第32話 懐玉ー弐ー
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胸の動悸が収まらなくて。
頬の火照りが冷めなくて。
いつまでも眠れなくて。
明け方になってようやくうつらうつらとしてきた頃、誰かがたてた物音ですぐ目が覚めた。
「ん・・・」
ふと見やると、バルコニーへ続く扉が開いていた。
ベッドから抜け出してそちらへ向かう。
すると、バルコニーに理子ちゃんがひとりで佇んでいた。
「理子ちゃん?」
と声をかけると、理子ちゃんは少し驚いて私の方を振り向いた。
「・・・和紗さん。ごめんなさい、起こしちゃった?」
「ううん。元々あまり寝付けなくて」
「・・・そう」
「理子ちゃんは?眠れた?」
「うん・・・」
理子ちゃんは頷く。
「でも、目を覚ましている時の方が、眠って夢を見ているみたい。それくらい、昨日は楽しかった」
「理子ちゃん・・・」
「私が天元様と同化しても、夢は見るのかな」
問いかけでも独り言でもない、その言葉に上手く返さないでいたら、
「・・・ごめんなさい、変なこと言っちゃった」
と理子ちゃんは言った。
私は黙って首を横に振った。
すると、理子ちゃんはふと微笑んだ。
「・・・全てが終わったら、あの二人にお礼を伝えて」
そして、こう言った。
「私に、時間をくれてありがとうって」
「それは・・・」
自分で伝えては、と言おうとしたところで、
「やっぱりまだ眠いや。もう少しだけ寝よっと」
と理子ちゃんは部屋へ戻って行った。
「・・・・・・」
今度は私がバルコニーにひとりになった。
胸の動悸も頬の火照りも落ち着いていた。
(そうだ、まだ任務は終わっていない。浮ついてる場合じゃない)
そのまま朝日が昇るまで、そこにいた。
「さ、行こうか」
ロビーで集合した時には、五条さんも夏油さんも、昨日までのリラックスした表情から一転して引き締まった顔をしていた。
「・・・・・・」
五条さんの目元に薄らとクマが出ているけれど、集中力が途切れた感じはしない。
(もう少しだけ、頑張って)
私はそっと心の中でエールを送った。
ホテルをチェックアウトして、シャトルバスに乗り空港へ向かった。
その車中で、
「空港は安全なのかな」
私は懸念を口にした。
「刺客が空港を占拠したりなんてことは」
「あれ、和紗にはまだ話してなかったかな」
夏油さんが言った。
「それなら大丈夫。昨日から七海と灰原も沖縄に来て、空港の警備に当たってくれてるよ」
「七海さんと灰原君が?」
空港に着くと、夏油さんが話した通り二人が待っていた。
「夏油さん、五条さん、鶴來さん!お疲れ様です!」
私達の姿を見つけると、灰原がすぐさま駆けつけて来た。
その後に続いて、七海さんが歩いて来る。
「ずいぶんと満喫されたようで」
と、七海さんが少し皮肉混じりに言う。
すると夏油さんは苦笑いながら、
「急な予定変更で迷惑かけたな。すまない」
と話すと、
「申し訳ありません!」
続いて黒井さんがペコペコと頭を下げた。
その側で、理子ちゃんが少し居た堪れそうにしている。
七海さんはそんな理子ちゃんの姿を見やると、
「・・・何にせよ、皆さんが無事で良かったです。さ、まもなく搭乗時間です。急いで手続きしてください」
と言った。
それに続いて、灰原君が言う。
「ここは引き続き僕達ふたりで警備しますので!」
「七海さんと灰原君は飛行機に乗らないの?」
「僕達は皆さんの乗る飛行機が無事に離陸するのを見送って、次の便で帰ります」
と、私の問いかけに灰原君が答えた。
「ひと足先に高専へ戻っていてください」
と、七海さんが言うのに夏油さんは頷いた。
「行こう」
そうして、私達は東京行きの飛行機に乗り込んだ。
頬の火照りが冷めなくて。
いつまでも眠れなくて。
明け方になってようやくうつらうつらとしてきた頃、誰かがたてた物音ですぐ目が覚めた。
「ん・・・」
ふと見やると、バルコニーへ続く扉が開いていた。
ベッドから抜け出してそちらへ向かう。
すると、バルコニーに理子ちゃんがひとりで佇んでいた。
「理子ちゃん?」
と声をかけると、理子ちゃんは少し驚いて私の方を振り向いた。
「・・・和紗さん。ごめんなさい、起こしちゃった?」
「ううん。元々あまり寝付けなくて」
「・・・そう」
「理子ちゃんは?眠れた?」
「うん・・・」
理子ちゃんは頷く。
「でも、目を覚ましている時の方が、眠って夢を見ているみたい。それくらい、昨日は楽しかった」
「理子ちゃん・・・」
「私が天元様と同化しても、夢は見るのかな」
問いかけでも独り言でもない、その言葉に上手く返さないでいたら、
「・・・ごめんなさい、変なこと言っちゃった」
と理子ちゃんは言った。
私は黙って首を横に振った。
すると、理子ちゃんはふと微笑んだ。
「・・・全てが終わったら、あの二人にお礼を伝えて」
そして、こう言った。
「私に、時間をくれてありがとうって」
「それは・・・」
自分で伝えては、と言おうとしたところで、
「やっぱりまだ眠いや。もう少しだけ寝よっと」
と理子ちゃんは部屋へ戻って行った。
「・・・・・・」
今度は私がバルコニーにひとりになった。
胸の動悸も頬の火照りも落ち着いていた。
(そうだ、まだ任務は終わっていない。浮ついてる場合じゃない)
そのまま朝日が昇るまで、そこにいた。
「さ、行こうか」
ロビーで集合した時には、五条さんも夏油さんも、昨日までのリラックスした表情から一転して引き締まった顔をしていた。
「・・・・・・」
五条さんの目元に薄らとクマが出ているけれど、集中力が途切れた感じはしない。
(もう少しだけ、頑張って)
私はそっと心の中でエールを送った。
ホテルをチェックアウトして、シャトルバスに乗り空港へ向かった。
その車中で、
「空港は安全なのかな」
私は懸念を口にした。
「刺客が空港を占拠したりなんてことは」
「あれ、和紗にはまだ話してなかったかな」
夏油さんが言った。
「それなら大丈夫。昨日から七海と灰原も沖縄に来て、空港の警備に当たってくれてるよ」
「七海さんと灰原君が?」
空港に着くと、夏油さんが話した通り二人が待っていた。
「夏油さん、五条さん、鶴來さん!お疲れ様です!」
私達の姿を見つけると、灰原がすぐさま駆けつけて来た。
その後に続いて、七海さんが歩いて来る。
「ずいぶんと満喫されたようで」
と、七海さんが少し皮肉混じりに言う。
すると夏油さんは苦笑いながら、
「急な予定変更で迷惑かけたな。すまない」
と話すと、
「申し訳ありません!」
続いて黒井さんがペコペコと頭を下げた。
その側で、理子ちゃんが少し居た堪れそうにしている。
七海さんはそんな理子ちゃんの姿を見やると、
「・・・何にせよ、皆さんが無事で良かったです。さ、まもなく搭乗時間です。急いで手続きしてください」
と言った。
それに続いて、灰原君が言う。
「ここは引き続き僕達ふたりで警備しますので!」
「七海さんと灰原君は飛行機に乗らないの?」
「僕達は皆さんの乗る飛行機が無事に離陸するのを見送って、次の便で帰ります」
と、私の問いかけに灰原君が答えた。
「ひと足先に高専へ戻っていてください」
と、七海さんが言うのに夏油さんは頷いた。
「行こう」
そうして、私達は東京行きの飛行機に乗り込んだ。
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