第11話 メゾン・ド・エグランティーヌ
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ギュピピィグピィ・・・・
今度は目玉たちが命乞いをするかのように涙を流し始めた。
しかし、野薔薇ちゃんは容赦がなかった。
「芻霊呪法」
パチンと指を鳴らした次の瞬間。
「『簪』」
刺さった釘を始点に、呪力が急激に凝縮していったかと思ったら、次の瞬間には凄まじい勢いで爆ぜた。
ピギィイィィィーーー!!
断末魔を上げながら、着物型の呪いは散り散りとなってやがて灰になった。
強く風が吹いて、灰は散り散りとなり跡形もなくなってしまった。
「・・・フゥ」
そこで野薔薇ちゃんは少し安堵したように小さく息を吐いた。
そして金槌をウェストポーチにしまいながら、
「オバサンは!?」
と、倒れている店主を振り向く。
それより一足早く、私は彼女の元に駆け寄って容体を伺っていた。
「・・・・・・」
店主は真っ青な顔で意識がない。弱弱しい呼吸を繰り返しているだけだ。
「マズイわね」
野薔薇ちゃんが言った。
「身体を乗っ取られた時に受けた呪いがまだ身体の中に残っている」
「そんな・・・」
「このままじゃどんどん弱っていくわ。硝子さんにここまで来てもらうか、この人を高専に運ぶか。どうするか補助監督に指示を仰ぐわ」
と、野薔薇ちゃんはポケットからスマホを取り出した。
そうして野薔薇ちゃんが連絡を取っている間。
私はどんどん悪くなっていく店主の顔を歯がゆい思いで見下ろしながら、
「・・・・・・」
両の手をグッと握りしめた。
(私は、ここで黙って見ているだけ?それでいいの?)
私にも何か出来ること・・・。
「・・・・・・」
その時、ふいに、以前五条さんに言われた言葉を思い出した。
『その感情が深ければ深いほど、それを呪力に還元出来たなら、それは和紗のために与えられた力なんだよ』
そうだ。
私には、与えられた力がある。
私の心の真ん中にぽっかりと空けられた穴。
これに負の感情をぶつけて。
私には、出来る。
反転術式。
私には、力がある。
呪いを打ち消す、『退魔』の力が。
「・・・・・・」
気づけば、私は両手を店主の胸に当てていた。
そして、目を閉じて集中する。
私の心の真ん中にポッカリと空いた穴から、力が湧き出てくるのを感じる。
この力を外へ。
呪いに傷つけられた人を癒して。
「そう、だから出来るだけ急いで下さい!場所?えっと、日暮里の近くの・・・」
切羽詰まった様子で、補助監督(おそらく伊地知さんだろう)と話していた野薔薇ちゃんが、こちらを見て、驚き言葉を失う。
「・・・・・・」
私は集中していて、自分がしていることの説明をする余裕がない。
だけど、次第に回復していく店主の顔色を見て状況がわかったのだろう。
「・・・あの、やっぱり大丈夫そうです。応急処置が間に合いました・・・はい、了解です」
落ち着きが戻った声でそう言うと、野薔薇ちゃんは通話を終えた。
そして、私も店主の頬に赤い色が戻ったのを確認して、反転術式を解いた。というか、そこで力尽きた。
「・・・はぁ~っ、何とか、出来た・・・」
と、脱力してその場にペタリと顔を伏せた。
「和紗さん、大丈夫?」
野薔薇ちゃんが駆け寄り、私の背中に手を当てた。
「うん・・・大丈夫」
「すごいじゃない、和紗さん!『反転術式』って呪術師でも出来る人って少ないのよ」
「・・・そうみたいだね」
「ね、私とコンビ組んで呪術師しない?私が攻撃役で、和紗さんが回復役なの。私たちが組めば最強よ!東京の呪いを次々と祓う美少女コンビ。どう?」
「・・・・・・」
私は呪術師でもなければ美少女でもないし、目指しているのは和菓子職人なんだけど・・・。
「っていうか、野薔薇ちゃん、さっき私を巻き込みたくないって言ってなかったっけ?」
いや、別に巻き込まれてるとは思ってないけど(むしろ自ら巻き込まれに行ってる。自覚はある)。
今度は目玉たちが命乞いをするかのように涙を流し始めた。
しかし、野薔薇ちゃんは容赦がなかった。
「芻霊呪法」
パチンと指を鳴らした次の瞬間。
「『簪』」
刺さった釘を始点に、呪力が急激に凝縮していったかと思ったら、次の瞬間には凄まじい勢いで爆ぜた。
ピギィイィィィーーー!!
断末魔を上げながら、着物型の呪いは散り散りとなってやがて灰になった。
強く風が吹いて、灰は散り散りとなり跡形もなくなってしまった。
「・・・フゥ」
そこで野薔薇ちゃんは少し安堵したように小さく息を吐いた。
そして金槌をウェストポーチにしまいながら、
「オバサンは!?」
と、倒れている店主を振り向く。
それより一足早く、私は彼女の元に駆け寄って容体を伺っていた。
「・・・・・・」
店主は真っ青な顔で意識がない。弱弱しい呼吸を繰り返しているだけだ。
「マズイわね」
野薔薇ちゃんが言った。
「身体を乗っ取られた時に受けた呪いがまだ身体の中に残っている」
「そんな・・・」
「このままじゃどんどん弱っていくわ。硝子さんにここまで来てもらうか、この人を高専に運ぶか。どうするか補助監督に指示を仰ぐわ」
と、野薔薇ちゃんはポケットからスマホを取り出した。
そうして野薔薇ちゃんが連絡を取っている間。
私はどんどん悪くなっていく店主の顔を歯がゆい思いで見下ろしながら、
「・・・・・・」
両の手をグッと握りしめた。
(私は、ここで黙って見ているだけ?それでいいの?)
私にも何か出来ること・・・。
「・・・・・・」
その時、ふいに、以前五条さんに言われた言葉を思い出した。
『その感情が深ければ深いほど、それを呪力に還元出来たなら、それは和紗のために与えられた力なんだよ』
そうだ。
私には、与えられた力がある。
私の心の真ん中にぽっかりと空けられた穴。
これに負の感情をぶつけて。
私には、出来る。
反転術式。
私には、力がある。
呪いを打ち消す、『退魔』の力が。
「・・・・・・」
気づけば、私は両手を店主の胸に当てていた。
そして、目を閉じて集中する。
私の心の真ん中にポッカリと空いた穴から、力が湧き出てくるのを感じる。
この力を外へ。
呪いに傷つけられた人を癒して。
「そう、だから出来るだけ急いで下さい!場所?えっと、日暮里の近くの・・・」
切羽詰まった様子で、補助監督(おそらく伊地知さんだろう)と話していた野薔薇ちゃんが、こちらを見て、驚き言葉を失う。
「・・・・・・」
私は集中していて、自分がしていることの説明をする余裕がない。
だけど、次第に回復していく店主の顔色を見て状況がわかったのだろう。
「・・・あの、やっぱり大丈夫そうです。応急処置が間に合いました・・・はい、了解です」
落ち着きが戻った声でそう言うと、野薔薇ちゃんは通話を終えた。
そして、私も店主の頬に赤い色が戻ったのを確認して、反転術式を解いた。というか、そこで力尽きた。
「・・・はぁ~っ、何とか、出来た・・・」
と、脱力してその場にペタリと顔を伏せた。
「和紗さん、大丈夫?」
野薔薇ちゃんが駆け寄り、私の背中に手を当てた。
「うん・・・大丈夫」
「すごいじゃない、和紗さん!『反転術式』って呪術師でも出来る人って少ないのよ」
「・・・そうみたいだね」
「ね、私とコンビ組んで呪術師しない?私が攻撃役で、和紗さんが回復役なの。私たちが組めば最強よ!東京の呪いを次々と祓う美少女コンビ。どう?」
「・・・・・・」
私は呪術師でもなければ美少女でもないし、目指しているのは和菓子職人なんだけど・・・。
「っていうか、野薔薇ちゃん、さっき私を巻き込みたくないって言ってなかったっけ?」
いや、別に巻き込まれてるとは思ってないけど(むしろ自ら巻き込まれに行ってる。自覚はある)。