第9話 みなづき駅ー弐ー
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「うっ・・・」
目が覚めて、すぐサトルと目が合った。
サトルが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「・・・サトル・・・」
と、私はサトルの頭を撫でながら、身体を起こした。
ぼやけていた意識もだんだんハッキリしてきて、今、自分がどこにいるのかに気づく。
「ここは・・・」
電車だ。
電車の中にいる。
私は電車の座席で横たわっていたのだ。
「気がつきましたか」
七海さんの声がして、私はそちらを振り向いた。
七海さんは向かいの座席に腰を掛けている。
「七海さん・・・」
七海さんの姿を目にしてホッとしたのも束の間。
「右近君は!?」
と、慌てて辺りを見回す。
「彼ならそこに」
七海さんがそう言って指差した方を見てみると、斜め向かいの優先席で、右近君はまだ気を失って横たわっていた。
今度こそ私は安堵して、改めて電車内の様子を伺った。
元の場所に戻ってきたのだろうか。
「私たち、戻ってきたんですか?」
「いいえ。敵の生得領域の別空間に引き込まれたようです」
七海さんは言った。
「おそらくですが、現在の生得領域はこの電車内のみ。規模は小さくなりましたが、その分閉じ込め効果が強化されています。現にこのように」
と言うと、七海さんは窓ガラスに向けて思い切り鉈を振るった。
「!」
しかし窓ガラスは割れることなく、コールタールの沼に変容して、鉈はトプリと音を立てて沈み込んだ。
七海さんは鉈を抜き取り、言葉を続けた。
「内側から外へ出ようと試みても不可能です。領域は完成されつつあるようです」
「・・・・・・」
「『領域展開』が為されれば、私たちは圧倒的に不利な状況に陥ります。その前に、この車内のどこかにいるであろう領域の主を祓わなければなりません」
「・・・あの、緊迫してる時に申し訳ないんですけど」
「何ですか」
「さっきから言ってる『領域展開』って何ですか?」
と、私が尋ねると、七海さんは目を丸めた。
「ご存じないんですか。五条さんから話は?」
「まだ・・・。おそらく、私がまだそのレベルに達してないからだと」
「なるほど」
すると、七海さんは改めて語り始めた。
「『領域展開』とは、呪術戦の極致。術式を付与した生得領域を呪力で具現化する行為です」
「・・・・・・」
「展開後、術式は必中効果が付与され、使用者の能力値も上昇する。このように圧倒的優位に立てることから、『領域展開』することが決着となり得る。これが極致たる所以です」
「『領域展開』に対抗できる術はあるんですか?」
「必中効果を無効化するという点では、『簡易領域』があります。
『簡易領域』・・・また新しい単語が出てきた(『生得領域』に『領域展開』に『簡易領域』・・・ややこしい!)。
「完全な対抗策としては、こちらも『領域展開』することです」
「七海さんは、出来るんですか?『領域展開』」
少しの期待を込めて尋ねると、七海さんはキッパリと言った。
「出来ません。『領域展開』が出来るのは一握りの呪術師。『簡易領域』はシン・陰流の門下生のみが習得できる門外不出の技です」
「そうなんですか!?」
「ですから、さっきからずっと領域の主を探して祓わなければ、と言っているでしょう」
「す、すみません!呑み込みが悪くて」
そして、七海さんは座席から立ちあがった。
「初めは、貴女たちをここに残して一人で行くべきと考えていました。しかし、領域に付与されうる術式が不明である現状、不測の事態が起きるリスクの方が連れて歩くリスクより多いと捉えて、貴女たちも連れていく考えに至りました。私に着いてきて下さい」
「はい」
「しかし、最初に言ったように戦闘には参加しないこと。わかりましたね」
「・・・はい」
「急ぎます。彼を起こしてください」
「はい!」
そうして、私は座席から立ちあがった。
目が覚めて、すぐサトルと目が合った。
サトルが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「・・・サトル・・・」
と、私はサトルの頭を撫でながら、身体を起こした。
ぼやけていた意識もだんだんハッキリしてきて、今、自分がどこにいるのかに気づく。
「ここは・・・」
電車だ。
電車の中にいる。
私は電車の座席で横たわっていたのだ。
「気がつきましたか」
七海さんの声がして、私はそちらを振り向いた。
七海さんは向かいの座席に腰を掛けている。
「七海さん・・・」
七海さんの姿を目にしてホッとしたのも束の間。
「右近君は!?」
と、慌てて辺りを見回す。
「彼ならそこに」
七海さんがそう言って指差した方を見てみると、斜め向かいの優先席で、右近君はまだ気を失って横たわっていた。
今度こそ私は安堵して、改めて電車内の様子を伺った。
元の場所に戻ってきたのだろうか。
「私たち、戻ってきたんですか?」
「いいえ。敵の生得領域の別空間に引き込まれたようです」
七海さんは言った。
「おそらくですが、現在の生得領域はこの電車内のみ。規模は小さくなりましたが、その分閉じ込め効果が強化されています。現にこのように」
と言うと、七海さんは窓ガラスに向けて思い切り鉈を振るった。
「!」
しかし窓ガラスは割れることなく、コールタールの沼に変容して、鉈はトプリと音を立てて沈み込んだ。
七海さんは鉈を抜き取り、言葉を続けた。
「内側から外へ出ようと試みても不可能です。領域は完成されつつあるようです」
「・・・・・・」
「『領域展開』が為されれば、私たちは圧倒的に不利な状況に陥ります。その前に、この車内のどこかにいるであろう領域の主を祓わなければなりません」
「・・・あの、緊迫してる時に申し訳ないんですけど」
「何ですか」
「さっきから言ってる『領域展開』って何ですか?」
と、私が尋ねると、七海さんは目を丸めた。
「ご存じないんですか。五条さんから話は?」
「まだ・・・。おそらく、私がまだそのレベルに達してないからだと」
「なるほど」
すると、七海さんは改めて語り始めた。
「『領域展開』とは、呪術戦の極致。術式を付与した生得領域を呪力で具現化する行為です」
「・・・・・・」
「展開後、術式は必中効果が付与され、使用者の能力値も上昇する。このように圧倒的優位に立てることから、『領域展開』することが決着となり得る。これが極致たる所以です」
「『領域展開』に対抗できる術はあるんですか?」
「必中効果を無効化するという点では、『簡易領域』があります。
『簡易領域』・・・また新しい単語が出てきた(『生得領域』に『領域展開』に『簡易領域』・・・ややこしい!)。
「完全な対抗策としては、こちらも『領域展開』することです」
「七海さんは、出来るんですか?『領域展開』」
少しの期待を込めて尋ねると、七海さんはキッパリと言った。
「出来ません。『領域展開』が出来るのは一握りの呪術師。『簡易領域』はシン・陰流の門下生のみが習得できる門外不出の技です」
「そうなんですか!?」
「ですから、さっきからずっと領域の主を探して祓わなければ、と言っているでしょう」
「す、すみません!呑み込みが悪くて」
そして、七海さんは座席から立ちあがった。
「初めは、貴女たちをここに残して一人で行くべきと考えていました。しかし、領域に付与されうる術式が不明である現状、不測の事態が起きるリスクの方が連れて歩くリスクより多いと捉えて、貴女たちも連れていく考えに至りました。私に着いてきて下さい」
「はい」
「しかし、最初に言ったように戦闘には参加しないこと。わかりましたね」
「・・・はい」
「急ぎます。彼を起こしてください」
「はい!」
そうして、私は座席から立ちあがった。
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