第12話 回想、糠田が森
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「はいはい、こちら『つるぎ庵』。只今喪中につき、臨時休業中でーす」
受話器を取ってそう言うと、
「え、あの、わたくし百合子の夫なのですが・・・」
と、困惑した声が返ってきた。
「百合子ちゃんの?」
そういや、葬儀の時に隣にいたな。
「百合子ちゃんなら今朝帰っていったけど」
「あ、はい。さっきもこちらに電話して和紗ちゃんから聞きました。でも、家に帰っていないんです。で、妻の実家に帰ってると思って連絡したんですが、そっちにも帰ってなくて・・・」
「ふむ?」
「スマホにも何度も電話してるんですが、繋がらなくて・・・」
努めて冷静さを保とうとしていた旦那さんだったが、終いの方は動揺して声が震えていた。
捜索の協力を仰いで、電話は切れた。
「・・・・・・」
受話器を置いた後、ふと考え付いた。
『額多之君』は子どもを望みながら恵まれず、呪霊と化してからも生贄に子どもを望み執着していた。
おそらく、仮想怨霊の『額多之君』もそうした気質を引き継いでいるのだろう。
子ども以外には興味がない。現に、僕が生得領域に侵入しても見向きもしなかった。だから、行方不明のYouTuberの身は安全だと踏んで泳がすことにした。
でも、子どもがそばを通りかかったら?
子どもじゃなくても、お腹に子どもを宿した妊婦とか。
(おそらく和紗もそれに勘づいている)
僕は、足早に『額多ヶ守』へ向かった。
「うわっうわあっ、やめろー!」
『額多ヶ守』へ到着すると、数十匹もの蠅頭に取り囲まれた警官がパニックを起こして、効きもしない拳銃を乱発していた。
弾丸は僕の方にまで飛んできて、
カンッ
無下限のバリアでそれを弾いた。
「ほいほいっと」
ちゃっちゃと蠅頭を祓って助けてやる。
「もう大丈夫だよ」
と言うと、警官は悪い夢から醒めたように目をパチクリさせていた。
「あれ、あのバケモノは・・・?」
「お疲れでぇーっす」
僕は警官をスルーして、そのまま雑木林の中に入った。
「・・・・・・」
雑木林に入ると、ほどなく『額多之君』の生得領域に入り込んだ。
広く連なる寝殿造りの建物の中を突っ切って庭園に辿り着くと、
「!」
『額多之君』の長い髪の毛に手足を四方に引っ張られながら宙に釣り上げられている和紗の姿が見えた。
よくよく見てみると、『額多之君』の額に和菓子作りに使う竹べらが突き刺さっている。
まさか、あんなもので呪霊に立ち向かっていったっていうのか。
「なんちゅー無謀な」
笑えるやら飽きれるやら。
呪力を飛ばして、和紗を拘束する髪の毛を切り落とした。
そして、落下する和紗を抱き留めた。
「五条さん・・・!」
和紗は驚いて僕の顔を見た。
「どうして・・・?」
「取り調べから戻ったら、和紗いないんだもん」
「どうして、ここが・・・」
「和紗だったら、きっと異変に気付いてここに来てると思って」
すると和紗はホッとしたのか、その目からはポロポロと涙が溢れ出した。
しかし、すぐにそれを拭って、
「私より、百合子ちゃんを、百合子ちゃんとお腹の赤ちゃんを・・・!」
と、訴えた。
思ってた通り、百合子ちゃんを『額多之君』は拉致していたのだ。
(任務その一、遂行だな)
───特級仮想呪霊『額多之君』が住民に害するものであれば、直ちに祓う。
僕は和紗を降ろして、『額多之君』と対峙した。
だけど、
「だ、ダメ!逃げて!」
和紗が僕を制するように叫んだ。
そして、懇願するように言った。
「お願い・・・百合子ちゃんをつれて逃げて・・・!」
僕がこんなバケモノと戦って勝てるはずないと思っているらしい。
そりゃそっか。
そういや呪術師ってこと、まだ話してなかったっけ。
受話器を取ってそう言うと、
「え、あの、わたくし百合子の夫なのですが・・・」
と、困惑した声が返ってきた。
「百合子ちゃんの?」
そういや、葬儀の時に隣にいたな。
「百合子ちゃんなら今朝帰っていったけど」
「あ、はい。さっきもこちらに電話して和紗ちゃんから聞きました。でも、家に帰っていないんです。で、妻の実家に帰ってると思って連絡したんですが、そっちにも帰ってなくて・・・」
「ふむ?」
「スマホにも何度も電話してるんですが、繋がらなくて・・・」
努めて冷静さを保とうとしていた旦那さんだったが、終いの方は動揺して声が震えていた。
捜索の協力を仰いで、電話は切れた。
「・・・・・・」
受話器を置いた後、ふと考え付いた。
『額多之君』は子どもを望みながら恵まれず、呪霊と化してからも生贄に子どもを望み執着していた。
おそらく、仮想怨霊の『額多之君』もそうした気質を引き継いでいるのだろう。
子ども以外には興味がない。現に、僕が生得領域に侵入しても見向きもしなかった。だから、行方不明のYouTuberの身は安全だと踏んで泳がすことにした。
でも、子どもがそばを通りかかったら?
子どもじゃなくても、お腹に子どもを宿した妊婦とか。
(おそらく和紗もそれに勘づいている)
僕は、足早に『額多ヶ守』へ向かった。
「うわっうわあっ、やめろー!」
『額多ヶ守』へ到着すると、数十匹もの蠅頭に取り囲まれた警官がパニックを起こして、効きもしない拳銃を乱発していた。
弾丸は僕の方にまで飛んできて、
カンッ
無下限のバリアでそれを弾いた。
「ほいほいっと」
ちゃっちゃと蠅頭を祓って助けてやる。
「もう大丈夫だよ」
と言うと、警官は悪い夢から醒めたように目をパチクリさせていた。
「あれ、あのバケモノは・・・?」
「お疲れでぇーっす」
僕は警官をスルーして、そのまま雑木林の中に入った。
「・・・・・・」
雑木林に入ると、ほどなく『額多之君』の生得領域に入り込んだ。
広く連なる寝殿造りの建物の中を突っ切って庭園に辿り着くと、
「!」
『額多之君』の長い髪の毛に手足を四方に引っ張られながら宙に釣り上げられている和紗の姿が見えた。
よくよく見てみると、『額多之君』の額に和菓子作りに使う竹べらが突き刺さっている。
まさか、あんなもので呪霊に立ち向かっていったっていうのか。
「なんちゅー無謀な」
笑えるやら飽きれるやら。
呪力を飛ばして、和紗を拘束する髪の毛を切り落とした。
そして、落下する和紗を抱き留めた。
「五条さん・・・!」
和紗は驚いて僕の顔を見た。
「どうして・・・?」
「取り調べから戻ったら、和紗いないんだもん」
「どうして、ここが・・・」
「和紗だったら、きっと異変に気付いてここに来てると思って」
すると和紗はホッとしたのか、その目からはポロポロと涙が溢れ出した。
しかし、すぐにそれを拭って、
「私より、百合子ちゃんを、百合子ちゃんとお腹の赤ちゃんを・・・!」
と、訴えた。
思ってた通り、百合子ちゃんを『額多之君』は拉致していたのだ。
(任務その一、遂行だな)
───特級仮想呪霊『額多之君』が住民に害するものであれば、直ちに祓う。
僕は和紗を降ろして、『額多之君』と対峙した。
だけど、
「だ、ダメ!逃げて!」
和紗が僕を制するように叫んだ。
そして、懇願するように言った。
「お願い・・・百合子ちゃんをつれて逃げて・・・!」
僕がこんなバケモノと戦って勝てるはずないと思っているらしい。
そりゃそっか。
そういや呪術師ってこと、まだ話してなかったっけ。