第12話 回想、糠田が森
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でも、僕に逃げろって・・・それで和紗はどうするつもりなの?
呪いが見えるぐらいの呪力しかなくて、戦えもしないのに。
自分はどうなってもいいって?
(それはそれはご立派だこと)
力のない人間ほど、自己犠牲が尊いものだと思い込んで、いとも簡単に全てを投げ出そうとする。
僕は内心、溜息をついた。
『"弱者生存″それがあるべき社会の姿さ』
その時、ふいにアイツの言葉を思い出した。
『弱きを助け、強きを挫く』
───あの時は、馬鹿げた理想だって思ってたんだけど。
『いいかい悟』
───今でも弱い奴等に気を遣うのは疲れるんだけど。
『呪術は非術師を守るためにある』
・・・そうだな、傑。
『君は五条悟だから最強なのか?』
『最強だから五条悟なのか?』
『もし私が君になれるなら、この馬鹿げた理想も地に足が着くと思わないか?』
『生き方は決めた。後は自分が出来ることを精一杯するさ』
───俺も生き方を決めんだ。
オマエが、俺の隣からいなくなったあの日から。
僕は、和紗を振り返り言った。
「大丈夫。僕最強だから」
だけど、僕はオマエと違う道を行く。
オマエがもう戻らないことがわかったから。
「ねーっ、伊地知ぃ。答えてほしいんだけどさぁ」
「は、はい」
「僕、今月だけで既に三回金沢を訪ねてるの。だけど、未だに観光も温泉も行けてないしカニも食べてないの。僕って何しにここに来てるわけ?」
「そ、それは任務遂行のために・・・」
「はいはい、そうだったそうだった。任務のためだった!で、この任務が終わったら、有給取りたいんだけど」
「それは・・・難しいのではないでしょうか。今日この後東京へ戻ったら、新たな任務が二件既にスケジュールに入ってますので・・・」
「はーっ、ホント、ブラックここに極まれりだよ!」
特級仮想怨霊『額多之君』を祓った後、和紗と百合子ちゃんは金沢市内の病院に入院することになった。
百合子ちゃんは無事に女の子を出産。
和紗は一日入院で、本日退院する。
僕は和紗を迎えに行くために、伊地知に車を走らせた。
禁足地『額多ヶ守』には高専の調査隊が入ることになった。
当然、祟りを畏れる地元民に反対されたが、県警に説得を協力してもらい本日から始まった。
これで、少ない資料だけではわからない『呪い』の因果関係がいくらかは明るみになるだろう。
しかし、この土地と人々を護ってきた『あけづる』を失った今、あの小さな村に何が起ころうとしてるのかはまだわからない。
(あけづる・・・)
思い出して、また落ち込んでしまった。
(もう二度と食べられないのかなぁ・・・)
そんなことを考えているうちに、車は病院のロータリーに到着した。
和紗は既に入り口前で待っていた。
顔や足に貼られた数々の絆創膏が痛々しい。
「おーい、和紗~」
車を降りて呼びかけると、和紗はホッとしたように微笑みを見せた。
糠田が森へ向かう車中で、僕は和紗に自分の正体を明かした。
そして、呪術と呪霊・・・呪術界の存在を告げた。
和紗は、驚くことも疑うこともなく僕の話を受け入れた。
あんな経験をしたんだ。
受け入れざるをえないんだろう。
車が『額多ヶ守』の前を通り、僕と和紗はいったん車から降りた。
さて、ここからが本題。
僕は和紗に、糠田が森の土地に染み付いた呪いと、『つるぎ庵』と『あけづる』の真実を告げた。
「それじゃあ・・・」
話を聞き終えると、和紗の目からは一筋の涙が流れた。
「おじいちゃんがひとりでずっと、この村を守ってくれてたんですね」
だけどその涙は一瞬のことで、すぐに和紗は力強く涙をぬぐい、
「五条さん」
僕に向かって言った。
「私に呪力の扱い方を教えてください」
呪いが見えるぐらいの呪力しかなくて、戦えもしないのに。
自分はどうなってもいいって?
(それはそれはご立派だこと)
力のない人間ほど、自己犠牲が尊いものだと思い込んで、いとも簡単に全てを投げ出そうとする。
僕は内心、溜息をついた。
『"弱者生存″それがあるべき社会の姿さ』
その時、ふいにアイツの言葉を思い出した。
『弱きを助け、強きを挫く』
───あの時は、馬鹿げた理想だって思ってたんだけど。
『いいかい悟』
───今でも弱い奴等に気を遣うのは疲れるんだけど。
『呪術は非術師を守るためにある』
・・・そうだな、傑。
『君は五条悟だから最強なのか?』
『最強だから五条悟なのか?』
『もし私が君になれるなら、この馬鹿げた理想も地に足が着くと思わないか?』
『生き方は決めた。後は自分が出来ることを精一杯するさ』
───俺も生き方を決めんだ。
オマエが、俺の隣からいなくなったあの日から。
僕は、和紗を振り返り言った。
「大丈夫。僕最強だから」
だけど、僕はオマエと違う道を行く。
オマエがもう戻らないことがわかったから。
「ねーっ、伊地知ぃ。答えてほしいんだけどさぁ」
「は、はい」
「僕、今月だけで既に三回金沢を訪ねてるの。だけど、未だに観光も温泉も行けてないしカニも食べてないの。僕って何しにここに来てるわけ?」
「そ、それは任務遂行のために・・・」
「はいはい、そうだったそうだった。任務のためだった!で、この任務が終わったら、有給取りたいんだけど」
「それは・・・難しいのではないでしょうか。今日この後東京へ戻ったら、新たな任務が二件既にスケジュールに入ってますので・・・」
「はーっ、ホント、ブラックここに極まれりだよ!」
特級仮想怨霊『額多之君』を祓った後、和紗と百合子ちゃんは金沢市内の病院に入院することになった。
百合子ちゃんは無事に女の子を出産。
和紗は一日入院で、本日退院する。
僕は和紗を迎えに行くために、伊地知に車を走らせた。
禁足地『額多ヶ守』には高専の調査隊が入ることになった。
当然、祟りを畏れる地元民に反対されたが、県警に説得を協力してもらい本日から始まった。
これで、少ない資料だけではわからない『呪い』の因果関係がいくらかは明るみになるだろう。
しかし、この土地と人々を護ってきた『あけづる』を失った今、あの小さな村に何が起ころうとしてるのかはまだわからない。
(あけづる・・・)
思い出して、また落ち込んでしまった。
(もう二度と食べられないのかなぁ・・・)
そんなことを考えているうちに、車は病院のロータリーに到着した。
和紗は既に入り口前で待っていた。
顔や足に貼られた数々の絆創膏が痛々しい。
「おーい、和紗~」
車を降りて呼びかけると、和紗はホッとしたように微笑みを見せた。
糠田が森へ向かう車中で、僕は和紗に自分の正体を明かした。
そして、呪術と呪霊・・・呪術界の存在を告げた。
和紗は、驚くことも疑うこともなく僕の話を受け入れた。
あんな経験をしたんだ。
受け入れざるをえないんだろう。
車が『額多ヶ守』の前を通り、僕と和紗はいったん車から降りた。
さて、ここからが本題。
僕は和紗に、糠田が森の土地に染み付いた呪いと、『つるぎ庵』と『あけづる』の真実を告げた。
「それじゃあ・・・」
話を聞き終えると、和紗の目からは一筋の涙が流れた。
「おじいちゃんがひとりでずっと、この村を守ってくれてたんですね」
だけどその涙は一瞬のことで、すぐに和紗は力強く涙をぬぐい、
「五条さん」
僕に向かって言った。
「私に呪力の扱い方を教えてください」