第11話 メゾン・ド・エグランティーヌ
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「フフフフフ・・・」
売上金を数えながら、野薔薇ちゃんが満面の笑みを浮かべる。
「きゃーっ!合計売上4万8千6百円!やったー!」
「おおっ、すげぇ!」
「俺らのバイト代は?」
「待って。まずは和紗さんの取り分が5割でしょう。で、私の分が4割。残り1割で参加料払って・・・」
「おい、それじゃあほとんどバイト代が残らねぇじゃねーか!」
「ふざけんなよ!」
と、1年ズがギャラで揉めている隣で。
「はぁ・・・」
私は片付けをしながら、浮かない顔をしていた。
すかさず、五条さんが私の顔を覗き込んでくる。
「何々何~。完売したっていうのに、浮かない顔だね~」
「何だか、販売詐欺した気分です・・・」
「どうして?お客さん皆喜んで買っていったじゃない」
「それは、五条さんの営業トークに浮かれてたからでしょう」
「それだけじゃないと思うよ~」
「そうだったらいいけど・・・。でも、やっぱり私、もう洋服販売はしません!」
「ふむ?」
「私はやっぱり、洋服じゃなくて和菓子で人を喜ばせたい」
「・・・・・・」
「私がなりたいのは、やっぱり和菓子職人なんだなって」
私がそう言うと、五条さんはニンマリと満面の笑みを口元に浮かべた。
「そうだね。それがいいと思うよ」
「はい。あ、でも・・・」
「ん?」
私はトランクケースの奥をガサガサと漁った。
そして、開店準備の時に野薔薇ちゃんが出したサックスブルーのワイシャツを取り出した。
「これ、よかったらもらってください」
「僕に?」
「・・・この半年間、色々とお世話になったお礼です」
「・・・・・・」
すると、五条さんはワイシャツを身にあてがった。
「どう?似合う?」
「・・・色合いは。サイズ、合わなかったらお直ししますから」
「ありがとありがと。しかし、和紗と出会ってもう半年かぁ」
「・・・・・・」
五条さんがそう言うのを聞いて、私はこの半年間を思い返していた。
五条さんが『つるぎ庵』にやって来たこと。
おじいちゃんが突然この世を去ったこと。
『呪い』の存在と、『額多ヶ守』と『あけづる』の真実を知ったこと。
『つるぎ庵』が取り壊されたこと。
上京してから、硝子さん、七海さん、猪野さん、伏黒君、悠仁君、野薔薇ちゃん・・・たくさんの人との出会いと、出来事を。
そんなことを思い返していたら、
「五条先生、和紗さん!今からりっぱ寿司行こうって!釘崎がバイト代替わりにおごってくれるって!」
と、悠仁君が声をかけてきた。
「え~、またりっぱ寿司ぃ?」
五条さんが不服そうに声を上げる。
「それって、ただ野薔薇がまた行きたいだけなんじゃないの?」
「別にいいでしょ!?」
「いいよいいよ、別に。さっ、行こう」
片づけを終えて、私たちはフリマ会場を後にした。
「今回は最低でもガチャ5個当てるわよーっ!」
「今度は俺にもちょうだい!」
「・・・はぁ」
ワイワイと前を歩く1年ズの後ろで、
「いやぁ~、青春青春」
と、それを見守る五条さんと私は並んで歩く。
「・・・五条さん」
「ん?」
私は言った。
「この半年間悲しいこともたくさんあったけど、私、東京に来てよかった」
「・・・・・・」
「だって、今、こんなにも楽しいもん」
と、笑顔で五条さんの顔を見上げた。
だけど、五条さんは心外そうに言った。
「楽しい?これで?」
「え」
戸惑う私に、五条さんはサングラスから瞳を覗かせて言った。
「まだまだだよ」
そして、そっと耳打ちした。
「お楽しみは、これからさ」
「・・・・・っ」
低い囁き声と共に吐息が耳をくすぐる。
思わず私は身をすくませた。
同時に、顔がみるみると赤くなる。
そんな私の様子を見て、五条さんはイタズラな笑みを浮かべている。
またからかわれてる!
「そんな風に言う必要がありましたか?そのセリフ!」
「ん?そんな風ってどんな風?」
「み、耳になんかこうフワッて!フワッて、い、息がっ」
「さっ、急ごう〜。日曜のりっぱ寿司は混むからねぇ〜」
「もーう!」
・・・この1週間後。
2018年7月。
西東京市にある英集少年院に特級仮想呪霊が出現。
緊急事態につき、急遽、呪術高専より一年生が派遣されて・・・。
内1名 死亡───。
つづく
売上金を数えながら、野薔薇ちゃんが満面の笑みを浮かべる。
「きゃーっ!合計売上4万8千6百円!やったー!」
「おおっ、すげぇ!」
「俺らのバイト代は?」
「待って。まずは和紗さんの取り分が5割でしょう。で、私の分が4割。残り1割で参加料払って・・・」
「おい、それじゃあほとんどバイト代が残らねぇじゃねーか!」
「ふざけんなよ!」
と、1年ズがギャラで揉めている隣で。
「はぁ・・・」
私は片付けをしながら、浮かない顔をしていた。
すかさず、五条さんが私の顔を覗き込んでくる。
「何々何~。完売したっていうのに、浮かない顔だね~」
「何だか、販売詐欺した気分です・・・」
「どうして?お客さん皆喜んで買っていったじゃない」
「それは、五条さんの営業トークに浮かれてたからでしょう」
「それだけじゃないと思うよ~」
「そうだったらいいけど・・・。でも、やっぱり私、もう洋服販売はしません!」
「ふむ?」
「私はやっぱり、洋服じゃなくて和菓子で人を喜ばせたい」
「・・・・・・」
「私がなりたいのは、やっぱり和菓子職人なんだなって」
私がそう言うと、五条さんはニンマリと満面の笑みを口元に浮かべた。
「そうだね。それがいいと思うよ」
「はい。あ、でも・・・」
「ん?」
私はトランクケースの奥をガサガサと漁った。
そして、開店準備の時に野薔薇ちゃんが出したサックスブルーのワイシャツを取り出した。
「これ、よかったらもらってください」
「僕に?」
「・・・この半年間、色々とお世話になったお礼です」
「・・・・・・」
すると、五条さんはワイシャツを身にあてがった。
「どう?似合う?」
「・・・色合いは。サイズ、合わなかったらお直ししますから」
「ありがとありがと。しかし、和紗と出会ってもう半年かぁ」
「・・・・・・」
五条さんがそう言うのを聞いて、私はこの半年間を思い返していた。
五条さんが『つるぎ庵』にやって来たこと。
おじいちゃんが突然この世を去ったこと。
『呪い』の存在と、『額多ヶ守』と『あけづる』の真実を知ったこと。
『つるぎ庵』が取り壊されたこと。
上京してから、硝子さん、七海さん、猪野さん、伏黒君、悠仁君、野薔薇ちゃん・・・たくさんの人との出会いと、出来事を。
そんなことを思い返していたら、
「五条先生、和紗さん!今からりっぱ寿司行こうって!釘崎がバイト代替わりにおごってくれるって!」
と、悠仁君が声をかけてきた。
「え~、またりっぱ寿司ぃ?」
五条さんが不服そうに声を上げる。
「それって、ただ野薔薇がまた行きたいだけなんじゃないの?」
「別にいいでしょ!?」
「いいよいいよ、別に。さっ、行こう」
片づけを終えて、私たちはフリマ会場を後にした。
「今回は最低でもガチャ5個当てるわよーっ!」
「今度は俺にもちょうだい!」
「・・・はぁ」
ワイワイと前を歩く1年ズの後ろで、
「いやぁ~、青春青春」
と、それを見守る五条さんと私は並んで歩く。
「・・・五条さん」
「ん?」
私は言った。
「この半年間悲しいこともたくさんあったけど、私、東京に来てよかった」
「・・・・・・」
「だって、今、こんなにも楽しいもん」
と、笑顔で五条さんの顔を見上げた。
だけど、五条さんは心外そうに言った。
「楽しい?これで?」
「え」
戸惑う私に、五条さんはサングラスから瞳を覗かせて言った。
「まだまだだよ」
そして、そっと耳打ちした。
「お楽しみは、これからさ」
「・・・・・っ」
低い囁き声と共に吐息が耳をくすぐる。
思わず私は身をすくませた。
同時に、顔がみるみると赤くなる。
そんな私の様子を見て、五条さんはイタズラな笑みを浮かべている。
またからかわれてる!
「そんな風に言う必要がありましたか?そのセリフ!」
「ん?そんな風ってどんな風?」
「み、耳になんかこうフワッて!フワッて、い、息がっ」
「さっ、急ごう〜。日曜のりっぱ寿司は混むからねぇ〜」
「もーう!」
・・・この1週間後。
2018年7月。
西東京市にある英集少年院に特級仮想呪霊が出現。
緊急事態につき、急遽、呪術高専より一年生が派遣されて・・・。
内1名 死亡───。
つづく
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