第5話 東京
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「わあ・・・っ!」
と、私は思わず感嘆の声を上げた。
私の視線の先には、東京駅赤レンガ駅舎。
いつもテレビで見ていたあの建物が、実際に私の目の前にある。
私はおのぼりさん感丸出しで、スマホでパシャパシャと写真を撮った。
(ほんとに来たんだ。東京に・・・!)
私は鶴來和紗、18歳。
出身地は石川県金沢市・・・から車で片道三時間はかかる糠田が森という片田舎。この春から、和菓子職人を目指して製菓専門学校に通うため、東京にやって来た。
そして、目的はもうひとつ。
「おーい、和紗、こっちこっち」
と私を手招くのは、五条悟さん、28歳。
東京都立呪術高等専門学校の教師(らしい。見えないけど)にして、人間に危害を加える『呪い』を『呪力』で以て祓う呪術師でもある。
私が東京に来たもうひとつの理由。
それは、この五条さんに『呪力』について教わるためだ。
和菓子職人を目指すことと、『呪力』を学ぶこと。
まったく関係のないことのように見えて、私にとってはどちらも大事で必要なことだ。
全ては、私の故郷・・・糠田が森にこびりついた『呪い』から大切な人たちを護るためだ。
そんな固い決意を胸に上京した私なのだけど、
「待って、五条さん!まだ写真撮らせてください・・・!」
今この時だけは、上京直後の妙なハイテンションですっかり舞い上がってしまっていた。
「そんな駅舎なんて写真撮るほどのものでもないでしょ」
と、五条さんは呆れ気味に言う。
「二週間も経てば珍しくもなくなるよ。それよりもお腹すかない?なんだかんだでもうお昼過ぎてるし。どこか食べに行こうよ。上京のお祝いにご馳走するよ~」
私はピタリと撮影する手を止めた。
「え、いいんですか?」
「もちろん。老舗の洋食の名店でもオシャレなカフェでも焼き肉食べ放題でもなんでもいいよ」
「うーん・・・」
「それか、銀座で寿司でもどう?僕、行きつけの店あるし」
「・・・本当にお言葉に甘えてもいいですか?」
「うんうん。何がいい?」
「じゃあ・・・」
私は言った。
「私、マクドナルドに行きたいです!」
「え?」
五条さんは虚を突かれたような声を上げた。
「この流れで何故マック?確かに糠田が森にはなかったけどさ。もしかして一度も食べたことない?」
「ありますよ!」
「じゃあどうしてこの上京で盛り上がったテンションでマックに?」
「・・・・・・・」
私は少し昔を思い返しながら言った。
「私が中学一年生の時に、糠田が森から国道沿いに自転車で1時間ぐらいのところにマクドナルドが出来たんです」
「い、1時間も・・・」
「オープン当時はそれはもう村中が大騒ぎでした。ファーストフード店なんて糠田が森周辺になかったし。友達と毎週通うのが決まりみたいになっていて、それはもう楽しかったんですけど、1年も経たないうちに閉店してしまって・・・」
「繁盛してなかったの?」
「いえ。でも、金沢に出来たショッピングモールに移転してしまったんです」
「・・・・・・」
「金沢まではさすがに自転車ではいけないし。我が家は車もなかったから。デリバリーもエリア外だったし。だから、中学一年生の時以来食べてないんですよね、マクドナルド・・・」
「・・・・・・」
私のマクドナルドにまつわる思い出話が終わると、五条さんは目頭に手をあてて黙り込んでしまった。
(若人の青春にマックさえなかったなんて・・・不憫すぎる)
そんな五条さんを見て私はハッとした。
「あ、五条さんは嫌ですよね、マクドナルドなんて・・・」
すると、五条さんはグスッと鼻を鳴らしながら言った。
「いや。いいよ。行こう、マックへ!」
「いいんですか!?」
「いいよ。ビッグマック5個でも10個でも食べてもいいよ」
「私、グラコロ食べたいです!」
「今の時期はないかな」
「そうなんですか?じゃあ、どれでもいいです!久しぶりにマクドナルド行けるだけで嬉しい!」
「石川じゃフルネームで呼ぶんだね、マクドナルドって」
「石川っていうか、糠田が森だからかも。東京の人はやっぱりマックなんですね」
「関西じゃマクドっていうらしいよー」
「へぇ~」
と、私は思わず感嘆の声を上げた。
私の視線の先には、東京駅赤レンガ駅舎。
いつもテレビで見ていたあの建物が、実際に私の目の前にある。
私はおのぼりさん感丸出しで、スマホでパシャパシャと写真を撮った。
(ほんとに来たんだ。東京に・・・!)
私は鶴來和紗、18歳。
出身地は石川県金沢市・・・から車で片道三時間はかかる糠田が森という片田舎。この春から、和菓子職人を目指して製菓専門学校に通うため、東京にやって来た。
そして、目的はもうひとつ。
「おーい、和紗、こっちこっち」
と私を手招くのは、五条悟さん、28歳。
東京都立呪術高等専門学校の教師(らしい。見えないけど)にして、人間に危害を加える『呪い』を『呪力』で以て祓う呪術師でもある。
私が東京に来たもうひとつの理由。
それは、この五条さんに『呪力』について教わるためだ。
和菓子職人を目指すことと、『呪力』を学ぶこと。
まったく関係のないことのように見えて、私にとってはどちらも大事で必要なことだ。
全ては、私の故郷・・・糠田が森にこびりついた『呪い』から大切な人たちを護るためだ。
そんな固い決意を胸に上京した私なのだけど、
「待って、五条さん!まだ写真撮らせてください・・・!」
今この時だけは、上京直後の妙なハイテンションですっかり舞い上がってしまっていた。
「そんな駅舎なんて写真撮るほどのものでもないでしょ」
と、五条さんは呆れ気味に言う。
「二週間も経てば珍しくもなくなるよ。それよりもお腹すかない?なんだかんだでもうお昼過ぎてるし。どこか食べに行こうよ。上京のお祝いにご馳走するよ~」
私はピタリと撮影する手を止めた。
「え、いいんですか?」
「もちろん。老舗の洋食の名店でもオシャレなカフェでも焼き肉食べ放題でもなんでもいいよ」
「うーん・・・」
「それか、銀座で寿司でもどう?僕、行きつけの店あるし」
「・・・本当にお言葉に甘えてもいいですか?」
「うんうん。何がいい?」
「じゃあ・・・」
私は言った。
「私、マクドナルドに行きたいです!」
「え?」
五条さんは虚を突かれたような声を上げた。
「この流れで何故マック?確かに糠田が森にはなかったけどさ。もしかして一度も食べたことない?」
「ありますよ!」
「じゃあどうしてこの上京で盛り上がったテンションでマックに?」
「・・・・・・・」
私は少し昔を思い返しながら言った。
「私が中学一年生の時に、糠田が森から国道沿いに自転車で1時間ぐらいのところにマクドナルドが出来たんです」
「い、1時間も・・・」
「オープン当時はそれはもう村中が大騒ぎでした。ファーストフード店なんて糠田が森周辺になかったし。友達と毎週通うのが決まりみたいになっていて、それはもう楽しかったんですけど、1年も経たないうちに閉店してしまって・・・」
「繁盛してなかったの?」
「いえ。でも、金沢に出来たショッピングモールに移転してしまったんです」
「・・・・・・」
「金沢まではさすがに自転車ではいけないし。我が家は車もなかったから。デリバリーもエリア外だったし。だから、中学一年生の時以来食べてないんですよね、マクドナルド・・・」
「・・・・・・」
私のマクドナルドにまつわる思い出話が終わると、五条さんは目頭に手をあてて黙り込んでしまった。
(若人の青春にマックさえなかったなんて・・・不憫すぎる)
そんな五条さんを見て私はハッとした。
「あ、五条さんは嫌ですよね、マクドナルドなんて・・・」
すると、五条さんはグスッと鼻を鳴らしながら言った。
「いや。いいよ。行こう、マックへ!」
「いいんですか!?」
「いいよ。ビッグマック5個でも10個でも食べてもいいよ」
「私、グラコロ食べたいです!」
「今の時期はないかな」
「そうなんですか?じゃあ、どれでもいいです!久しぶりにマクドナルド行けるだけで嬉しい!」
「石川じゃフルネームで呼ぶんだね、マクドナルドって」
「石川っていうか、糠田が森だからかも。東京の人はやっぱりマックなんですね」
「関西じゃマクドっていうらしいよー」
「へぇ~」
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