第13話 呪いに取り憑かれた男
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さっそく陵 先生の指導の下、和菓子作り実習が始まった。
課題は、アサガオの形の練り切り。
練りきりとは、白あんとつなぎを混ぜ合わせた和菓子で、季節の風物を形にする。もうすぐ夏休み、ということでアサガオの形というわけだ。
しかし、生地となる白あんと白玉粉、片栗粉のちょうどいい混ざり具合やアサガオの形の形成が難しく、皆悪戦苦闘している。
「陵先生~。なかなか生地がまとまらないんですけど、どうしたらいいですか?」
「着色が綺麗にできません。どうしたらいいですか?」
あちこちから陵先生に対して質問が飛んでくる。
陵先生は不慣れな様子でアタフタしながら、あちこちの席を渡り歩き質問に答えていく。
「こ、これはもう少し水を足して・・・」
「どれくらいですか?」
「ど、どれくらい・・・」
陵先生は少し困ったように言葉を詰まらせた。
「こう、良い感じになるまで・・・」
その返答に、生徒は眉をひそめる。
「そんないい加減な言い方じゃなくて、ちゃんと数量で教えてください」
「は、はい・・・。すみません」
生徒に咎められて、陵先生は委縮する。
まるで生徒と講師の立場が逆転した様子に、他の生徒たちは失笑した。
「なんやねん、あの陵っちゅうセンセイは。『良い感じ』ってなんやあの説明は」
モイちゃんが言った。
「おまけに声もボソボソ小さくて聞き取りにくいし。あんなんでよう講師なろうと思ったなぁ」
良くも悪くも肚にモノを溜めこまない、ハキハキとした物言いのモイちゃんには、どうも陵先生の授業が合わなかったらしい。
「そうだね。感覚的な言い方でなくちゃんと数値化した教え方をしてほしいよね」
普段、講師や授業に対して不平不満を漏らさない大野君まで苦言をこぼした。
今は昼休み。
私とモイちゃんと大野君は、学校の屋上広場で昼食を食べている。
「きっと最初の授業だったから緊張したんだよ」
お弁当を食べながら、私は言った。
「これから慣れてきたら大丈夫じゃないかな」
「鶴來ちゃんは優しいなぁ」
モイちゃんが言った。
「ウチはあかんわぁ。ああいうウジウジしたヤツ見るとイライラしてくんねん。関西人やからかな?」
「・・・関西人は関係ないんじゃないのかな?」
「そんなことより、鶴來さん。最近はずっとお弁当なんだね?いつもおにぎりだけだったのに・・・」
大野君に言われて、私は頷く。
「うん。知り合いにお弁当作ることになったから。お弁当って一個作るのも二個作るのも手間は同じだし」
「知り合いって、もしかしてカレシか~?」
モイちゃんがニマニマしながら尋ねてくる。
それを聞いて、大野君が目を丸める。
「え、そうなの!?鶴來さん・・・」
「ち、違う違う。そんなんじゃ・・・」
と否定していると、陵先生が屋上にやって来るのが見えた。
「お、噂をすれば」
と、モイちゃんが言う。
噂の陵先生は、ベンチに腰掛けて提げていたコンビニ袋からおにぎりを取り出した。どうやらお昼ご飯らしい。
陵先生は丁寧な手つきでおにぎりのフィルムを外していく。海苔が破くことなく綺麗にフィルムを外して、いざ食べようとした時だった。
バシンッ!!
どこからか飛んできたボールが先生の顔面に勢いよく直撃した。
その弾みで先生の眼鏡とおにぎりが吹き飛ばされ、無残にも地面に転がっていった。
「す、すみませーん。大丈夫ですか?」
円陣バレーで遊んでいた女子グループの一人が陵先生の方へ駆け寄る。どうやら彼女たちのボールがぶつかったらしい。
「・・・だ、大丈夫」
陵先生は顔を右手で覆いつつヨロヨロと顔を上げる。
その陵先生の顔を見て、
「・・・・・・!」
駆け寄った生徒はハッと息を飲むような顔をした。
その傍で、陵先生は眼鏡と土だらけになってしまったおにぎりを拾って、ベンチから立ち上がりそのまま広場から去ってしまった。
課題は、アサガオの形の練り切り。
練りきりとは、白あんとつなぎを混ぜ合わせた和菓子で、季節の風物を形にする。もうすぐ夏休み、ということでアサガオの形というわけだ。
しかし、生地となる白あんと白玉粉、片栗粉のちょうどいい混ざり具合やアサガオの形の形成が難しく、皆悪戦苦闘している。
「陵先生~。なかなか生地がまとまらないんですけど、どうしたらいいですか?」
「着色が綺麗にできません。どうしたらいいですか?」
あちこちから陵先生に対して質問が飛んでくる。
陵先生は不慣れな様子でアタフタしながら、あちこちの席を渡り歩き質問に答えていく。
「こ、これはもう少し水を足して・・・」
「どれくらいですか?」
「ど、どれくらい・・・」
陵先生は少し困ったように言葉を詰まらせた。
「こう、良い感じになるまで・・・」
その返答に、生徒は眉をひそめる。
「そんないい加減な言い方じゃなくて、ちゃんと数量で教えてください」
「は、はい・・・。すみません」
生徒に咎められて、陵先生は委縮する。
まるで生徒と講師の立場が逆転した様子に、他の生徒たちは失笑した。
「なんやねん、あの陵っちゅうセンセイは。『良い感じ』ってなんやあの説明は」
モイちゃんが言った。
「おまけに声もボソボソ小さくて聞き取りにくいし。あんなんでよう講師なろうと思ったなぁ」
良くも悪くも肚にモノを溜めこまない、ハキハキとした物言いのモイちゃんには、どうも陵先生の授業が合わなかったらしい。
「そうだね。感覚的な言い方でなくちゃんと数値化した教え方をしてほしいよね」
普段、講師や授業に対して不平不満を漏らさない大野君まで苦言をこぼした。
今は昼休み。
私とモイちゃんと大野君は、学校の屋上広場で昼食を食べている。
「きっと最初の授業だったから緊張したんだよ」
お弁当を食べながら、私は言った。
「これから慣れてきたら大丈夫じゃないかな」
「鶴來ちゃんは優しいなぁ」
モイちゃんが言った。
「ウチはあかんわぁ。ああいうウジウジしたヤツ見るとイライラしてくんねん。関西人やからかな?」
「・・・関西人は関係ないんじゃないのかな?」
「そんなことより、鶴來さん。最近はずっとお弁当なんだね?いつもおにぎりだけだったのに・・・」
大野君に言われて、私は頷く。
「うん。知り合いにお弁当作ることになったから。お弁当って一個作るのも二個作るのも手間は同じだし」
「知り合いって、もしかしてカレシか~?」
モイちゃんがニマニマしながら尋ねてくる。
それを聞いて、大野君が目を丸める。
「え、そうなの!?鶴來さん・・・」
「ち、違う違う。そんなんじゃ・・・」
と否定していると、陵先生が屋上にやって来るのが見えた。
「お、噂をすれば」
と、モイちゃんが言う。
噂の陵先生は、ベンチに腰掛けて提げていたコンビニ袋からおにぎりを取り出した。どうやらお昼ご飯らしい。
陵先生は丁寧な手つきでおにぎりのフィルムを外していく。海苔が破くことなく綺麗にフィルムを外して、いざ食べようとした時だった。
バシンッ!!
どこからか飛んできたボールが先生の顔面に勢いよく直撃した。
その弾みで先生の眼鏡とおにぎりが吹き飛ばされ、無残にも地面に転がっていった。
「す、すみませーん。大丈夫ですか?」
円陣バレーで遊んでいた女子グループの一人が陵先生の方へ駆け寄る。どうやら彼女たちのボールがぶつかったらしい。
「・・・だ、大丈夫」
陵先生は顔を右手で覆いつつヨロヨロと顔を上げる。
その陵先生の顔を見て、
「・・・・・・!」
駆け寄った生徒はハッと息を飲むような顔をした。
その傍で、陵先生は眼鏡と土だらけになってしまったおにぎりを拾って、ベンチから立ち上がりそのまま広場から去ってしまった。