第11話 メゾン・ド・エグランティーヌ
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その週の日曜日。
約束した通り、私と野薔薇ちゃんはスカートを仕立てるための布地を買い求めて、日暮里へやって来た。
理想の布地を求めて、あちこちの店をはしごする。
布を物色しながら、私と野薔薇ちゃんはお互いの身の上話をした。
野薔薇ちゃんは、地元で呪術師をしているおばあさんの手伝いをしながら育ったという。
呪術もおばあさんから教わったそうだ。
地元で自分の手で育てたいと思っていたおばあさんと、呪術高専入学をきっかけに東京へ出たかった野薔薇ちゃんは揉めて、そのために入学が遅れたのだという。
「そっか。そんな経緯があったんだ」
「そっ。うっとおしいったらありゃしない。私の人生なんだから私のしたいようにさせろっつーの!」
「きっとおばあちゃん、野薔薇ちゃんのことが可愛くて仕方なかったんだよ。だから、手放したくなかったんじゃないかな」
「・・・・・・」
「あ」
そんなことを話しながら色々な布を物色していると、ふとパステルカラーのガーゼ生地が目についた。
「これ、花ちゃんに似合いそう」
私のつぶやきに、野薔薇ちゃんが反応した。
「花ちゃんって?」
「あ、故郷の幼馴染の赤ちゃんのことなの」
私は言った。
「今年の初めに生まれたばかりでね、フクフクしてすごく可愛いの!この生地でベビー服縫って送ろっかな」
「ふーん」
それから野薔薇ちゃんも理想的な布を見つけ、私も花ちゃんのための布を買って、近くの喫茶店でお茶をすることにした。
「和紗さんは、故郷のこと好きですか?」
注文したホットケーキを切り分けていたら、唐突に野薔薇ちゃんが尋ねてきた。
私は即答せず、目を瞬かせた。
「どうしたの、唐突に」
「ただ気になって。ちなみに私は嫌い。いや、だーいッ嫌いッ!!」
「そうなんだ。どうして?」
「まず、村の全員が親戚面してズカズカと土足で人のテリトリーに入って来るのが嫌!」
「うん」
「テメェの狭い了見で、自分の常識や正しさを押し付けてくるとこが嫌!そんでもって、自分の了見に収まらないものを寄って集って嫌がらせして、ジワジワと追い出そうとする村根性も嫌!」
「うん・・・」
「そんな連中ばかりだから、沙織ちゃんはいなくなった・・・」
「さおりちゃん?」
「・・・私が小学生の時、東京から近所に引っ越してきたの。7コ・・・上だったかな」
「・・・・・・」
「可愛くてオシャレで、村にはなかったようなものを沢山知っていたし持っていた。憧れてたんだ。だけど、村の連中は自分たちが沙織ちゃんに見下されてるって勝手に思い込んで、村八分にした。それで、沙織ちゃんは出て行っちゃった」
「・・・・・・」
「私、あの村にいると息苦しい。あんなところにいたら、私は私でいられなくなる・・・」
そう呟いた野薔薇ちゃんの目は、少し悲しそうに揺らいだ。
「・・・・・・」
村の人々の沙織ちゃんに対する仕打ちは、許せないものだと思う。
でも正直、私は野薔薇ちゃんの気持ち全てに共感は出来ない。
確かに糠田が森も小さな村で、人との付き合いは濃いし、噂話もアッという間に広がるし、考えようによっては確かに息苦しいものなのかもしれない。
それでも、私は。
「ごめんなさい」
そう言ったのは、野薔薇ちゃんだ。
「私、自分が故郷嫌いで、それに共感してほしくて、和紗さんに質問してた。答えを誘導しようとしてた」
「・・・・・・」
「だけど、さっきの布屋で花ちゃんってコのために生地を選んでる和紗さんを見てたら、嫌いなわけないよなって、わかった」
「野薔薇ちゃん・・・」
「まっ、ド田舎っていっても色々だもんね!糠田が森の人達は良い人が多いのね、きっと!」
そう言って、野薔薇ちゃんはホットケーキを頬張り始めた。
そんな野薔薇ちゃんに、私は話を始めた。
「・・・故郷っていっても、私、糠田が森へ来たのは小学生になってからなんだ」
約束した通り、私と野薔薇ちゃんはスカートを仕立てるための布地を買い求めて、日暮里へやって来た。
理想の布地を求めて、あちこちの店をはしごする。
布を物色しながら、私と野薔薇ちゃんはお互いの身の上話をした。
野薔薇ちゃんは、地元で呪術師をしているおばあさんの手伝いをしながら育ったという。
呪術もおばあさんから教わったそうだ。
地元で自分の手で育てたいと思っていたおばあさんと、呪術高専入学をきっかけに東京へ出たかった野薔薇ちゃんは揉めて、そのために入学が遅れたのだという。
「そっか。そんな経緯があったんだ」
「そっ。うっとおしいったらありゃしない。私の人生なんだから私のしたいようにさせろっつーの!」
「きっとおばあちゃん、野薔薇ちゃんのことが可愛くて仕方なかったんだよ。だから、手放したくなかったんじゃないかな」
「・・・・・・」
「あ」
そんなことを話しながら色々な布を物色していると、ふとパステルカラーのガーゼ生地が目についた。
「これ、花ちゃんに似合いそう」
私のつぶやきに、野薔薇ちゃんが反応した。
「花ちゃんって?」
「あ、故郷の幼馴染の赤ちゃんのことなの」
私は言った。
「今年の初めに生まれたばかりでね、フクフクしてすごく可愛いの!この生地でベビー服縫って送ろっかな」
「ふーん」
それから野薔薇ちゃんも理想的な布を見つけ、私も花ちゃんのための布を買って、近くの喫茶店でお茶をすることにした。
「和紗さんは、故郷のこと好きですか?」
注文したホットケーキを切り分けていたら、唐突に野薔薇ちゃんが尋ねてきた。
私は即答せず、目を瞬かせた。
「どうしたの、唐突に」
「ただ気になって。ちなみに私は嫌い。いや、だーいッ嫌いッ!!」
「そうなんだ。どうして?」
「まず、村の全員が親戚面してズカズカと土足で人のテリトリーに入って来るのが嫌!」
「うん」
「テメェの狭い了見で、自分の常識や正しさを押し付けてくるとこが嫌!そんでもって、自分の了見に収まらないものを寄って集って嫌がらせして、ジワジワと追い出そうとする村根性も嫌!」
「うん・・・」
「そんな連中ばかりだから、沙織ちゃんはいなくなった・・・」
「さおりちゃん?」
「・・・私が小学生の時、東京から近所に引っ越してきたの。7コ・・・上だったかな」
「・・・・・・」
「可愛くてオシャレで、村にはなかったようなものを沢山知っていたし持っていた。憧れてたんだ。だけど、村の連中は自分たちが沙織ちゃんに見下されてるって勝手に思い込んで、村八分にした。それで、沙織ちゃんは出て行っちゃった」
「・・・・・・」
「私、あの村にいると息苦しい。あんなところにいたら、私は私でいられなくなる・・・」
そう呟いた野薔薇ちゃんの目は、少し悲しそうに揺らいだ。
「・・・・・・」
村の人々の沙織ちゃんに対する仕打ちは、許せないものだと思う。
でも正直、私は野薔薇ちゃんの気持ち全てに共感は出来ない。
確かに糠田が森も小さな村で、人との付き合いは濃いし、噂話もアッという間に広がるし、考えようによっては確かに息苦しいものなのかもしれない。
それでも、私は。
「ごめんなさい」
そう言ったのは、野薔薇ちゃんだ。
「私、自分が故郷嫌いで、それに共感してほしくて、和紗さんに質問してた。答えを誘導しようとしてた」
「・・・・・・」
「だけど、さっきの布屋で花ちゃんってコのために生地を選んでる和紗さんを見てたら、嫌いなわけないよなって、わかった」
「野薔薇ちゃん・・・」
「まっ、ド田舎っていっても色々だもんね!糠田が森の人達は良い人が多いのね、きっと!」
そう言って、野薔薇ちゃんはホットケーキを頬張り始めた。
そんな野薔薇ちゃんに、私は話を始めた。
「・・・故郷っていっても、私、糠田が森へ来たのは小学生になってからなんだ」