第13話 呪いに取り憑かれた男
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「あ、起きた」
目を覚ますと、いきなり硝子さんの顔が視界に飛び込んできた。
「・・・!?」
私は驚いて上半身を跳ねるようにして起き上がった。そして、辺りをキョロキョロ見回した。
見知らぬ部屋。数台のベッドと、薬品棚が見えた。スーッと鼻孔をつくような消毒用アルコールの匂いがする。
「こ、ここは?」
「呪術高専の医務室だよ」
「呪術高専・・・?」
私は硝子さんの言葉に目を瞬かせる。
硝子さんは言葉を続けた。
「五条がアンタを抱えて連れて来たんだよ。本来なら部外者は立ち入り禁止なんだけど、アイツが御三家パワーを使って許可させたんだ」
「ご、御三家?」
「特級過呪怨霊に遭遇したんだってね。酷い目に遭ったんだな」
「・・・・・」
特級過呪怨霊。
それって、もしかして。
「硝子さん、私以外に誰かここに運ばれてきた人はいましたか?」
「ああ。その特級過呪怨霊の被呪者も連れて来られたよ」
「その被呪者は、今どこに?」
「五条が取調室に連れて行ったよ」
「取り調べ・・・?」
嫌な予感がする。
私は食いつくように硝子さんに言った。
「その取調室に連れて行ってくれませんか?」
「え。それはマズイかも。無理無理」
「お願いします・・・!」
「・・・・・・」
私が深々と頭を下げると、硝子さんは困ったようにひとつ息を吐いた。
そして、
「わかった。礼にまた金沢の地酒、飲ませてよ」
と、言った。
取調室は、高専の地下深くにあった。
等間隔で蠟燭が灯る薄暗く湿った地下道を通り、突き当りにある木造の扉の前に辿り着いた。
「ここだよ」
と、硝子さんはその扉に手を押し当ててゆっくりと開いていた。
扉はギイィと軋んだ音を立てる。
「陵慶太、22歳。出身は奈良県」
すると、中から五条さんの声が聞こえてきた。
「家族は母親。そして、母の再婚に伴い、継父とその息子二人・・・か」
五条さんの話す声を聞きながら、私はそっと部屋を覗き込んだ。
取調室は壁から天井まで一面に隙間なくお札が張られている。
その部屋の中央に、五条さんと陵先生は向かい合って座っていた。
五条さんは椅子の背を抱きながら跨ぐように座り、陵先生はしめ縄の様なもので後ろ手に両手を縛られて座っている。
「でも、君は継父側の姓を名乗らず、実父の姓を名乗り続けている。その父と祖父は二人とも君の幼少期に自殺を遂げている、と」
「・・・よく調べましたね」
「『陵』なんて珍しい苗字だからね。でも、てっきり呪術師の家系かと思ったのに全く無関係なのは意外だったな」
「・・・だから、呪術なんて知らないっていったでしょう」
「じゃあ、あの特級過呪怨霊に憑りつかれたのはいつから?」
「・・・・・・」
「『アイツ』は、君の父親と祖父の自殺と関係があるのかな?」
「・・・・・・」
「答えられない?」
「・・・・・・」
「じゃあ、質問を変えよう。『アイツ』を顕現させたのはこれまでで何回?」
「・・・・・・」
「何がきっかけで?」
「・・・・・・」
「忘れた?じゃあ、今日のことなら覚えてるよね?」
「・・・・・・」
「なぜ、今日、『アイツ』を顕現させた?」
「・・・・・・」
「なぜ、和紗を傷つけた」
「・・・・・・」
「理由によっては、君ごと『アイツ』を祓う よ?」
その響きは、本気の響きだった。
「五条さん、陵先生!」
私は部屋の中に飛び込んだ。
五条さんも陵先生も、突然のことに唖然としている。
「和紗。こんなとこ来ちゃダメだよ」
「殺すなんて、やめて。陵先生は悪くない・・・」
「悪くない?」
「陵先生は、私を傷つけるつもりなんてなかった。あの怨霊を止めようとしてくれたもの」
「・・・あのね、和紗」
五条さんは半ば呆れた様子で言った。
「つもりなんてない、しようとしたってのが一番タチが悪いんだよ。彼はあの怨霊を制御出来てない。非常に危険な存在だよ」
「でも・・・!」
「いいんだ、鶴來さん!」
陵先生が言った。そして、五条さんをじっと見て。
「・・・僕を『コイツ』ごと殺して 下さい」
目を覚ますと、いきなり硝子さんの顔が視界に飛び込んできた。
「・・・!?」
私は驚いて上半身を跳ねるようにして起き上がった。そして、辺りをキョロキョロ見回した。
見知らぬ部屋。数台のベッドと、薬品棚が見えた。スーッと鼻孔をつくような消毒用アルコールの匂いがする。
「こ、ここは?」
「呪術高専の医務室だよ」
「呪術高専・・・?」
私は硝子さんの言葉に目を瞬かせる。
硝子さんは言葉を続けた。
「五条がアンタを抱えて連れて来たんだよ。本来なら部外者は立ち入り禁止なんだけど、アイツが御三家パワーを使って許可させたんだ」
「ご、御三家?」
「特級過呪怨霊に遭遇したんだってね。酷い目に遭ったんだな」
「・・・・・」
特級過呪怨霊。
それって、もしかして。
「硝子さん、私以外に誰かここに運ばれてきた人はいましたか?」
「ああ。その特級過呪怨霊の被呪者も連れて来られたよ」
「その被呪者は、今どこに?」
「五条が取調室に連れて行ったよ」
「取り調べ・・・?」
嫌な予感がする。
私は食いつくように硝子さんに言った。
「その取調室に連れて行ってくれませんか?」
「え。それはマズイかも。無理無理」
「お願いします・・・!」
「・・・・・・」
私が深々と頭を下げると、硝子さんは困ったようにひとつ息を吐いた。
そして、
「わかった。礼にまた金沢の地酒、飲ませてよ」
と、言った。
取調室は、高専の地下深くにあった。
等間隔で蠟燭が灯る薄暗く湿った地下道を通り、突き当りにある木造の扉の前に辿り着いた。
「ここだよ」
と、硝子さんはその扉に手を押し当ててゆっくりと開いていた。
扉はギイィと軋んだ音を立てる。
「陵慶太、22歳。出身は奈良県」
すると、中から五条さんの声が聞こえてきた。
「家族は母親。そして、母の再婚に伴い、継父とその息子二人・・・か」
五条さんの話す声を聞きながら、私はそっと部屋を覗き込んだ。
取調室は壁から天井まで一面に隙間なくお札が張られている。
その部屋の中央に、五条さんと陵先生は向かい合って座っていた。
五条さんは椅子の背を抱きながら跨ぐように座り、陵先生はしめ縄の様なもので後ろ手に両手を縛られて座っている。
「でも、君は継父側の姓を名乗らず、実父の姓を名乗り続けている。その父と祖父は二人とも君の幼少期に自殺を遂げている、と」
「・・・よく調べましたね」
「『陵』なんて珍しい苗字だからね。でも、てっきり呪術師の家系かと思ったのに全く無関係なのは意外だったな」
「・・・だから、呪術なんて知らないっていったでしょう」
「じゃあ、あの特級過呪怨霊に憑りつかれたのはいつから?」
「・・・・・・」
「『アイツ』は、君の父親と祖父の自殺と関係があるのかな?」
「・・・・・・」
「答えられない?」
「・・・・・・」
「じゃあ、質問を変えよう。『アイツ』を顕現させたのはこれまでで何回?」
「・・・・・・」
「何がきっかけで?」
「・・・・・・」
「忘れた?じゃあ、今日のことなら覚えてるよね?」
「・・・・・・」
「なぜ、今日、『アイツ』を顕現させた?」
「・・・・・・」
「なぜ、和紗を傷つけた」
「・・・・・・」
「理由によっては、君ごと『アイツ』を
その響きは、本気の響きだった。
「五条さん、陵先生!」
私は部屋の中に飛び込んだ。
五条さんも陵先生も、突然のことに唖然としている。
「和紗。こんなとこ来ちゃダメだよ」
「殺すなんて、やめて。陵先生は悪くない・・・」
「悪くない?」
「陵先生は、私を傷つけるつもりなんてなかった。あの怨霊を止めようとしてくれたもの」
「・・・あのね、和紗」
五条さんは半ば呆れた様子で言った。
「つもりなんてない、しようとしたってのが一番タチが悪いんだよ。彼はあの怨霊を制御出来てない。非常に危険な存在だよ」
「でも・・・!」
「いいんだ、鶴來さん!」
陵先生が言った。そして、五条さんをじっと見て。
「・・・僕を『コイツ』ごと