第13話 呪いに取り憑かれた男
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この日の授業が終わった直後、悠仁君からLINEメッセージが来た。
『お弁当いただきました!すげー美味かった!特に牛肉のしぐれ煮。味付けも濃くて、ご飯がめちゃくちゃすすんだ。また作ってほしいな』
と、内容はお弁当の感想だった。
悠仁君はこんな風にマメに感想を送ってくれる。
『よかった。味見する時間がなかったから少し心配だったの。上手に出来ててよかった。うん、また作るね』
と、私は返信する。
すると、ポスッと返信がすぐにきた。
『和紗さんは弁当食ってないの?』
私もすぐさま返信する。
『人にあげちゃって食べてないの』
『マジで?大丈夫?腹減ってない?』
『大丈夫。先におにぎり食べてたから。で、その人っていうのが先生なんだけど、ティモシー・シャラメに似てるって、女の子にキャアキャア言われてる』
『マジで?』
『うん。ハーフっぽい顔立ち。でも、それでいて和菓子の先生だからギャップがすごい』
『ティモシー・シャラメが和菓子作ってんのか。ウケる。ところでさ、ティモシー・シャラメってフルネームで言いたくなる名前だよねー。ジョン・フルシアンテとかさー』
『確かに。語呂が良い名前だよね』
・・・と、こんな風にたわいもないやりとりがしばらく続く。
潜伏生活で、悠仁君はきっとコミュニケーションに飢えているのだろう。
それでも、お弁当の感想をただ美味しかっただけでなく具体的に伝えてくれるのは、私も嬉しい。
(悠仁君が旦那さんになる人は幸せだろうなぁ)
なんてホッコリ思いながら、校舎を出ようとした時だった。
「鶴來さん・・・っ!」
名前を呼ばれて、私は立ち止まり振り返った。
すると、陵 先生がパタパタとこちらに向かって走ってきた。
が。
「うわぁっ!?」
陵先生は前につんのめってこけてしまった。
「陵先生!?」
私は驚いて先生の方へ駆けつけた。
「大丈夫ですか?」
「う、うん・・・いてて・・・」
と、陵先生は顔を上げると、
「あの、これ」
と、倒れたままの態勢でお弁当箱を私に差し出した。
それはさっき私が渡したもので、ピカピカに綺麗に洗われている。
私は少し驚きつつ、それを受け取った。
「・・・明日でも良かったのに。ご丁寧にありがとうございます」
「いや、こちらこそ・・・。すごく美味しかった」
そう言いながら、陵先生はゆらりと立ちあがった。
「上京してからお金がなくて、ずっとおにぎり一個の生活だったから。久々に肉とか野菜とかの総菜で、すごく嬉しかった」
「上京?」
「・・・僕は奈良出身で」
相変わらずのか細い声で、陵先生は続けた。
「実家は奈良にある和菓子店なんだ。だから、さっきの鶴來さんの話、当たり。和菓子のこともそこで学んだ」
「・・・・・・」
「でも、家業は兄さん一家が手伝っているから、僕は居場所がなくてね。それならいっそと思って、上京して教師になることにしたんだ」
「そうだったんですか」
「・・・でも、教えるのがどうにも上手くいかなくて。それも鶴來さんが指摘した通り。実家で感覚的に教わってたから・・・」
と、陵先生はフレームが曲がった眼鏡がずり落ちないように手で押さえながら苦笑いを浮かべた。
「でも、言い訳にはならないよね。もっとわかりやすい授業ができるよう頑張るよ」
そして、立ち去ろうと踵を返す。
「・・・じゃあ、ごちそうさまでした」
「・・・あの」
私は口を開いた。
「よかったら、明日から先生の分のお弁当も作りましょうか?」
こんなのお節介だってわかってる。
だけど、その時は深く考えることなく私はそんな言葉を口走っていた。
「え・・・」
陵先生は立ち止まり、戸惑いの声を上げた。
『僕は居場所がなくてね』
ふいにこぼした先生の言葉に妙に共鳴して、思わずそんなお節介を申し出ていた。
「和紗は和食得意だし、確かに美味いんだけどさぁ。いーっつも茶色っぽいおかずばっかじゃない?今度はカラフルでオシャレなデリっぽい弁当にしてほしいなぁ」
空っぽになったお弁当を持ち帰るのは、基本的には伊地知さん。そして、任務がない時は五条さんが持って帰ってくる。
この日は、五条さんが空のお弁当箱を流し台に置くなり、開口一番にそう言われた。
『お弁当いただきました!すげー美味かった!特に牛肉のしぐれ煮。味付けも濃くて、ご飯がめちゃくちゃすすんだ。また作ってほしいな』
と、内容はお弁当の感想だった。
悠仁君はこんな風にマメに感想を送ってくれる。
『よかった。味見する時間がなかったから少し心配だったの。上手に出来ててよかった。うん、また作るね』
と、私は返信する。
すると、ポスッと返信がすぐにきた。
『和紗さんは弁当食ってないの?』
私もすぐさま返信する。
『人にあげちゃって食べてないの』
『マジで?大丈夫?腹減ってない?』
『大丈夫。先におにぎり食べてたから。で、その人っていうのが先生なんだけど、ティモシー・シャラメに似てるって、女の子にキャアキャア言われてる』
『マジで?』
『うん。ハーフっぽい顔立ち。でも、それでいて和菓子の先生だからギャップがすごい』
『ティモシー・シャラメが和菓子作ってんのか。ウケる。ところでさ、ティモシー・シャラメってフルネームで言いたくなる名前だよねー。ジョン・フルシアンテとかさー』
『確かに。語呂が良い名前だよね』
・・・と、こんな風にたわいもないやりとりがしばらく続く。
潜伏生活で、悠仁君はきっとコミュニケーションに飢えているのだろう。
それでも、お弁当の感想をただ美味しかっただけでなく具体的に伝えてくれるのは、私も嬉しい。
(悠仁君が旦那さんになる人は幸せだろうなぁ)
なんてホッコリ思いながら、校舎を出ようとした時だった。
「鶴來さん・・・っ!」
名前を呼ばれて、私は立ち止まり振り返った。
すると、
が。
「うわぁっ!?」
陵先生は前につんのめってこけてしまった。
「陵先生!?」
私は驚いて先生の方へ駆けつけた。
「大丈夫ですか?」
「う、うん・・・いてて・・・」
と、陵先生は顔を上げると、
「あの、これ」
と、倒れたままの態勢でお弁当箱を私に差し出した。
それはさっき私が渡したもので、ピカピカに綺麗に洗われている。
私は少し驚きつつ、それを受け取った。
「・・・明日でも良かったのに。ご丁寧にありがとうございます」
「いや、こちらこそ・・・。すごく美味しかった」
そう言いながら、陵先生はゆらりと立ちあがった。
「上京してからお金がなくて、ずっとおにぎり一個の生活だったから。久々に肉とか野菜とかの総菜で、すごく嬉しかった」
「上京?」
「・・・僕は奈良出身で」
相変わらずのか細い声で、陵先生は続けた。
「実家は奈良にある和菓子店なんだ。だから、さっきの鶴來さんの話、当たり。和菓子のこともそこで学んだ」
「・・・・・・」
「でも、家業は兄さん一家が手伝っているから、僕は居場所がなくてね。それならいっそと思って、上京して教師になることにしたんだ」
「そうだったんですか」
「・・・でも、教えるのがどうにも上手くいかなくて。それも鶴來さんが指摘した通り。実家で感覚的に教わってたから・・・」
と、陵先生はフレームが曲がった眼鏡がずり落ちないように手で押さえながら苦笑いを浮かべた。
「でも、言い訳にはならないよね。もっとわかりやすい授業ができるよう頑張るよ」
そして、立ち去ろうと踵を返す。
「・・・じゃあ、ごちそうさまでした」
「・・・あの」
私は口を開いた。
「よかったら、明日から先生の分のお弁当も作りましょうか?」
こんなのお節介だってわかってる。
だけど、その時は深く考えることなく私はそんな言葉を口走っていた。
「え・・・」
陵先生は立ち止まり、戸惑いの声を上げた。
『僕は居場所がなくてね』
ふいにこぼした先生の言葉に妙に共鳴して、思わずそんなお節介を申し出ていた。
「和紗は和食得意だし、確かに美味いんだけどさぁ。いーっつも茶色っぽいおかずばっかじゃない?今度はカラフルでオシャレなデリっぽい弁当にしてほしいなぁ」
空っぽになったお弁当を持ち帰るのは、基本的には伊地知さん。そして、任務がない時は五条さんが持って帰ってくる。
この日は、五条さんが空のお弁当箱を流し台に置くなり、開口一番にそう言われた。