第13話 呪いに取り憑かれた男
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「・・・呪術師辞めて、和菓子職人目指そっかな」
抱きすくめられた私の頭上で、そんな五条さんの本気とも冗談ともつかないつぶやきが聞こえてきた。
「・・・何言ってるんですか」
私は自分と五条さんの身体の間に両手を差し入れて、そっと五条さんを押しやった。
「そんなことしてどうするんですか。五条さんは、呪術師を続ける方がいいです。それで、沢山の人が助かるんだから」
「・・・・・・・」
「私も、悠仁君も、伏黒君も、陵先生も・・・会ったことないけど、乙骨っていう人もそうなんでしょ?」
すると、五条さんは私から両腕を離した。
「そうだね」
と、頷きながら。
「さて。そろそろ封印が終わった頃かな。迎えに行くか」
「はい!」
「・・・でも、アイツと馴れ馴れしくしちゃダメだよ」
「そんなこと言われても難しいですよ。学校で毎日顔合わすのに」
「口ごたえしない!返事は『はい』だけ!」
「えー・・・」
そうして、私と五条さんは屋上から建物内に入った。
さて、それからのこと。
『みささぎ』と五条さんの戦闘で破壊された専門学校の実習室は、ガス爆発事故として扱われて、そのフロア一帯は当面の間立ち入り禁止となった。
陵先生は夏風邪をひいたとして学校を休み、三日後復職した。
「陵先生」
その日、私は昼ご飯の弁当を差し入れるために陵先生の元を尋ねた。
陵先生は、非常階段の踊り場でひとり座り込んでいた。
「探しましたよ。こんなとこにいたんですね」
と、私は陵先生にお弁当を差し出した。
「・・・・・・」
だけど、陵先生は受け取ろうとしない。
なので、私は戸惑いつついったんお弁当を持つ手を引っ込んだ。
「・・・身体の体調はどうですか?」
と尋ねると、陵先生はようやく言葉を発した。
「うん・・・大丈夫」
「よかった。それで、封印っていうのは?」
「あ、うん」
と、陵先生はおもむろにシャツの裾をめくり上げた。
「え」
思わず私はたじろぐ。しかし、それは一瞬のことで。
陵先生の服の下の身体中に、肌に直にお経のような草書体の文字が書かれていのを見て、私は息を飲んだ。
そして、こんな感想が口をついて出た。
「・・・なんか耳なし芳一みたいですね」
「はは。僕も思った」
「これは、墨?お風呂入っても大丈夫なんですか?」
「呪力が籠った特殊な墨汁らしいよ。だから、お風呂に入っても流れない。だけど、入れ墨みたいで温泉とか行けないけど」
と言いながら、陵先生はシャツの裾をズボンの中に収めた。
なんだか、よりいっそう瘦せた気がする。
「先生、これ」
と、私は改めてお弁当を差し出した。
でも、やはり陵先生は受け取ろうとしない。
「・・・申し訳ないんだけど、もう作ってくれなくていいよ」
「え・・・」
「・・・鶴來さんは僕と関わらない方がいい」
「・・・五条さんに何か言われましたか?あの人の言うことなら気にしなくても・・・」
「そんなんじゃなくて・・・鶴來さんだけじゃない。僕は、人と関わらない方がいい」
「・・・・・・」
「僕はずっと『みささぎ』のせいで人を傷つけるのが怖くて、人と関わらないことにしてきた。それがいいって、ずっと思ってきた」
「・・・・・・」
「でも、ほんとうはずっとさみしかった。だから、鶴來さんが声をかけてくれた時、本当に嬉しかった」
「先生・・・」
「でも、僕のそんな自分勝手な感情のせいで、鶴來さんを巻き込んで傷つけて、学校も滅茶苦茶にしてしまった・・・」
そう言うと、陵先生は立ち上がった。
「・・・『みささぎ』を制御できるようになりたい。そう思うけれど、やっぱり怖いんだ。だから、僕には関わらないでほしい」
そして、その場を立ち去るべく階段を降りていく。
「・・・・・・・」
私は戸惑いながら陵先生の方を振り返った。
何か言わなくちゃ。
このまま放っておくなんて出来ない。
「・・・呪いは」
私は先生の背中に投げかけるように声をかけた。
「呪いは、人の負の感情から生まれるんです。人の負の感情を食らって大きくなるんです。だから、先生、ひとりでいようなんて思っちゃダメです!」
だけど、陵先生は止まろうとしない。
階段を降り切ると、廊下を曲がって姿は見えなくなってしまった。
「・・・・・・」
私はひとり階段で立ち尽くし、渡す相手のいなくなったお弁当箱を抱きかかえた。
───糠田が森が憎い
あの言葉は。
呪霊の言葉のはずなのに。
まるで、陵先生に言われたような気がした。
・・・糠田が森のことなんて、知らないはずなのに。
つづく
抱きすくめられた私の頭上で、そんな五条さんの本気とも冗談ともつかないつぶやきが聞こえてきた。
「・・・何言ってるんですか」
私は自分と五条さんの身体の間に両手を差し入れて、そっと五条さんを押しやった。
「そんなことしてどうするんですか。五条さんは、呪術師を続ける方がいいです。それで、沢山の人が助かるんだから」
「・・・・・・・」
「私も、悠仁君も、伏黒君も、陵先生も・・・会ったことないけど、乙骨っていう人もそうなんでしょ?」
すると、五条さんは私から両腕を離した。
「そうだね」
と、頷きながら。
「さて。そろそろ封印が終わった頃かな。迎えに行くか」
「はい!」
「・・・でも、アイツと馴れ馴れしくしちゃダメだよ」
「そんなこと言われても難しいですよ。学校で毎日顔合わすのに」
「口ごたえしない!返事は『はい』だけ!」
「えー・・・」
そうして、私と五条さんは屋上から建物内に入った。
さて、それからのこと。
『みささぎ』と五条さんの戦闘で破壊された専門学校の実習室は、ガス爆発事故として扱われて、そのフロア一帯は当面の間立ち入り禁止となった。
陵先生は夏風邪をひいたとして学校を休み、三日後復職した。
「陵先生」
その日、私は昼ご飯の弁当を差し入れるために陵先生の元を尋ねた。
陵先生は、非常階段の踊り場でひとり座り込んでいた。
「探しましたよ。こんなとこにいたんですね」
と、私は陵先生にお弁当を差し出した。
「・・・・・・」
だけど、陵先生は受け取ろうとしない。
なので、私は戸惑いつついったんお弁当を持つ手を引っ込んだ。
「・・・身体の体調はどうですか?」
と尋ねると、陵先生はようやく言葉を発した。
「うん・・・大丈夫」
「よかった。それで、封印っていうのは?」
「あ、うん」
と、陵先生はおもむろにシャツの裾をめくり上げた。
「え」
思わず私はたじろぐ。しかし、それは一瞬のことで。
陵先生の服の下の身体中に、肌に直にお経のような草書体の文字が書かれていのを見て、私は息を飲んだ。
そして、こんな感想が口をついて出た。
「・・・なんか耳なし芳一みたいですね」
「はは。僕も思った」
「これは、墨?お風呂入っても大丈夫なんですか?」
「呪力が籠った特殊な墨汁らしいよ。だから、お風呂に入っても流れない。だけど、入れ墨みたいで温泉とか行けないけど」
と言いながら、陵先生はシャツの裾をズボンの中に収めた。
なんだか、よりいっそう瘦せた気がする。
「先生、これ」
と、私は改めてお弁当を差し出した。
でも、やはり陵先生は受け取ろうとしない。
「・・・申し訳ないんだけど、もう作ってくれなくていいよ」
「え・・・」
「・・・鶴來さんは僕と関わらない方がいい」
「・・・五条さんに何か言われましたか?あの人の言うことなら気にしなくても・・・」
「そんなんじゃなくて・・・鶴來さんだけじゃない。僕は、人と関わらない方がいい」
「・・・・・・」
「僕はずっと『みささぎ』のせいで人を傷つけるのが怖くて、人と関わらないことにしてきた。それがいいって、ずっと思ってきた」
「・・・・・・」
「でも、ほんとうはずっとさみしかった。だから、鶴來さんが声をかけてくれた時、本当に嬉しかった」
「先生・・・」
「でも、僕のそんな自分勝手な感情のせいで、鶴來さんを巻き込んで傷つけて、学校も滅茶苦茶にしてしまった・・・」
そう言うと、陵先生は立ち上がった。
「・・・『みささぎ』を制御できるようになりたい。そう思うけれど、やっぱり怖いんだ。だから、僕には関わらないでほしい」
そして、その場を立ち去るべく階段を降りていく。
「・・・・・・・」
私は戸惑いながら陵先生の方を振り返った。
何か言わなくちゃ。
このまま放っておくなんて出来ない。
「・・・呪いは」
私は先生の背中に投げかけるように声をかけた。
「呪いは、人の負の感情から生まれるんです。人の負の感情を食らって大きくなるんです。だから、先生、ひとりでいようなんて思っちゃダメです!」
だけど、陵先生は止まろうとしない。
階段を降り切ると、廊下を曲がって姿は見えなくなってしまった。
「・・・・・・」
私はひとり階段で立ち尽くし、渡す相手のいなくなったお弁当箱を抱きかかえた。
───糠田が森が憎い
あの言葉は。
呪霊の言葉のはずなのに。
まるで、陵先生に言われたような気がした。
・・・糠田が森のことなんて、知らないはずなのに。
つづく
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