第14話 秘密の接吻(キス)
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「ん!」
「おっ」
もう幾度となく作ってきた『あけづる』の試作品。
試食した反応はいつも小首を傾げるものだったけど、この日は違った。
「いーんじゃない?」
五条さんが言った。
「今までで一番近いよ。おじいちゃんの『あけづる』の味と」
「そ、そう思います!?」
「うん、かなり。これまでで一番の出来じゃない?」
と、五条さんは『あけづる』を頬張る。
「うん、うまい」
その言葉に、私の表情は自然とパァーっと輝く。
「陵 先生のアドバイスのおかげです!アドバイス通りにしたら、この味と食感が出来たんです!」
「慶太の?」
2個目を鷲掴みにしながら、五条さんは眉をひそめた。
「そっか。やっぱ餅は餅屋なんだな。癪だけど、慶太にはカンシャだね」
と、そのまま2個目を頬張った。
「・・・・・・」
五条さんは、陵先生に対して何故か良い印象を持ってなかったみたいだ。
だけど、特級過呪怨霊『みささぎ』の一件以来、その呪力を抑制するための術 を教えることになった。
そのおかげなのか、五条さんの先生に対する言動が少し軟化した気がする。
(慶太って、名前で呼んでるし)
ふたりが打ち解けたなら、嬉しい。
「・・・陵先生、呪力の抑制の練習は順調ですか?」
私の質問に五条さんはキョトンとする。
「慶太本人から聞いてない?あ、学校じゃそんな話は出来ないか」
「あ、いや、その」
逆に質問を返されて、私は少したじろぐ。
「・・・学校で陵先生とあまり話す機会がなくて」
それは本当のこと。
でもその理由は、
『・・・鶴來さんは僕と関わらない方がいい』
私は陵先生に避けられてる。
・・・私だけじゃないけど。
学校でも、私以外の生徒に対してもよそよそしく、未だに打ち解けていない。
陵先生は、畏れているのだ。
『みささぎ』が暴走して、人を傷つけることを。
だから、自分から自分の周りの人を遠ざけている。
「っていうか、慶太っていつまでもよそよそしいよねぇ」
と、五条さんが言った。
私の心の内と偶然とはいえ繋がった言葉にドキッとした。
「僕が打ち解けようとあれこれフランクに会話をふってもノリは悪いしさぁ」
「・・・五条さんのノリについていくのは大抵の人にとってはハードルが高いのでは」
「ま、それはさておき。頑張ってるよー、修業。やってることは、呪力抑制っていうかアンガーマネージメントっぽいけど」
「アンガーマネージメント、ですか」
「うん。慶太が『みささぎ』を顕現させる時は害を加えられる時以外に、恐怖や怒り・・・負の感情を一気に発露させた時のようだからね。かといってそれを無理に押さえつけると、『みささぎ』が負の感情を食って内側から慶太を呪って、慶太自身が呪霊となりかねない」
「・・・・・・」
「そこで、慶太には負の感情を呪力にして物に込める練習をさせている。そうして『みささぎ』を顕現させないようにする」
「物って、どんなものに呪力を?サトルみたいな呪骸ですか?」
「違うよ。使い馴染みがあるものがいいと思ってね。和菓子作りに使う竹べらにした」
「え、竹べらですか」
「いざとなったら武器にも出来るしね。和紗が『額多之君』のオデコにブッ刺したみたいに」
「それは忘れてください・・・」
「というのは冗談で」
「え」
冗談なの!?
「竹べらと似た小刀型の呪具を使わせてる。使用する人間が漏出する呪力を吸収する特殊な呪具だ」
「呪力を吸収する?」
五条さんの言葉に私は首を傾げた。
それを察して五条さんは説明を続けた。
「術師と非術師の決定的な違いは、呪力の流れ。術式行使による消費量や容量の違いもあるけど、術師の呪力は身体の内側を廻るから呪力の漏洩がない。つまり、術師からは呪霊は生まれないんだ」
「そうなんですか」
「だけど、慶太はあくまでも非術師だからね。呪力として処理しきれない負の感情が漏洩して呪霊となる。『みささぎ』の顕現も、きっと一般の呪霊と同じ現象だと思うんだ。だから、呪具の力で補いながら漏洩を出来るだけなくして、不意の顕現を防ぐ」
「なるほど」
「一見呪具だよりで楽なように思えるけど、呪具の扱いってのは難しいからね。ま、慶太もよく頑張ってるよ」
「・・・そうですか」
陵先生も、頑張ってるんだな。
そうやって、少しでも気持ちが前向きになっていればいいんだけど。
「おっ」
もう幾度となく作ってきた『あけづる』の試作品。
試食した反応はいつも小首を傾げるものだったけど、この日は違った。
「いーんじゃない?」
五条さんが言った。
「今までで一番近いよ。おじいちゃんの『あけづる』の味と」
「そ、そう思います!?」
「うん、かなり。これまでで一番の出来じゃない?」
と、五条さんは『あけづる』を頬張る。
「うん、うまい」
その言葉に、私の表情は自然とパァーっと輝く。
「
「慶太の?」
2個目を鷲掴みにしながら、五条さんは眉をひそめた。
「そっか。やっぱ餅は餅屋なんだな。癪だけど、慶太にはカンシャだね」
と、そのまま2個目を頬張った。
「・・・・・・」
五条さんは、陵先生に対して何故か良い印象を持ってなかったみたいだ。
だけど、特級過呪怨霊『みささぎ』の一件以来、その呪力を抑制するための
そのおかげなのか、五条さんの先生に対する言動が少し軟化した気がする。
(慶太って、名前で呼んでるし)
ふたりが打ち解けたなら、嬉しい。
「・・・陵先生、呪力の抑制の練習は順調ですか?」
私の質問に五条さんはキョトンとする。
「慶太本人から聞いてない?あ、学校じゃそんな話は出来ないか」
「あ、いや、その」
逆に質問を返されて、私は少したじろぐ。
「・・・学校で陵先生とあまり話す機会がなくて」
それは本当のこと。
でもその理由は、
『・・・鶴來さんは僕と関わらない方がいい』
私は陵先生に避けられてる。
・・・私だけじゃないけど。
学校でも、私以外の生徒に対してもよそよそしく、未だに打ち解けていない。
陵先生は、畏れているのだ。
『みささぎ』が暴走して、人を傷つけることを。
だから、自分から自分の周りの人を遠ざけている。
「っていうか、慶太っていつまでもよそよそしいよねぇ」
と、五条さんが言った。
私の心の内と偶然とはいえ繋がった言葉にドキッとした。
「僕が打ち解けようとあれこれフランクに会話をふってもノリは悪いしさぁ」
「・・・五条さんのノリについていくのは大抵の人にとってはハードルが高いのでは」
「ま、それはさておき。頑張ってるよー、修業。やってることは、呪力抑制っていうかアンガーマネージメントっぽいけど」
「アンガーマネージメント、ですか」
「うん。慶太が『みささぎ』を顕現させる時は害を加えられる時以外に、恐怖や怒り・・・負の感情を一気に発露させた時のようだからね。かといってそれを無理に押さえつけると、『みささぎ』が負の感情を食って内側から慶太を呪って、慶太自身が呪霊となりかねない」
「・・・・・・」
「そこで、慶太には負の感情を呪力にして物に込める練習をさせている。そうして『みささぎ』を顕現させないようにする」
「物って、どんなものに呪力を?サトルみたいな呪骸ですか?」
「違うよ。使い馴染みがあるものがいいと思ってね。和菓子作りに使う竹べらにした」
「え、竹べらですか」
「いざとなったら武器にも出来るしね。和紗が『額多之君』のオデコにブッ刺したみたいに」
「それは忘れてください・・・」
「というのは冗談で」
「え」
冗談なの!?
「竹べらと似た小刀型の呪具を使わせてる。使用する人間が漏出する呪力を吸収する特殊な呪具だ」
「呪力を吸収する?」
五条さんの言葉に私は首を傾げた。
それを察して五条さんは説明を続けた。
「術師と非術師の決定的な違いは、呪力の流れ。術式行使による消費量や容量の違いもあるけど、術師の呪力は身体の内側を廻るから呪力の漏洩がない。つまり、術師からは呪霊は生まれないんだ」
「そうなんですか」
「だけど、慶太はあくまでも非術師だからね。呪力として処理しきれない負の感情が漏洩して呪霊となる。『みささぎ』の顕現も、きっと一般の呪霊と同じ現象だと思うんだ。だから、呪具の力で補いながら漏洩を出来るだけなくして、不意の顕現を防ぐ」
「なるほど」
「一見呪具だよりで楽なように思えるけど、呪具の扱いってのは難しいからね。ま、慶太もよく頑張ってるよ」
「・・・そうですか」
陵先生も、頑張ってるんだな。
そうやって、少しでも気持ちが前向きになっていればいいんだけど。
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