第13話 呪いに取り憑かれた男
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「そんな・・・」
陵先生の言葉に、私は愕然とした。
だけど、先生は落ち着いた口調で言葉を続けた。
「・・・僕が、『コイツ』の存在にハッキリと気づいたのは中学生の時。僕はこんな性格だから昔から嫌がらせのターゲットにされやすくて・・・そういうことをしかけてくる連中を返り討ちにしたことがきっかけで気づいた。・・・本当は、そのずっと前から憑りつかれていたのかもしれないけど」
そう言って、陵先生は目線を落とした。が、すぐに気を取り直したように顔を上げて語り続けた。
「おそらく、祖父も父も『コイツ』に憑りつかれていたんだと思う・・・。知らず知らずに『コイツ』で周囲の人を傷つけて、おそらく自責の念で・・・」
そこまで語ると、陵先生はついに項垂れるようにうつむいた。
「・・・きっと、僕も存在しちゃいけない存在なんだと思う。だから、このまま殺してください・・・」
しんとその場が静まり返る。
陵先生の過去は、私が想像しているよりもきっとずっと重い。
そう思うと、気軽に励ますような言葉はかけることが出来なかった。
「・・・そうか」
とつぶやいて、五条さんが椅子から立ち上がった。
私は慌てて身を翻して、五条さんと陵先生の間に入る。
五条さんは首を傾げて私を見下ろした。
「のいて、和紗」
「い、嫌です!」
「大丈夫だから」
と、五条さんは私をそっと脇に押しやって、陵先生の前に立った。
「今どきの若者は、潔いけれどすぐ投げ出しになりがちだね」
そして、陵先生の両腕を縛るしめ縄を切り落とした。
陵先生も私も、驚いて目を丸めた。
「え・・・」
「その力は、使いようによっては人を助けることが出来る」
「・・・・・・」
「呪いの扱いを君に教える。そして、制御できるようになるんだ。『みささぎ』を」
「・・・みささぎ?」
陵先生のつぶやきに、五条さんは返した。
「君に憑りついた怨霊の仮名だよ。とりあえずね。仲良くなったら好きな名前つけてやんなよ」
そして、五条さんはクルっと陵先生に背を向けた。
「・・・・・・」
呆然としている陵先生の元に、私は近づく。
すると、陵先生はゆっくりと私の顔を見上げた。
「・・・鶴來さん。さっきはごめん・・・。大丈夫?怪我は・・・」
「大丈夫です」
私が強く頷くと、陵先生はようやく安堵した表情を見せた。
だけどそれは一瞬のことで、すぐ目の奥が潤んで揺らいだ。
「・・・僕、生きていてもいいのかな」
「・・・・・・」
私はしゃがみ込んで、自分の手を陵先生の手に重ねて言った。
「・・・いいんですよ」
───そんな私たちの後ろ側で。
「ちっ」
と、五条さんが舌打ちしたのが聞こえてきた。そして、
「・・・これでよかったのか?」
と、硝子さんが五条さんに向かって問いかける。
すると、五条さんは少し苛立ったような声で言った。
「何が?」
「上層部にお伺い立てる前に勝手に決めて。乙骨の時といい、虎杖の時といい」
「いいよ、別に。僕が何言ったってどうせ連中は反対するんだし。それに、面白い人材は沢山いた方がいい」
「・・・の割に、あんまり愉快じゃなさそうだな」
「あ?」
「ライバル出現に柄にもなく焦ってる感じ?」
「・・・・・・」
───という会話を五条さんと硝子さんがしてることなど気に留める余裕もなく。
私は、静かに泣きむせぶ陵先生の手を励ます様に撫で続けていた。
そして、悠仁君や、まだ会ったこともない乙骨憂太という人のことを思った。
呪いを抱えながら生きていくということの辛さを。
そんなことを考えていたら、
「わぁっ」
突然、腕を引っ張られて陵先生から引き離された。
振り返ってみると、五条さんが私の腕を掴み上げていた。
「五条さん?いきなり何なんですか・・・」
「君たちは接触禁止」
「は?」
キョトンとする私と陵先生に、五条さんは言った。
「和紗に対して『みささぎ』を顕現させた原因がわかってない。だから、迂闊に近づいてはなりません!!」
そう言われると一理あるような、でも、どこか理不尽のような。
なので、私は。
「はぁ」
としか返事が出来なかった。
するとその様子を見ていた硝子さんが、
「・・・私情だな」
と、小さく笑っていた。
陵先生の言葉に、私は愕然とした。
だけど、先生は落ち着いた口調で言葉を続けた。
「・・・僕が、『コイツ』の存在にハッキリと気づいたのは中学生の時。僕はこんな性格だから昔から嫌がらせのターゲットにされやすくて・・・そういうことをしかけてくる連中を返り討ちにしたことがきっかけで気づいた。・・・本当は、そのずっと前から憑りつかれていたのかもしれないけど」
そう言って、陵先生は目線を落とした。が、すぐに気を取り直したように顔を上げて語り続けた。
「おそらく、祖父も父も『コイツ』に憑りつかれていたんだと思う・・・。知らず知らずに『コイツ』で周囲の人を傷つけて、おそらく自責の念で・・・」
そこまで語ると、陵先生はついに項垂れるようにうつむいた。
「・・・きっと、僕も存在しちゃいけない存在なんだと思う。だから、このまま殺してください・・・」
しんとその場が静まり返る。
陵先生の過去は、私が想像しているよりもきっとずっと重い。
そう思うと、気軽に励ますような言葉はかけることが出来なかった。
「・・・そうか」
とつぶやいて、五条さんが椅子から立ち上がった。
私は慌てて身を翻して、五条さんと陵先生の間に入る。
五条さんは首を傾げて私を見下ろした。
「のいて、和紗」
「い、嫌です!」
「大丈夫だから」
と、五条さんは私をそっと脇に押しやって、陵先生の前に立った。
「今どきの若者は、潔いけれどすぐ投げ出しになりがちだね」
そして、陵先生の両腕を縛るしめ縄を切り落とした。
陵先生も私も、驚いて目を丸めた。
「え・・・」
「その力は、使いようによっては人を助けることが出来る」
「・・・・・・」
「呪いの扱いを君に教える。そして、制御できるようになるんだ。『みささぎ』を」
「・・・みささぎ?」
陵先生のつぶやきに、五条さんは返した。
「君に憑りついた怨霊の仮名だよ。とりあえずね。仲良くなったら好きな名前つけてやんなよ」
そして、五条さんはクルっと陵先生に背を向けた。
「・・・・・・」
呆然としている陵先生の元に、私は近づく。
すると、陵先生はゆっくりと私の顔を見上げた。
「・・・鶴來さん。さっきはごめん・・・。大丈夫?怪我は・・・」
「大丈夫です」
私が強く頷くと、陵先生はようやく安堵した表情を見せた。
だけどそれは一瞬のことで、すぐ目の奥が潤んで揺らいだ。
「・・・僕、生きていてもいいのかな」
「・・・・・・」
私はしゃがみ込んで、自分の手を陵先生の手に重ねて言った。
「・・・いいんですよ」
───そんな私たちの後ろ側で。
「ちっ」
と、五条さんが舌打ちしたのが聞こえてきた。そして、
「・・・これでよかったのか?」
と、硝子さんが五条さんに向かって問いかける。
すると、五条さんは少し苛立ったような声で言った。
「何が?」
「上層部にお伺い立てる前に勝手に決めて。乙骨の時といい、虎杖の時といい」
「いいよ、別に。僕が何言ったってどうせ連中は反対するんだし。それに、面白い人材は沢山いた方がいい」
「・・・の割に、あんまり愉快じゃなさそうだな」
「あ?」
「ライバル出現に柄にもなく焦ってる感じ?」
「・・・・・・」
───という会話を五条さんと硝子さんがしてることなど気に留める余裕もなく。
私は、静かに泣きむせぶ陵先生の手を励ます様に撫で続けていた。
そして、悠仁君や、まだ会ったこともない乙骨憂太という人のことを思った。
呪いを抱えながら生きていくということの辛さを。
そんなことを考えていたら、
「わぁっ」
突然、腕を引っ張られて陵先生から引き離された。
振り返ってみると、五条さんが私の腕を掴み上げていた。
「五条さん?いきなり何なんですか・・・」
「君たちは接触禁止」
「は?」
キョトンとする私と陵先生に、五条さんは言った。
「和紗に対して『みささぎ』を顕現させた原因がわかってない。だから、迂闊に近づいてはなりません!!」
そう言われると一理あるような、でも、どこか理不尽のような。
なので、私は。
「はぁ」
としか返事が出来なかった。
するとその様子を見ていた硝子さんが、
「・・・私情だな」
と、小さく笑っていた。