第25話 渋谷事変ー壱ー
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【2018年10月31日 AM7:00】
「さて。本日はハロウィンですね」
テレビの中のアナウンサーが爽やかに語りかける。
「中継カメラに映っているのは、渋谷駅前のスクランブル交差点です。今朝は出勤や通学で人々が行き通っていますが、ハロウィンということで夕方から夜遅くにかけては仮装した人が多く押し寄せることが予測されています。不慮の事故が起きないように毎年警視庁が警戒を深めています」
テレビ画面を見ながら、私は朝食のトーストを頬張る。
(ハロウィンかぁ)
糠田が森にいた頃は友達とお菓子交換するぐらいで、仮装しようなんて発想は一切なかった。
一度『つるぎ庵』でお菓子を配ることも提案したことがあるけれど、
「ハロウィンだぁ?なんじゃそりゃ」
と、おじいちゃんは気乗りしなくて頓挫したし。
そんなわけでハロウィンは私にとって縁遠いイベントだ。
渋谷のハロウィンの様子は毎年テレビニュースで見ていたけれど、何故ここまで人々が盛り上がってるのがよくわからない。
そんな事を考えていたら、
「おはよ〜」
五条さんがのそっと起きてきた。
「おはようございます」
私は椅子から立ち上がり言った。
「朝ごはん食べますか?」
「んー、カフェオレだけでいいや」
と言いながら、五条さんはドカッとソファに座り込んだ。
パジャマ姿に、寝癖で毛先は跳ねて、サングラスさえかけていない。
完全に起き抜けといった感じで、目もはっきり覚めていないらしい。
なので、私はキッチンに向かい、いつもより少し濃いめのカフェオレを淹れた。
「今日はハロウィンですね」
と、カフェオレの入ったマグカップを五条さんに差し出した。
「ありがと」と五条さんはそれを受け取り、
「んー、そだねー」
と、さして興味なさそうに頷いた。
意外な反応に、私は目を瞬かせる。
「あんまり関心ないんですね」
「僕ももう28だよ~。ハロウィンではしゃぐ年でもないし」
「誰よりはしゃいでそうですけど」
「楽しいことは好きだよ~。でも、ハロウィンって世代的に馴染みがないんだよね」
「・・・オジサン・・・」
「ん?誰が?」
と、五条さんは隣に座った私の頭を軽く小突いた。
それを受けて私はケラケラと笑う。
「・・・それに、本来の趣旨とかけ離れ過ぎてるでしょ、最近のハロウィンは」
という五条さんの言葉に、私は考えを巡らせた。
「確かに。そもそもハロウィンって何の日なんだろ?」
「由来は古代ケルト人の祭りらしいよ。秋の収穫を祝い、先祖の霊を迎えると共に悪霊を追い払うための」
と言った後、五条さんはカフェオレを一口飲んだ。しかしすぐに眉をひそめて、
「・・・ちょっと苦いなぁ」
と立ち上がってキッチンに向かい、
「日本の若人もハロウィンでこんなに盛り上がるなら、お盆とか自国の風習をもっと大事にしてほしいものだねぇ」
と言いながら、戸棚から角砂糖の袋を取り出してカフェオレのマグカップの中に5、6個ボトボトと投入した。
(うわぁ・・・)
その光景を目にして私は密かに顔をしかめる。
だけど、五条さんはそれを意に介さずマグカップを手にソファに戻って来て、再び私の隣に座った。
そして、ニヤリと笑った。
「だけど、和紗のコスプレには期待してる」
そう言われて、私は一瞬キョトンとした後すぐにカァッとなって言った。
「ど、どうして私が」
「今日僕が帰って来る時、出迎えてくれるんでしょ?コスプレして『トリック・オア・トリート!』ってさ」
「~~~~っ!」
「何のコスプレかなぁ?やっぱ王道の魔女かなぁ?ナース姿もいいよねぇ」
「しませんから」
「先に宣言しとくけど、僕、お菓子用意しないから」
と言いながら、五条さんは右腕を私の肩に回そうとするけれど、
「だから、しませんってば」
と、私はスックと立ちあがった。
そのせいで、五条さんの右腕は空振りする。
「あらら」と拍子抜けする五条さんを、見下ろしつつ私は言った。
「それに私、今日は五条さんより帰り遅くなるかもしれないし」
「さて。本日はハロウィンですね」
テレビの中のアナウンサーが爽やかに語りかける。
「中継カメラに映っているのは、渋谷駅前のスクランブル交差点です。今朝は出勤や通学で人々が行き通っていますが、ハロウィンということで夕方から夜遅くにかけては仮装した人が多く押し寄せることが予測されています。不慮の事故が起きないように毎年警視庁が警戒を深めています」
テレビ画面を見ながら、私は朝食のトーストを頬張る。
(ハロウィンかぁ)
糠田が森にいた頃は友達とお菓子交換するぐらいで、仮装しようなんて発想は一切なかった。
一度『つるぎ庵』でお菓子を配ることも提案したことがあるけれど、
「ハロウィンだぁ?なんじゃそりゃ」
と、おじいちゃんは気乗りしなくて頓挫したし。
そんなわけでハロウィンは私にとって縁遠いイベントだ。
渋谷のハロウィンの様子は毎年テレビニュースで見ていたけれど、何故ここまで人々が盛り上がってるのがよくわからない。
そんな事を考えていたら、
「おはよ〜」
五条さんがのそっと起きてきた。
「おはようございます」
私は椅子から立ち上がり言った。
「朝ごはん食べますか?」
「んー、カフェオレだけでいいや」
と言いながら、五条さんはドカッとソファに座り込んだ。
パジャマ姿に、寝癖で毛先は跳ねて、サングラスさえかけていない。
完全に起き抜けといった感じで、目もはっきり覚めていないらしい。
なので、私はキッチンに向かい、いつもより少し濃いめのカフェオレを淹れた。
「今日はハロウィンですね」
と、カフェオレの入ったマグカップを五条さんに差し出した。
「ありがと」と五条さんはそれを受け取り、
「んー、そだねー」
と、さして興味なさそうに頷いた。
意外な反応に、私は目を瞬かせる。
「あんまり関心ないんですね」
「僕ももう28だよ~。ハロウィンではしゃぐ年でもないし」
「誰よりはしゃいでそうですけど」
「楽しいことは好きだよ~。でも、ハロウィンって世代的に馴染みがないんだよね」
「・・・オジサン・・・」
「ん?誰が?」
と、五条さんは隣に座った私の頭を軽く小突いた。
それを受けて私はケラケラと笑う。
「・・・それに、本来の趣旨とかけ離れ過ぎてるでしょ、最近のハロウィンは」
という五条さんの言葉に、私は考えを巡らせた。
「確かに。そもそもハロウィンって何の日なんだろ?」
「由来は古代ケルト人の祭りらしいよ。秋の収穫を祝い、先祖の霊を迎えると共に悪霊を追い払うための」
と言った後、五条さんはカフェオレを一口飲んだ。しかしすぐに眉をひそめて、
「・・・ちょっと苦いなぁ」
と立ち上がってキッチンに向かい、
「日本の若人もハロウィンでこんなに盛り上がるなら、お盆とか自国の風習をもっと大事にしてほしいものだねぇ」
と言いながら、戸棚から角砂糖の袋を取り出してカフェオレのマグカップの中に5、6個ボトボトと投入した。
(うわぁ・・・)
その光景を目にして私は密かに顔をしかめる。
だけど、五条さんはそれを意に介さずマグカップを手にソファに戻って来て、再び私の隣に座った。
そして、ニヤリと笑った。
「だけど、和紗のコスプレには期待してる」
そう言われて、私は一瞬キョトンとした後すぐにカァッとなって言った。
「ど、どうして私が」
「今日僕が帰って来る時、出迎えてくれるんでしょ?コスプレして『トリック・オア・トリート!』ってさ」
「~~~~っ!」
「何のコスプレかなぁ?やっぱ王道の魔女かなぁ?ナース姿もいいよねぇ」
「しませんから」
「先に宣言しとくけど、僕、お菓子用意しないから」
と言いながら、五条さんは右腕を私の肩に回そうとするけれど、
「だから、しませんってば」
と、私はスックと立ちあがった。
そのせいで、五条さんの右腕は空振りする。
「あらら」と拍子抜けする五条さんを、見下ろしつつ私は言った。
「それに私、今日は五条さんより帰り遅くなるかもしれないし」
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