第13話 呪いに取り憑かれた男
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その後、陵先生は特級過呪怨霊『みささぎ』を抑え込むための封印を施すために別の部屋に連れていかれた。
封印と言っても、やらないよりはやった方がいいというくらいの気休め程度のものらしく、『みささぎ』を制御するにはやはり、陵先生が呪力を扱えるようになる必要があるらしい。
「呪いの出自がわかれば、その元を叩いて祓うことができるけど」
五条さんは言った。
「『みささぎ』自体を祓っても、きっと呪いは解けない。『みささぎ』についてわかることは、出自不明 ということだけ。呪術師の家系でもない一家の男子に代々取り憑いているということだけだ。その因縁を断つためにも、彼は『みささぎ』を克服しなければならない。彼が死んだところで『みささぎ』が祓われる確証はないしね。それに、死ぬのは簡単だけど、生きてるからにはね、生きて何とか手段を探らないと」
「・・・・・・」
そんな五条さんの言葉を聞きながら、私は夜空を見上げた。
私と五条さんは、取調室のある建物の屋上に来ていた。
以前に悠仁君が話していた通り、呪術高専は山奥にあって都会の明かりは遠く、そのため夜空には星が綺麗に見える。
「そうですよね」
私は改めて五条さんの言葉に頷いた。
「生きてるからには、生きていかないと」
私がそう言うと、五条さんはフッと笑った。
「そう。生きてるから生きる。それ以外に意味なんてないの」
とはいえ、と五条さんは続けた。
「まだ引っかかるんだよね。なぜ和紗の前で『みささぎ』が顕現したのか」
「・・・・・・」
「『みささぎ』が顕現する前の行動や会話を覚えてない?」
と、五条さんに問い詰められたけれど、私は口をつぐんだ。
あの時、『みささぎ』が口にした言葉。
───糠田が森が憎い
確かその直前、糠田が森の『額多之君』の伝説について話をしていた。
そのことを話したら、五条さんはどう思うんだろう。
(でも、やっぱり私の聞き間違いかもしれないし)
答えられないでいたら、
「まさか・・・」
五条さんが不穏な声で言った。
「アイツ、『みささぎ』を使って和紗に襲い掛かろうとした?」
「はぁ!?」
五条さんのまたもや突拍子もない発言に、素っ頓狂な声が出た。
「違いますよ!陵先生がそんなことする訳ないでしょ!」
「でも、アイツだってあんなナヨナヨしてても男だよ?下心くらいあるでしょ」
「まだそんなこと言ってるんですか・・・」
呆れたと肩をすくませていたら、五条さんは少しだけ真面目なトーンで言った。
「でも、それが心配で専門学校まで駆けつけたんだからね、僕」
「・・・・・・」
「・・・後悔したんだよね。昨日、『付き合っちゃえば』とか『婿入りしてもらえば』なんて焚き付けるようなこと言って」
「・・・・・・」
「和紗が本気にしたらどうしようって」
本当に、呆れた。
自分で勝手に言い放っておいて、それで勝手に後悔してるなんて。
なので、私はきっぱりと言った。
「そんなこと、欠片にも思ってませんよ」
「でも、それでもいいって思ったのも確かなんだよね」
「ん・・・?」
「和紗が、将来糠田が森に戻って『つるぎ庵』を開く時には、一緒にお菓子を作れて、店と和紗を支えてくれるような誰かが側にいたらいいんじゃないかって」
「・・・・・・」
「それが、和紗の幸せなんじゃないのかなって」
何をウダウダと言ってるのだろう、この人は。
私の幸せがどうとかなんとかなんて。
「私の幸せは、私が立派な和菓子職人になって、作った和菓子を沢山の人に食べてもらって、美味しいって喜んでもらえることです」
私は言った。
「その時、『つるぎ庵』に私ひとりでも誰かと一緒でも、それはどっちでもいいことです。でも・・・」
私は少し照れくさくて、スッと視線を逸らして続けた。
「・・・沢山の人の中には、五条さんだって含まれてるんですよ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沢山の人の中ひとり。
だけど、そこにあなたがいなければ。
言ってしまって、恥ずかしくて口をつぐんでいたら、
「わぁ!?」
いきなり五条さんに抱きすくめられた。
力いっぱいに抱きすくめられたので、一瞬、両足が地面から浮いた。
「・・・・・・」
この時、無下限のバリアは解かれていたようで、五条さんと私の身体はぐっと密着する。
五条さんの体温が伝わる。
五条さんの鼓動が聴こえる。
封印と言っても、やらないよりはやった方がいいというくらいの気休め程度のものらしく、『みささぎ』を制御するにはやはり、陵先生が呪力を扱えるようになる必要があるらしい。
「呪いの出自がわかれば、その元を叩いて祓うことができるけど」
五条さんは言った。
「『みささぎ』自体を祓っても、きっと呪いは解けない。『みささぎ』についてわかることは、
「・・・・・・」
そんな五条さんの言葉を聞きながら、私は夜空を見上げた。
私と五条さんは、取調室のある建物の屋上に来ていた。
以前に悠仁君が話していた通り、呪術高専は山奥にあって都会の明かりは遠く、そのため夜空には星が綺麗に見える。
「そうですよね」
私は改めて五条さんの言葉に頷いた。
「生きてるからには、生きていかないと」
私がそう言うと、五条さんはフッと笑った。
「そう。生きてるから生きる。それ以外に意味なんてないの」
とはいえ、と五条さんは続けた。
「まだ引っかかるんだよね。なぜ和紗の前で『みささぎ』が顕現したのか」
「・・・・・・」
「『みささぎ』が顕現する前の行動や会話を覚えてない?」
と、五条さんに問い詰められたけれど、私は口をつぐんだ。
あの時、『みささぎ』が口にした言葉。
───糠田が森が憎い
確かその直前、糠田が森の『額多之君』の伝説について話をしていた。
そのことを話したら、五条さんはどう思うんだろう。
(でも、やっぱり私の聞き間違いかもしれないし)
答えられないでいたら、
「まさか・・・」
五条さんが不穏な声で言った。
「アイツ、『みささぎ』を使って和紗に襲い掛かろうとした?」
「はぁ!?」
五条さんのまたもや突拍子もない発言に、素っ頓狂な声が出た。
「違いますよ!陵先生がそんなことする訳ないでしょ!」
「でも、アイツだってあんなナヨナヨしてても男だよ?下心くらいあるでしょ」
「まだそんなこと言ってるんですか・・・」
呆れたと肩をすくませていたら、五条さんは少しだけ真面目なトーンで言った。
「でも、それが心配で専門学校まで駆けつけたんだからね、僕」
「・・・・・・」
「・・・後悔したんだよね。昨日、『付き合っちゃえば』とか『婿入りしてもらえば』なんて焚き付けるようなこと言って」
「・・・・・・」
「和紗が本気にしたらどうしようって」
本当に、呆れた。
自分で勝手に言い放っておいて、それで勝手に後悔してるなんて。
なので、私はきっぱりと言った。
「そんなこと、欠片にも思ってませんよ」
「でも、それでもいいって思ったのも確かなんだよね」
「ん・・・?」
「和紗が、将来糠田が森に戻って『つるぎ庵』を開く時には、一緒にお菓子を作れて、店と和紗を支えてくれるような誰かが側にいたらいいんじゃないかって」
「・・・・・・」
「それが、和紗の幸せなんじゃないのかなって」
何をウダウダと言ってるのだろう、この人は。
私の幸せがどうとかなんとかなんて。
「私の幸せは、私が立派な和菓子職人になって、作った和菓子を沢山の人に食べてもらって、美味しいって喜んでもらえることです」
私は言った。
「その時、『つるぎ庵』に私ひとりでも誰かと一緒でも、それはどっちでもいいことです。でも・・・」
私は少し照れくさくて、スッと視線を逸らして続けた。
「・・・沢山の人の中には、五条さんだって含まれてるんですよ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沢山の人の中ひとり。
だけど、そこにあなたがいなければ。
言ってしまって、恥ずかしくて口をつぐんでいたら、
「わぁ!?」
いきなり五条さんに抱きすくめられた。
力いっぱいに抱きすくめられたので、一瞬、両足が地面から浮いた。
「・・・・・・」
この時、無下限のバリアは解かれていたようで、五条さんと私の身体はぐっと密着する。
五条さんの体温が伝わる。
五条さんの鼓動が聴こえる。