って、
「ダメです!クレジットカードなんて他人に渡しちゃ!」
と、五条さんにカードを突き返した。
五条さんはキョトンとして首を傾げる。
「なんで?僕も京都の銘菓たくさん食べたいし。だからこれで買ってきてよ」
「そんな物騒なもの持ち歩きたくないです!万が一強盗に襲われたり落として失くしたりしたら嫌だもの」
「なるほど。和紗は現金派なんだね」
と言うと、五条さんはポケットをガサゴソ漁り始めた。そして、
「はい。じゃあこれで買ってきてよ」
と、無造作に一万円札を十枚ほど取り出した。
これぞホントのポケットマネー・・・っていうか、大金を雑に扱いすぎ!
もちろん、お金の受け取りも私は拒否した。
ーーーそうして週末。
実習先の奈良へは、新幹線でいったん京都へ向かい、そこから在来線に乗り換えるという経路で行くことになっている。
「点呼を取ります。名前を呼ばれた人は返事をしてください」
私たち生徒を引率するのは、
新幹線に乗り込む前に、ボソボソと小さな声で生徒の一人ひとりの名前を読み上げていく。
「・・・さん」
「はい」
「下井さん」
「はーい」
「鶴來さん」
視線は名簿に落としたまま。別に不自然な事じゃないけれど、そんな仕草でさえ自分が避けられているんだと感じてしまう。
「・・・はい」
私は、少し遅れて返事をした。
「お菓子交換しよーっ」
新幹線に乗り込み座席に着くなり、皆遠足気分ではしゃいでいる。
「陵先生もどうぞー」
と、生徒の一人が陵先生にお菓子を差し出すけれど、
「・・・いいです。それより他のお客さんに迷惑をかけないように」
と、すげなくそれを断った。
楽しい気分に水を差されて、生徒は静まり込んで自分の席に戻っていく。
「・・・・・・」
私はその様子を内心もどかしく思いながら見つめていた。すると、
「まぁたそんな切ない表情して~」
隣の座席のモイちゃんに声をかけられた。
私はハッとしてモイちゃんの方へ向き直した。
「切ない?誰が?」
「鶴來ちゃんに決まっとるやろ」
「私?」
「鶴來ちゃんが陵先生を見る時。いっつも切なそ~な顔してんでぇ」
「え」
そんな顔を自分がしているとは。しかもそんな自分で気づいてないことをモイちゃんが気づいてるとは。
戸惑っていたら、モイちゃんはますます戸惑わせるようなことを言ってきた。
「好きなん?」
「え?」
私はしばし瞬きを繰り返した後、苦笑いしながら言った。
「違う違う、そんなんじゃなくて・・・ただ、心配なだけだよ」
思わず心の声が漏れた。