第12話 回想、糠田が森
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すると七海は答えるのが面倒な顔をしつつも、答えなければもっと面倒になると判断したのか、
「石川県です」
と、答えた。
「とある村落にある禁足地が怪談スポットとして近年SNS中心に注目を集めていてるのです。その禁足地において、特級仮想怨霊が出現する可能性があるとのことでその調査に向かいます」
「禁足地に特級仮想怨霊~?どんなヤツなの?」
「『額多之君 』という平安時代に実在した女性の怨霊だそうです。何でもその『額多之君』が嫉妬に狂い、夫とその愛人を呪い殺した故に都から追われ住むことになった邸宅跡が、『額多ヶ守 』と呼ばれる禁足地になったとか」
「ぬかたがもり・・・」
糠田が森と同じ響きの言葉に思わず反応する。
「その村の名前って、糠田が森?」
こっちの問いかけに、七海は少し驚きつつも頷いた。
「ええ。ご存じでしたか?」
「七海・・・」
「何ですか」
「その任務、僕に譲ってくれない?」
「は?」
七海は「何言ってるんだ、コイツ」というような顔をした。
その間にも僕は言葉を続けた。
「その、ぬかたのなんとかっていう仮想怨霊がもし受肉してたらさっさと祓っちゃえばいいんでしょ?」
「『額多之君』です。そして、この任務はそんな単純な話じゃありません」
「わかったわかった。この僕に任せなさい」
「何がわかったというんですか」
「オマエに出来て、この僕に出来ない任務はない!とにかく、糠田が森へは僕が行くから!」
・・・と、こんな感じで半ば強引に七海から任務を奪い取った。
その場からすぐに東京駅へ向かい(当然、会議はサボった)、北陸新幹線に乗り込んだ。
(これでまた『あけづる』が食べられる!)
と、この時の僕はただただ嬉々として、車内で旅行気分を味わっていた。
糠田が森は想像していたよりさらにもっと山奥にあった。
金沢駅からタクシーに乗り込み、細くうねる山道を登ったり下ったりして三時間ほどして、ようやく辿り着いた。
(なーんにもない)
村にランドマークと呼ばれるものはなく、国道沿いの歩道でタクシーを降りた。
ポツネンとひとり佇み、辺りを見回す。
山々と田んぼと所々に点在する古臭い瓦屋根の民家。
まるで、昔話の世界にタイムスリップしたみたいだ。
(さて、まずは『つるぎ庵』に向かうかね)
国道沿いの道を歩いていくと、やがて小さな集落に辿り着いた。
その集落に『つるぎ庵』はあって、すぐに見つけることが出来た。
古民家の屋根に店名を木彫りした看板が掲げられ、入り口には鶴の家紋模様が印刷された藍色の暖簾が提げられている。店先には既に客の行列が出来上がっていた。
店内の様子をヒョコっと覗き込んでみた。
すると、
(おおっ)
ガラス張りの商品棚に、ずっと求めていた『あけづる』がずらりと並べられている。
その光景に興奮してついつい並ぶことを忘れ、行列の横をするりとすり抜けて店内に入る。
すると、カウンターの向こうに立つ売り子の女の子に怪訝そうな顔をされた。
高校生くらいだろうか。
きっちりと二つに結わえたおさげ髪に、三角巾とエプロンを身に着けている。
純朴を絵にして描いたような佇まいで、丸い目を少し怯えたように見開いて僕の顔を見上げている。
「『あけづる』お店にある分だけ全部ください」
女の子を怯えさせないように、フレンドリーに笑いかけながら僕は言った。
だけど、彼女は急に毅然として僕に列に並び直す様にたしなめた。そして、
「まことに申し訳ないのですが、本日分は販売終了しました」
と、衝撃的なことを言い放った。
聞けば、『あけづる』は予約販売でしか扱っていないのだという。
(おいおいおいおい。こんな片田舎までわざわざ来たっていうのにマジで?)
「石川県です」
と、答えた。
「とある村落にある禁足地が怪談スポットとして近年SNS中心に注目を集めていてるのです。その禁足地において、特級仮想怨霊が出現する可能性があるとのことでその調査に向かいます」
「禁足地に特級仮想怨霊~?どんなヤツなの?」
「『
「ぬかたがもり・・・」
糠田が森と同じ響きの言葉に思わず反応する。
「その村の名前って、糠田が森?」
こっちの問いかけに、七海は少し驚きつつも頷いた。
「ええ。ご存じでしたか?」
「七海・・・」
「何ですか」
「その任務、僕に譲ってくれない?」
「は?」
七海は「何言ってるんだ、コイツ」というような顔をした。
その間にも僕は言葉を続けた。
「その、ぬかたのなんとかっていう仮想怨霊がもし受肉してたらさっさと祓っちゃえばいいんでしょ?」
「『額多之君』です。そして、この任務はそんな単純な話じゃありません」
「わかったわかった。この僕に任せなさい」
「何がわかったというんですか」
「オマエに出来て、この僕に出来ない任務はない!とにかく、糠田が森へは僕が行くから!」
・・・と、こんな感じで半ば強引に七海から任務を奪い取った。
その場からすぐに東京駅へ向かい(当然、会議はサボった)、北陸新幹線に乗り込んだ。
(これでまた『あけづる』が食べられる!)
と、この時の僕はただただ嬉々として、車内で旅行気分を味わっていた。
糠田が森は想像していたよりさらにもっと山奥にあった。
金沢駅からタクシーに乗り込み、細くうねる山道を登ったり下ったりして三時間ほどして、ようやく辿り着いた。
(なーんにもない)
村にランドマークと呼ばれるものはなく、国道沿いの歩道でタクシーを降りた。
ポツネンとひとり佇み、辺りを見回す。
山々と田んぼと所々に点在する古臭い瓦屋根の民家。
まるで、昔話の世界にタイムスリップしたみたいだ。
(さて、まずは『つるぎ庵』に向かうかね)
国道沿いの道を歩いていくと、やがて小さな集落に辿り着いた。
その集落に『つるぎ庵』はあって、すぐに見つけることが出来た。
古民家の屋根に店名を木彫りした看板が掲げられ、入り口には鶴の家紋模様が印刷された藍色の暖簾が提げられている。店先には既に客の行列が出来上がっていた。
店内の様子をヒョコっと覗き込んでみた。
すると、
(おおっ)
ガラス張りの商品棚に、ずっと求めていた『あけづる』がずらりと並べられている。
その光景に興奮してついつい並ぶことを忘れ、行列の横をするりとすり抜けて店内に入る。
すると、カウンターの向こうに立つ売り子の女の子に怪訝そうな顔をされた。
高校生くらいだろうか。
きっちりと二つに結わえたおさげ髪に、三角巾とエプロンを身に着けている。
純朴を絵にして描いたような佇まいで、丸い目を少し怯えたように見開いて僕の顔を見上げている。
「『あけづる』お店にある分だけ全部ください」
女の子を怯えさせないように、フレンドリーに笑いかけながら僕は言った。
だけど、彼女は急に毅然として僕に列に並び直す様にたしなめた。そして、
「まことに申し訳ないのですが、本日分は販売終了しました」
と、衝撃的なことを言い放った。
聞けば、『あけづる』は予約販売でしか扱っていないのだという。
(おいおいおいおい。こんな片田舎までわざわざ来たっていうのにマジで?)