第12話 回想、糠田が森
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「あー、ズルい―」
思わずそう口走ると、売り子は驚いてこちらを振り向いた。そして、
「五条悟・・・!」
と、僕の名前を呼んだ。
どうやら予約伝票を見て僕の名前を知ったらしい。
そんなことよりも。
「それより見たよ。隠しても無駄だよ。今その手に持ってるでしょ、『あけづる』を」
「いや、あの、これは」
「もしかして、お客の僕を差し置いて君が食べるつもり?」
「違います!これは、『額多之君』への捧げ物なんです!」
「ぬかたのきみ?」
「そうです。この『額多ヶ守』のことはご存じですか?」
そうして彼女が語り始めたのは、『額多ヶ守』の伝説。
そして、『あけづる』の由来。
『あけづる』は、『額多之君』への生贄である子どもの代わりとして作られた捧げ物だという。
(やはり、『あけづる』には呪術が関わっているのか)
そんなことを考えていると、
「とにかく、この『あけづる』は捧げものですから食べないでくださいね!」
と、売り子は僕に釘を刺すように言った。
そして、『あけづる』を瑞垣の上に置くと、さっさとここから立ち去ろうとする。
(うーん、めちゃくちゃ警戒されてるなぁ)
しかし、ふいに彼女は立ち止まると僕の方を振り返ってから言った。
「本当に『います』から、ここ」
「・・・・・・」
このコ、蠅頭が見えてるのか。
それならば、『額多ヶ守』の異変にも何か気づいているのかもしれない。
それに、『あけづる』のことも詳しく知りたい。
(さぐりを入れるか)
僕は彼女についていって、『額多ヶ守』を後にした。
彼女の名前は、鶴來 和紗といった。
和紗は、『つるぎ庵』の当主の孫娘で高校三年生。
高校卒業後は、東京の専門学校に行くか、地元に残って『つるぎ庵』の手伝いをするか決めかねているらしい。
とは言っても、これは和紗とお友達の会話を聞いていて知ったことで、あいにく僕にそんな事を打ち明けるほど心を開いてくれてはいない。
(胡散臭いオカルト研究家と勘違いされるし)
だけど、ちょっとした変化があった。
「五条さんは、『あけづる』のことどこで知ったんですか?SNS?」
と、和紗に尋ねられて、
「実際に食べたことがあるんだよ、一度ね。年末に、北陸物産展で」
と答えながら、僕は初めて『あけづる』を口にした時のことを思い出していた。
「美味かったなぁ。去年のクリスマスイブは散々なことがあってさ。傷ついた心と疲れ切った体と消耗した頭に染みたなぁ。『あけづる』の甘さが」
・・・2017年12月24日。
同日日没直後、新宿・京都において非術師 殺戮を目的に1000体もの呪霊が放たれた呪術テロ事件、『百鬼夜行』。
このテロ事件の首謀者は、呪詛師・夏油傑。
夏油は、元々は高専所属の呪術師だった。
そして、僕の同期。
高専との総力戦の結果テロは失敗し、首謀者である夏油は、呪術高専生にして特級呪術師である乙骨憂太との対決に敗れ重傷を負い、逃走先にて処刑された。
この僕が。この手で。
いずれこうなることは、覚悟してたことだ。
むしろこれでよかったとさえ思ってる。
納得していても心と体はなんだかちぐはぐで、『百鬼夜行』直後の僕は、まあまあボロボロの状態だった。
そんな時に出会ったのが『あけづる』だというわけだ。
・・・僕のこの言葉を聞いて、和紗の態度が少し軟化した、気がする。
和紗は『つるぎ庵』の内幕事情、SNSで有名になったことの弊害、『あけづる』製造のオートメーション化(けしからん話だ)、おじいちゃんに対する気持ちなどを、ポツリと零した。
だけど、『あけづる』に秘められた呪力のことや『額多ヶ守』の異変のことは何も知らないみたいだ。
思わずそう口走ると、売り子は驚いてこちらを振り向いた。そして、
「五条悟・・・!」
と、僕の名前を呼んだ。
どうやら予約伝票を見て僕の名前を知ったらしい。
そんなことよりも。
「それより見たよ。隠しても無駄だよ。今その手に持ってるでしょ、『あけづる』を」
「いや、あの、これは」
「もしかして、お客の僕を差し置いて君が食べるつもり?」
「違います!これは、『額多之君』への捧げ物なんです!」
「ぬかたのきみ?」
「そうです。この『額多ヶ守』のことはご存じですか?」
そうして彼女が語り始めたのは、『額多ヶ守』の伝説。
そして、『あけづる』の由来。
『あけづる』は、『額多之君』への生贄である子どもの代わりとして作られた捧げ物だという。
(やはり、『あけづる』には呪術が関わっているのか)
そんなことを考えていると、
「とにかく、この『あけづる』は捧げものですから食べないでくださいね!」
と、売り子は僕に釘を刺すように言った。
そして、『あけづる』を瑞垣の上に置くと、さっさとここから立ち去ろうとする。
(うーん、めちゃくちゃ警戒されてるなぁ)
しかし、ふいに彼女は立ち止まると僕の方を振り返ってから言った。
「本当に『います』から、ここ」
「・・・・・・」
このコ、蠅頭が見えてるのか。
それならば、『額多ヶ守』の異変にも何か気づいているのかもしれない。
それに、『あけづる』のことも詳しく知りたい。
(さぐりを入れるか)
僕は彼女についていって、『額多ヶ守』を後にした。
彼女の名前は、鶴來 和紗といった。
和紗は、『つるぎ庵』の当主の孫娘で高校三年生。
高校卒業後は、東京の専門学校に行くか、地元に残って『つるぎ庵』の手伝いをするか決めかねているらしい。
とは言っても、これは和紗とお友達の会話を聞いていて知ったことで、あいにく僕にそんな事を打ち明けるほど心を開いてくれてはいない。
(胡散臭いオカルト研究家と勘違いされるし)
だけど、ちょっとした変化があった。
「五条さんは、『あけづる』のことどこで知ったんですか?SNS?」
と、和紗に尋ねられて、
「実際に食べたことがあるんだよ、一度ね。年末に、北陸物産展で」
と答えながら、僕は初めて『あけづる』を口にした時のことを思い出していた。
「美味かったなぁ。去年のクリスマスイブは散々なことがあってさ。傷ついた心と疲れ切った体と消耗した頭に染みたなぁ。『あけづる』の甘さが」
・・・2017年12月24日。
同日日没直後、新宿・京都において
このテロ事件の首謀者は、呪詛師・夏油傑。
夏油は、元々は高専所属の呪術師だった。
そして、僕の同期。
高専との総力戦の結果テロは失敗し、首謀者である夏油は、呪術高専生にして特級呪術師である乙骨憂太との対決に敗れ重傷を負い、逃走先にて処刑された。
この僕が。この手で。
いずれこうなることは、覚悟してたことだ。
むしろこれでよかったとさえ思ってる。
納得していても心と体はなんだかちぐはぐで、『百鬼夜行』直後の僕は、まあまあボロボロの状態だった。
そんな時に出会ったのが『あけづる』だというわけだ。
・・・僕のこの言葉を聞いて、和紗の態度が少し軟化した、気がする。
和紗は『つるぎ庵』の内幕事情、SNSで有名になったことの弊害、『あけづる』製造のオートメーション化(けしからん話だ)、おじいちゃんに対する気持ちなどを、ポツリと零した。
だけど、『あけづる』に秘められた呪力のことや『額多ヶ守』の異変のことは何も知らないみたいだ。