第13話 呪いに取り憑かれた男
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「・・・諸説あるみたいですけど、平安時代の『額多之君』という女性が詠んだ和歌に因んで名づけられたらしいですよ」
と、糠田が森での通説を話した。
すると、陵先生はますます興味深そうに私に視線を向けた。
「ぬかたの・・・きみ?」
「はい。私の故郷の糠田が森に伝わる伝説なんです」
「ぬかたがもり・・・」
「糠田が森に、『額多之君』というお姫様が京の都を追われてやって来て、その『額多之君』は失意のうちに自らの呪いで化物になってしまったそうです」
使った道具の洗い物をしながら、私は『額多之君』の伝説を語り続けた。
「その化け物になった『額多之君』がもたらす災いから村を守るために、『額多之君』への捧げものとして作られたのが、『あけづる』だそうです」
「・・・・・・」
「今は、『あけづる』は厄除けとして食べられていて・・・」
カシャ―ーーン・・・
洗っていた篩を床に落としてしまった。
そのせいで派手な音が教室に鳴り響く。
ちがう、そんなことよりも。
「え・・・?」
私は目を瞬かせた。
何が起きているのか理解出来なかった。
今私の目の前には、突如、大きな呪霊が現れていて、その大きな手が私の首にかけられている。
『ヌ``ヌヌヴヌ``ヌゥゥゥ・・・』
身体に響くような重低音のうめき声を、その呪霊は上げる。
白く粘膜に覆われた滑った肌。
筋骨隆々とした逞しい上半身に対して、下半身は細くしぼんでいる。まるで、ランプの精霊のようなシルエットだ。
その顔に眼と鼻筋と耳はなく、まるで虚空のような鼻の孔と、大きな口がある。
頭頂部には、剥き出しの脳みそがある。
(どうしてここに呪霊が!?呪力なんてまったく感じなかったのに・・・!)
そんなことを考えられる余裕は、すぐになくなった。
「ぐ・・・っ!!」
その大型呪霊は、私の首にかけた手に力を入れてそのまま上へと持ち上げた。
私の足が床から浮き上がる。
息が、出来ない。
その時だった。
「や、やめろ!!」
陵先生が、叫び声をあげた。
「彼女を離せ!離すんだ!」
そして、大型呪霊を諫めるようにしがみつく。
その光景を見て、私はハッとした。
(先生は・・・呪霊が見えてる・・・?)
しかし、大型呪霊は空いている方の手を振り上げて陵先生を振るい払った。
「・・・・・!」
陵先生は吹き飛ばされて壁に激突した。そして、そのまま意識を失いグッタリと床に倒れ込んだ。
「・・・・・っ」
私はグッと両手で私の首を締めあげている大型呪霊の手を掴んだ。
そして、朦朧としてくる意識を何とか保ち呪力を練ろうと試みる。
(反転術式・・・退魔の・・・力・・・)
大型呪霊の手を掴んだ私の両手に呪力が迸る。
すると、
『ヌ``ヌ``アアァァアアア!!』
大型呪霊は驚いたように悲鳴を上げて、私から手を離した。
そのまま私は床にペシャリと着地した。
「ゲホッゲホッ」
私はむせ返りながらも立ち上がり、陵先生の元に駆け寄った。
「せ、先生・・・」
気絶している陵先生を抱き起す。
肩を組んで何とか立ち上がる
取り合えず、この場を脱しなければ。
しかし。
『ヌ、ぬ、ぬかたガもり・・・』
すぐに大型呪霊が私たちに迫り来て、壁際へ追い詰める。
そして、それまでのうめき声とは異なり、
『ニ、にクイ・・・ぬかタがモリ・・・ガ・・・ニ、くい…』
と、ハッキリと言葉を口にした。
「・・・え・・・」
私は、困惑する。
糠田が森が憎い
その言葉に、そして、目の前の呪霊が、存在しない眼の辺りからポロポロと涙を流していることに。
『ウ、ウゥゥウう・・・』
大型呪霊は、依然として涙をこぼし続けている。
「・・・・・・」
すると、この大型呪霊に妙な同情心が湧いてきて、私は戸惑いながらも慰めようとその頭を撫でようと手を伸ばした。が。
「きゃあっ!」
突然、目の前の大型呪霊は大きな衝撃と共に教室の窓を突き破り廊下まで吹き飛ばされた。
「やーっぱり、二人きりにさせるのは危険だったね」
すると、反対の窓側から声が聞こえた。
私は驚いてそちらを振り返る。
「・・・とはいえ、まさか呪霊が現れるなんて想定外だったけど」
そこには、窓から実習室に入って来る五条さんの姿があった。
と、糠田が森での通説を話した。
すると、陵先生はますます興味深そうに私に視線を向けた。
「ぬかたの・・・きみ?」
「はい。私の故郷の糠田が森に伝わる伝説なんです」
「ぬかたがもり・・・」
「糠田が森に、『額多之君』というお姫様が京の都を追われてやって来て、その『額多之君』は失意のうちに自らの呪いで化物になってしまったそうです」
使った道具の洗い物をしながら、私は『額多之君』の伝説を語り続けた。
「その化け物になった『額多之君』がもたらす災いから村を守るために、『額多之君』への捧げものとして作られたのが、『あけづる』だそうです」
「・・・・・・」
「今は、『あけづる』は厄除けとして食べられていて・・・」
カシャ―ーーン・・・
洗っていた篩を床に落としてしまった。
そのせいで派手な音が教室に鳴り響く。
ちがう、そんなことよりも。
「え・・・?」
私は目を瞬かせた。
何が起きているのか理解出来なかった。
今私の目の前には、突如、大きな呪霊が現れていて、その大きな手が私の首にかけられている。
『ヌ``ヌヌヴヌ``ヌゥゥゥ・・・』
身体に響くような重低音のうめき声を、その呪霊は上げる。
白く粘膜に覆われた滑った肌。
筋骨隆々とした逞しい上半身に対して、下半身は細くしぼんでいる。まるで、ランプの精霊のようなシルエットだ。
その顔に眼と鼻筋と耳はなく、まるで虚空のような鼻の孔と、大きな口がある。
頭頂部には、剥き出しの脳みそがある。
(どうしてここに呪霊が!?呪力なんてまったく感じなかったのに・・・!)
そんなことを考えられる余裕は、すぐになくなった。
「ぐ・・・っ!!」
その大型呪霊は、私の首にかけた手に力を入れてそのまま上へと持ち上げた。
私の足が床から浮き上がる。
息が、出来ない。
その時だった。
「や、やめろ!!」
陵先生が、叫び声をあげた。
「彼女を離せ!離すんだ!」
そして、大型呪霊を諫めるようにしがみつく。
その光景を見て、私はハッとした。
(先生は・・・呪霊が見えてる・・・?)
しかし、大型呪霊は空いている方の手を振り上げて陵先生を振るい払った。
「・・・・・!」
陵先生は吹き飛ばされて壁に激突した。そして、そのまま意識を失いグッタリと床に倒れ込んだ。
「・・・・・っ」
私はグッと両手で私の首を締めあげている大型呪霊の手を掴んだ。
そして、朦朧としてくる意識を何とか保ち呪力を練ろうと試みる。
(反転術式・・・退魔の・・・力・・・)
大型呪霊の手を掴んだ私の両手に呪力が迸る。
すると、
『ヌ``ヌ``アアァァアアア!!』
大型呪霊は驚いたように悲鳴を上げて、私から手を離した。
そのまま私は床にペシャリと着地した。
「ゲホッゲホッ」
私はむせ返りながらも立ち上がり、陵先生の元に駆け寄った。
「せ、先生・・・」
気絶している陵先生を抱き起す。
肩を組んで何とか立ち上がる
取り合えず、この場を脱しなければ。
しかし。
『ヌ、ぬ、ぬかたガもり・・・』
すぐに大型呪霊が私たちに迫り来て、壁際へ追い詰める。
そして、それまでのうめき声とは異なり、
『ニ、にクイ・・・ぬかタがモリ・・・ガ・・・ニ、くい…』
と、ハッキリと言葉を口にした。
「・・・え・・・」
私は、困惑する。
糠田が森が憎い
その言葉に、そして、目の前の呪霊が、存在しない眼の辺りからポロポロと涙を流していることに。
『ウ、ウゥゥウう・・・』
大型呪霊は、依然として涙をこぼし続けている。
「・・・・・・」
すると、この大型呪霊に妙な同情心が湧いてきて、私は戸惑いながらも慰めようとその頭を撫でようと手を伸ばした。が。
「きゃあっ!」
突然、目の前の大型呪霊は大きな衝撃と共に教室の窓を突き破り廊下まで吹き飛ばされた。
「やーっぱり、二人きりにさせるのは危険だったね」
すると、反対の窓側から声が聞こえた。
私は驚いてそちらを振り返る。
「・・・とはいえ、まさか呪霊が現れるなんて想定外だったけど」
そこには、窓から実習室に入って来る五条さんの姿があった。