第12話 回想、糠田が森
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僕は即答せず、複雑な感情で和紗の顔を見返した。
・・・おじいちゃんは自分は人柱なんかじゃないって言ってたけど。
やはり、ひとつの村の運命を一人の人間が背負っていくのは、かなり過酷なことだ。
(君が、全てを背負い込むことなんかないんだよ)
おじいちゃんが望んでいたように、この村を出て自由に生きていけばいいんだ。
もっと色んな場所に行って、色んなものを見て、沢山の人と出会って、恋だってして。
『きっといつか父親が帰ってくると、心の奥底では信じておる』
戻らない人間のことは、もう忘れて。
「おじいちゃんがしてきたように、『あけづる』は私が作ります。そして『つるぎ庵』を復活させます。この糠田が森は私が護ります」
だけど、僕を見る和紗の真っ直ぐな眼差しは揺らぐことはない。
(そっか)
もう君は生き方を決めているんだね。
「いいよ」
と、心とは裏腹に僕は答えていた。
すると、和紗は心底ホッとしたように胸を撫で下ろした。
僕は、ニヤッと笑って言った。
「僕、こう見えても厳しいからねぇ。ビシビシいくよ?途中で嫌になっても投げ出さないように!」
・・・なぁ、傑。
言っただろ、オマエとは違う道を行くって。
夢が出来たんだ。
強く聡い仲間を育てること。
そして、このクソみたいな呪術界をリセットする。
オマエが目指してた理想は、やっぱり馬鹿げてるって思うよ。
だけど、ここにある若い力が、希望が、オマエを失望させた世界だって変えてゆくことが出来るはずだ。
それまで、後は自分に出来ることを精一杯するさ。
2018年3月。
ようやく有給を取れた僕は、金沢へ念願の温泉旅行に出かけた。
味覚もすっかり元に戻り、カニを思い切り堪能することが出来た。
(現代最強の呪術師・五条悟、完全復活!)
満足して金沢駅まで戻り、約束の時間まで構内のお土産売り場をブラブラしていたら、とんでもないものを発見した。
『金沢銘菓宇良木つるぎ庵』
その店で売られているのは、なんと、作れる職人がいないはずの『あけづる』。
(はぁ〜。あの守銭奴オッサン、ついにオートメーション化しやがったのか。しかし、金沢って・・・関係ねぇじゃん)
ガッカリする気持ちの一方で、どんなものか興味が湧いて一箱買ってみることにした。
それから約束の時間になって、僕は待ち合わせの場所に向かった。
「五条さん」
そこには既に和紗が来ていた。
今日、和紗は糠田が森を旅立ち上京する。
期間は2年間。
それまで、和菓子作りの勉強と呪術修行の日々だ。
「「いただきます」」
東京行きの新幹線に乗り込み、さっそくニセモノ(?)のあけづるに二人同時にかぶりついた。
「「・・・(もぐもぐもぐ)」」
う~ん・・・わかっちゃいたけど、本物には遠く及ばない残念な味(当然、呪力もこもってない)。
和紗にとっては残念だけで済まないようで、
「こんなの『あけづる』じゃない・・・。これは『にせづる』だわ!」
と、怒り心頭といった感じで、『にせづる』を次々と口に頬り込んで抹消していく。
それらをお茶と一緒に流し込んで、一息ついた後。
「・・・私、絶対立派な和菓子職人になる」
和紗は毅然として言った。
「そして、『つるぎ庵』を立て直す。そして、私が糠田が森を護る」
それは、宣戦布告でもあった。
あのアンモナイトな脳みその守銭奴共と土地にこびりついた呪いに対して、孤独で、でも高らかなる宣言だった。
「・・・・・・」
以前に、もし和紗があの村に留まるなら、その隣に誰かがいることを願ったけれど。
その誰かって、他の誰かじゃなきゃいけない?
・・・おじいちゃんは自分は人柱なんかじゃないって言ってたけど。
やはり、ひとつの村の運命を一人の人間が背負っていくのは、かなり過酷なことだ。
(君が、全てを背負い込むことなんかないんだよ)
おじいちゃんが望んでいたように、この村を出て自由に生きていけばいいんだ。
もっと色んな場所に行って、色んなものを見て、沢山の人と出会って、恋だってして。
『きっといつか父親が帰ってくると、心の奥底では信じておる』
戻らない人間のことは、もう忘れて。
「おじいちゃんがしてきたように、『あけづる』は私が作ります。そして『つるぎ庵』を復活させます。この糠田が森は私が護ります」
だけど、僕を見る和紗の真っ直ぐな眼差しは揺らぐことはない。
(そっか)
もう君は生き方を決めているんだね。
「いいよ」
と、心とは裏腹に僕は答えていた。
すると、和紗は心底ホッとしたように胸を撫で下ろした。
僕は、ニヤッと笑って言った。
「僕、こう見えても厳しいからねぇ。ビシビシいくよ?途中で嫌になっても投げ出さないように!」
・・・なぁ、傑。
言っただろ、オマエとは違う道を行くって。
夢が出来たんだ。
強く聡い仲間を育てること。
そして、このクソみたいな呪術界をリセットする。
オマエが目指してた理想は、やっぱり馬鹿げてるって思うよ。
だけど、ここにある若い力が、希望が、オマエを失望させた世界だって変えてゆくことが出来るはずだ。
それまで、後は自分に出来ることを精一杯するさ。
2018年3月。
ようやく有給を取れた僕は、金沢へ念願の温泉旅行に出かけた。
味覚もすっかり元に戻り、カニを思い切り堪能することが出来た。
(現代最強の呪術師・五条悟、完全復活!)
満足して金沢駅まで戻り、約束の時間まで構内のお土産売り場をブラブラしていたら、とんでもないものを発見した。
『金沢銘菓宇良木つるぎ庵』
その店で売られているのは、なんと、作れる職人がいないはずの『あけづる』。
(はぁ〜。あの守銭奴オッサン、ついにオートメーション化しやがったのか。しかし、金沢って・・・関係ねぇじゃん)
ガッカリする気持ちの一方で、どんなものか興味が湧いて一箱買ってみることにした。
それから約束の時間になって、僕は待ち合わせの場所に向かった。
「五条さん」
そこには既に和紗が来ていた。
今日、和紗は糠田が森を旅立ち上京する。
期間は2年間。
それまで、和菓子作りの勉強と呪術修行の日々だ。
「「いただきます」」
東京行きの新幹線に乗り込み、さっそくニセモノ(?)のあけづるに二人同時にかぶりついた。
「「・・・(もぐもぐもぐ)」」
う~ん・・・わかっちゃいたけど、本物には遠く及ばない残念な味(当然、呪力もこもってない)。
和紗にとっては残念だけで済まないようで、
「こんなの『あけづる』じゃない・・・。これは『にせづる』だわ!」
と、怒り心頭といった感じで、『にせづる』を次々と口に頬り込んで抹消していく。
それらをお茶と一緒に流し込んで、一息ついた後。
「・・・私、絶対立派な和菓子職人になる」
和紗は毅然として言った。
「そして、『つるぎ庵』を立て直す。そして、私が糠田が森を護る」
それは、宣戦布告でもあった。
あのアンモナイトな脳みその守銭奴共と土地にこびりついた呪いに対して、孤独で、でも高らかなる宣言だった。
「・・・・・・」
以前に、もし和紗があの村に留まるなら、その隣に誰かがいることを願ったけれど。
その誰かって、他の誰かじゃなきゃいけない?