第12話 回想、糠田が森
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戻ったかと思ったら、また辺りの空間は歪み始めて、雑木林と異なる空間が広がり始める。
気が付けば、僕は平安時代を思わせる寝殿造の建物のその真ん中の庭園に立っていた。
「生得領域か」
と、僕は呟き辺りを見回す。
建物の方に目を向けると、その中に佇む人影を見つけた。
床まで流れる長い垂髪。
壮麗な十二単姿。
「・・・『額多之君』?」
僕が呼びかけると、その人影は簾の後ろにスッと姿を消した。
そして、寝殿造の雅な風景は突如、ブッツリと消されたテレビの画面のように真っ暗になった。
気がつけば、元の暗い雑木林の中に僕は立っていた。
「ずいぶん恥ずかしがりやだね、『額多之君』。追い出すなんてつれないじゃない」
確認した。
特級仮想怨霊の『額多之君』は受肉している。
今すぐ祓うか?
・・・いや、あの様子だと自分の領域から出てくるつもりはないらしい。
(今は、土地に染み付いた呪いの方が気になる)
上手くいけば、『額多之君』が抑止力になる可能性もある。
(・・・少し泳がせておくか)
そう判断して、僕は『額多ヶ守』を出た。
・・・その直後、ケント君は村の共同墓地で和紗が発見し、僕は『額多ヶ守』に侵入したとお巡りさんに捕まってしまった。
和紗に迎えに来てもらったけれど、こっぴどく怒られてしまった。
僕はもう数日、糠田が森に滞在することにした。
この糠田が森に染み付いた呪いや、受肉した『額多之君』を注視する必要があるからだ。
そして和紗の様子も気がかりだった。
だけど、和紗は気持ちを切り替え終えたようで、次の日には学校に行くようになった。
(ホントに真面目だなぁ。もう少し休んでもバチ当たらないのに)
さて、和紗が学校行ってるうちに家事を済ませておこうか。まずは、いそいそと掃除を始めた。
掃除と洗濯を済ませて、買い物しに市場へ向かった。
その途中、『額多ヶ守』の前を通りかかると辺りにパトカーが何台も停まっていて、さらに雑木林を囲む瑞垣が規制線のテープでぐるぐる巻きにされている。
(ずいぶんと物騒だな)
と、その様子を眺めていたら、同じく野次馬の噂話が耳に入ってきた。
野次馬が語ったところによると、『額多ヶ守』へ動画撮影にやって来たYouTuberが1週間ほど前から行方不明になっているらしい。
(『額多乃君』の生得領域に入り込んでしまったかな)
よくいるんだよなぁ。肝試しと称して危険な場所に立ち入った一般人が呪いの被害に遭うことが。
こう言っちゃなんだけど、完全に自業自得だし呪術師的には傍迷惑だ。
僕は、ふーむと腕を組んでしばし考えた。
(ま、そのYouTuberとやらが下手に動かなきゃ大丈夫でしょ。そのうち生得領域からほっぽり出されるだろ)
さて、買い物買い物。今晩はカレーだ。
僕はその場を立ち去った。
しかしその晩。
金沢県警の人間がやって来て、僕は参考人として連行される羽目になってしまった。
連中は、僕が前日に『額多ヶ守』に侵入した時、何か手がかりになるものを見ていないか聴き取りしてきた。
なんなら、僕が行方不明のYouTuberと何か関わりがあるか怪しんでいるらしい。
寝殿造風の生得領域。
特級仮想呪霊『額多乃君』。
見たもの全て正直に話してもいいけれど、違う意味で怪しまれていまいそうなので、何も話さなかった。
そんな不当拘束に遭って3時間ほど経って、僕はようやく解放されて『つるぎ庵』に戻ることが出来た。
「ただいまー」
玄関の戸を開けてそう言っても、和紗からの返事がない。
「和紗~?」
二階に上がって居間行ったけれど、そこにも姿はない。
風呂にもトイレにも。和紗の部屋にも。
部屋を見回すと、机の上にやりかけの宿題とスマホが置きっぱなしにされていることに気づいた。
「・・・夜の散歩ってワケじゃなさそうだね」
と、独り言ちしていたら店の電話が鳴った。
気が付けば、僕は平安時代を思わせる寝殿造の建物のその真ん中の庭園に立っていた。
「生得領域か」
と、僕は呟き辺りを見回す。
建物の方に目を向けると、その中に佇む人影を見つけた。
床まで流れる長い垂髪。
壮麗な十二単姿。
「・・・『額多之君』?」
僕が呼びかけると、その人影は簾の後ろにスッと姿を消した。
そして、寝殿造の雅な風景は突如、ブッツリと消されたテレビの画面のように真っ暗になった。
気がつけば、元の暗い雑木林の中に僕は立っていた。
「ずいぶん恥ずかしがりやだね、『額多之君』。追い出すなんてつれないじゃない」
確認した。
特級仮想怨霊の『額多之君』は受肉している。
今すぐ祓うか?
・・・いや、あの様子だと自分の領域から出てくるつもりはないらしい。
(今は、土地に染み付いた呪いの方が気になる)
上手くいけば、『額多之君』が抑止力になる可能性もある。
(・・・少し泳がせておくか)
そう判断して、僕は『額多ヶ守』を出た。
・・・その直後、ケント君は村の共同墓地で和紗が発見し、僕は『額多ヶ守』に侵入したとお巡りさんに捕まってしまった。
和紗に迎えに来てもらったけれど、こっぴどく怒られてしまった。
僕はもう数日、糠田が森に滞在することにした。
この糠田が森に染み付いた呪いや、受肉した『額多之君』を注視する必要があるからだ。
そして和紗の様子も気がかりだった。
だけど、和紗は気持ちを切り替え終えたようで、次の日には学校に行くようになった。
(ホントに真面目だなぁ。もう少し休んでもバチ当たらないのに)
さて、和紗が学校行ってるうちに家事を済ませておこうか。まずは、いそいそと掃除を始めた。
掃除と洗濯を済ませて、買い物しに市場へ向かった。
その途中、『額多ヶ守』の前を通りかかると辺りにパトカーが何台も停まっていて、さらに雑木林を囲む瑞垣が規制線のテープでぐるぐる巻きにされている。
(ずいぶんと物騒だな)
と、その様子を眺めていたら、同じく野次馬の噂話が耳に入ってきた。
野次馬が語ったところによると、『額多ヶ守』へ動画撮影にやって来たYouTuberが1週間ほど前から行方不明になっているらしい。
(『額多乃君』の生得領域に入り込んでしまったかな)
よくいるんだよなぁ。肝試しと称して危険な場所に立ち入った一般人が呪いの被害に遭うことが。
こう言っちゃなんだけど、完全に自業自得だし呪術師的には傍迷惑だ。
僕は、ふーむと腕を組んでしばし考えた。
(ま、そのYouTuberとやらが下手に動かなきゃ大丈夫でしょ。そのうち生得領域からほっぽり出されるだろ)
さて、買い物買い物。今晩はカレーだ。
僕はその場を立ち去った。
しかしその晩。
金沢県警の人間がやって来て、僕は参考人として連行される羽目になってしまった。
連中は、僕が前日に『額多ヶ守』に侵入した時、何か手がかりになるものを見ていないか聴き取りしてきた。
なんなら、僕が行方不明のYouTuberと何か関わりがあるか怪しんでいるらしい。
寝殿造風の生得領域。
特級仮想呪霊『額多乃君』。
見たもの全て正直に話してもいいけれど、違う意味で怪しまれていまいそうなので、何も話さなかった。
そんな不当拘束に遭って3時間ほど経って、僕はようやく解放されて『つるぎ庵』に戻ることが出来た。
「ただいまー」
玄関の戸を開けてそう言っても、和紗からの返事がない。
「和紗~?」
二階に上がって居間行ったけれど、そこにも姿はない。
風呂にもトイレにも。和紗の部屋にも。
部屋を見回すと、机の上にやりかけの宿題とスマホが置きっぱなしにされていることに気づいた。
「・・・夜の散歩ってワケじゃなさそうだね」
と、独り言ちしていたら店の電話が鳴った。