第14話 秘密の接吻(キス)
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「あ、そうそう。竹べらのくだりで思い出したんだけど、『額多之君』と言ったらさぁ」
五条さんは突然、真面目な低いトーンで言った。
「糠田が森のことを話してたんだってね。『みささぎ』が顕現する直前」
「・・・・・・」
「結構重要なことだと思うんだけど、どうして黙ってたの?」
「・・・・・・」
黙り込んでしまった私の顔を、五条さんはサングラス越しの碧い目で見据える。
下手な言い訳が通じないとわかって、私は観念して口を開いた。
「・・・わかりません」
それを聞いた五条さんはガクッと前のめりになる。
「って、わからんのかーい」
「・・・だって、そもそも私の聞き間違いかもしれないと思って」
「聞き間違い?」
「あ」
しまった、と私は自分の口を手で覆った。
が、時すでに遅し。
「・・・・・・」
五条さんは再び私の顔をジッと見据えている。
なので、私は正直に話した。
『糠田が森が憎い』
「『みささぎ』がそんなことを?」
五条さんが珍しく驚いたような面持ちで言った。
問いかけに私は頷く。
「・・・やっぱり、『みささぎ』は何か糠田が森と関係があるんでしょうか・・・」
そして、恐る恐る問いかけた。
「・・・糠田が森の土地に染み付いた、子を生贄に捧げざるを得なかった母親たちの呪い、とか・・・」
すると、五条さんはあっさりとそれを否定した。
「それはどうかな。慶太によると『みささぎ』は慶太が子どもの頃から憑りついてるんでしょ?更に言うなら、慶太のおじいちゃんとお父さんにも憑りついてたし。でも、その頃は和紗のおじいちゃんがまだまだ健在だったし。だから、糠田が森の呪いが暴走して肥大化して『みささぎ』となったとは考えにくい」
「そっか・・・」
確かに、その通りだ。
「でも、糠田が森と『みささぎ』の因縁がどうあれ、糠田が森しいては『額多之君』の伝説が、『みささぎ』顕現のトリガーである恐れがある」
五条さんはじっと私の目を見つめながら言った。
「とりあえず、『糠田が森』『額多之君』『額多ヶ守』は、慶太の前では禁句。いいね?」
そう言われて、私はこくりと頷いた。
「ま、なんにしても慶太が『みささぎ』を制御出来るようになればなんの問題もないよ」
と、五条さんはカラッとした口ぶりで言った。
前向きと言うべきか、能天気というべきか・・・。
「で、和紗は『反転術式』を完ぺきにマスターして、『あけづる』に込められるようになること!」
「はい」
「それよりなにより、この調子でおじいちゃんのと同じ味を作れるようになること!これが一番大事なことだよ!」
「・・・結局そこなんですね、五条さんの重要事項って」
・・・と、こんな風に穏やかな午前を五条さんと私は過ごしていた。
というのも、専門学校が夏休みに入ったからだ。
呪術高専も同様に夏休みになり、五条さんもゆっくりとした朝を過ごしていた。
そして午後になり、五条さんは悠仁君の修業のため高専へ向かう時だった。
「あ、そうだ。五条さん」
玄関で見送りながら、私は言った。
「今週末の二日間、悠仁君のご飯の差し入れ、お休みさせてもらってもいいですか?」
「いいけど。どうしたの、友達と旅行でもするの?」
「現地実習で奈良と京都に行くんです!」
「現地実習?」
「はい!」
私はウキウキした気持ちで説明した。
「専門学校では毎年この時期にお店や工場に行って実際にそこの仕事を体験する特別授業があるんです!」
「へー。そうなんだ。楽しそうだね」
「はい!一日目は奈良にある陵先生の御実家の和菓子店で体験実習するんです」
「慶太の実家?あぁ、継父の方か」
「はい。陵先生のお義父様が和菓子職人で一時期専門学校で教鞭をとってたそうです。その繋がりで、毎年実習先を引き受けて頂いてるんですって」
「ふーん。じゃあ、慶太もコネで採用されたのか」
「・・・コネでもいいじゃないですか」
「別にいけないなんていってないよー。呪術高専もコネ入学・採用なんてよくある話だし。こういう僕もそうだしねー」
「それは、そもそも呪術師がマイノリティだから致し方ないでは・・・って、そんなことより」
打って変わって、私は深刻なトーンで続けた。
「問題は、二日目の京都です。この日は丸一日自由行動なんですけど・・・」
「ふむ?」
「京都といえば、和菓子に甘味処の宝庫でしょ?」
五条さんは突然、真面目な低いトーンで言った。
「糠田が森のことを話してたんだってね。『みささぎ』が顕現する直前」
「・・・・・・」
「結構重要なことだと思うんだけど、どうして黙ってたの?」
「・・・・・・」
黙り込んでしまった私の顔を、五条さんはサングラス越しの碧い目で見据える。
下手な言い訳が通じないとわかって、私は観念して口を開いた。
「・・・わかりません」
それを聞いた五条さんはガクッと前のめりになる。
「って、わからんのかーい」
「・・・だって、そもそも私の聞き間違いかもしれないと思って」
「聞き間違い?」
「あ」
しまった、と私は自分の口を手で覆った。
が、時すでに遅し。
「・・・・・・」
五条さんは再び私の顔をジッと見据えている。
なので、私は正直に話した。
『糠田が森が憎い』
「『みささぎ』がそんなことを?」
五条さんが珍しく驚いたような面持ちで言った。
問いかけに私は頷く。
「・・・やっぱり、『みささぎ』は何か糠田が森と関係があるんでしょうか・・・」
そして、恐る恐る問いかけた。
「・・・糠田が森の土地に染み付いた、子を生贄に捧げざるを得なかった母親たちの呪い、とか・・・」
すると、五条さんはあっさりとそれを否定した。
「それはどうかな。慶太によると『みささぎ』は慶太が子どもの頃から憑りついてるんでしょ?更に言うなら、慶太のおじいちゃんとお父さんにも憑りついてたし。でも、その頃は和紗のおじいちゃんがまだまだ健在だったし。だから、糠田が森の呪いが暴走して肥大化して『みささぎ』となったとは考えにくい」
「そっか・・・」
確かに、その通りだ。
「でも、糠田が森と『みささぎ』の因縁がどうあれ、糠田が森しいては『額多之君』の伝説が、『みささぎ』顕現のトリガーである恐れがある」
五条さんはじっと私の目を見つめながら言った。
「とりあえず、『糠田が森』『額多之君』『額多ヶ守』は、慶太の前では禁句。いいね?」
そう言われて、私はこくりと頷いた。
「ま、なんにしても慶太が『みささぎ』を制御出来るようになればなんの問題もないよ」
と、五条さんはカラッとした口ぶりで言った。
前向きと言うべきか、能天気というべきか・・・。
「で、和紗は『反転術式』を完ぺきにマスターして、『あけづる』に込められるようになること!」
「はい」
「それよりなにより、この調子でおじいちゃんのと同じ味を作れるようになること!これが一番大事なことだよ!」
「・・・結局そこなんですね、五条さんの重要事項って」
・・・と、こんな風に穏やかな午前を五条さんと私は過ごしていた。
というのも、専門学校が夏休みに入ったからだ。
呪術高専も同様に夏休みになり、五条さんもゆっくりとした朝を過ごしていた。
そして午後になり、五条さんは悠仁君の修業のため高専へ向かう時だった。
「あ、そうだ。五条さん」
玄関で見送りながら、私は言った。
「今週末の二日間、悠仁君のご飯の差し入れ、お休みさせてもらってもいいですか?」
「いいけど。どうしたの、友達と旅行でもするの?」
「現地実習で奈良と京都に行くんです!」
「現地実習?」
「はい!」
私はウキウキした気持ちで説明した。
「専門学校では毎年この時期にお店や工場に行って実際にそこの仕事を体験する特別授業があるんです!」
「へー。そうなんだ。楽しそうだね」
「はい!一日目は奈良にある陵先生の御実家の和菓子店で体験実習するんです」
「慶太の実家?あぁ、継父の方か」
「はい。陵先生のお義父様が和菓子職人で一時期専門学校で教鞭をとってたそうです。その繋がりで、毎年実習先を引き受けて頂いてるんですって」
「ふーん。じゃあ、慶太もコネで採用されたのか」
「・・・コネでもいいじゃないですか」
「別にいけないなんていってないよー。呪術高専もコネ入学・採用なんてよくある話だし。こういう僕もそうだしねー」
「それは、そもそも呪術師がマイノリティだから致し方ないでは・・・って、そんなことより」
打って変わって、私は深刻なトーンで続けた。
「問題は、二日目の京都です。この日は丸一日自由行動なんですけど・・・」
「ふむ?」
「京都といえば、和菓子に甘味処の宝庫でしょ?」