第20話 わたしは呪い
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夜闇の中に子どもの声が響く。
「おっかあ・・・おっかあ・・・」
その子どもはまだ10歳にも満たない幼子で、母親らしき女性に縋りつくように抱きついている。
「いやだよぉ・・・!行きたくないよぉ・・・。置いてかないで・・・!」
母親は、抱きつく子どもに両腕を回して抱き返した。
「ごめんね・・・ごめんね・・・」
そう言いながらも、抱き返した両腕を解き両肩に手を置いて引き離しにかかる。
すると、さめざめと泣いていた子どもは声を荒げて泣き叫んだ。
「いやだぁ、いやだぁっ!!」
「許して・・・許して・・・。この村のために・・・お願い・・・!」
縋りつく子ども。
引き離そうとする母。
その背後には、夜の闇に溶け込むように生い茂った雑木林がある。
「この糠田が森のために・・・。お願い・・・!」
「いやだあ・・・っ!!」
母親は子どもを引き離そうとするが、子供は必死に抵抗する。
そのやり取りはしばらく続いたが、やがて母親は諦めたかのように力なくしゃがみ込み、改めて子どもを両手いっぱいに抱きしめた。
「ごめん、ごめんね・・・!」
母親は涙を流しながら言った。
「やっぱり、おまえだけを犠牲になんて出来ない・・・!こんなやり方・・・間違ってる・・・!」
「うっううっ・・・」
「帰ろう・・・私たちの家へ・・・」
「帰るの?『額多之君』のところへ行かなくていいの?」
「うん、うん・・・」
その時だった。
親子の背後にある雑木林から、大きな人影がゆらりと這い出てきたのは。
「帰ろう・・・」
親子はその人影に気づかないまま、手を繋ぎその場を離れようとする、が。
「いやあぁぁぁっ!」
子どもの悲鳴があがり、母親は隣りの子どもを振り返った。
しかし、手を繋いで隣りにいたはずの我が子が消えている。
「え・・・」
母親は戸惑いながら、後ろを振り返った。
そして、すぐ戦慄してその場に凍りつくように立ち尽くす。
地面につく程の長い垂髪。
着崩れてはだけた十二単からのぞく腕と足は蜘蛛のように長く、四つん這いで立っている。
目は鬼のように吊り上がり赤く、口は肉食の獣のように大きく引き裂いており、唇には血の色のような紅を差している。
『額多之君』だ。
母親はすぐに理解した。
こいつが、この村を恐怖で支配するバケモノなのだ。
恐怖のあまりに意識が朦朧とする。
しかし、
「おっかあ!おっかあーっ!」
我が子の叫びで、我に返る。
我が子が、『額多之君』の大きな手に鷲掴みされるように抱きかかえられている。
「あ・・・あぁ・・・」
助けなければ。
そう思うのに、身体が動かない。
「おっかあ!助けて、おっかあ!」
その間に、『額多之君』は子どもを連れて雑木林の中に姿を消した。
やがて、子どもの声も聞こえなくなった。
「うっ、ううっ・・・」
夜の闇と静寂の中にただひとり残された母親は、地面に突っ伏してただ涙するしかなかった。
「ごめんね・・・ごめんね・・・」
ーーーそうして流された幾つもの涙が、土の中に滲み込んで、滲み込んで、滲みこんでいき・・・。
この糠田が森の土地にある呪いが生まれた。
それが、私。
私は、ずっと土の中で眠り続けていた。
いつか、外の世界に出られる日を夢に見ながら。
永遠と思えるような永い永い日々を。
だけど、その日は突然やって来た。
「・・・んー・・・」
目が覚めて、ゆっくりと身体を起こす。
(さっきまで新幹線に乗っていたのに)
また糠田が森に戻ってきている。
(そっか。あのウニ頭のコ・・・伏黒君に祓われちゃったんだ)
それから、私はひとつ腕と背中を伸ばした。
「んーっ!また振り出しかぁ~」
そしておもむろに歩き出し、このちっぽけな村を散歩することにした。
「おっかあ・・・おっかあ・・・」
その子どもはまだ10歳にも満たない幼子で、母親らしき女性に縋りつくように抱きついている。
「いやだよぉ・・・!行きたくないよぉ・・・。置いてかないで・・・!」
母親は、抱きつく子どもに両腕を回して抱き返した。
「ごめんね・・・ごめんね・・・」
そう言いながらも、抱き返した両腕を解き両肩に手を置いて引き離しにかかる。
すると、さめざめと泣いていた子どもは声を荒げて泣き叫んだ。
「いやだぁ、いやだぁっ!!」
「許して・・・許して・・・。この村のために・・・お願い・・・!」
縋りつく子ども。
引き離そうとする母。
その背後には、夜の闇に溶け込むように生い茂った雑木林がある。
「この糠田が森のために・・・。お願い・・・!」
「いやだあ・・・っ!!」
母親は子どもを引き離そうとするが、子供は必死に抵抗する。
そのやり取りはしばらく続いたが、やがて母親は諦めたかのように力なくしゃがみ込み、改めて子どもを両手いっぱいに抱きしめた。
「ごめん、ごめんね・・・!」
母親は涙を流しながら言った。
「やっぱり、おまえだけを犠牲になんて出来ない・・・!こんなやり方・・・間違ってる・・・!」
「うっううっ・・・」
「帰ろう・・・私たちの家へ・・・」
「帰るの?『額多之君』のところへ行かなくていいの?」
「うん、うん・・・」
その時だった。
親子の背後にある雑木林から、大きな人影がゆらりと這い出てきたのは。
「帰ろう・・・」
親子はその人影に気づかないまま、手を繋ぎその場を離れようとする、が。
「いやあぁぁぁっ!」
子どもの悲鳴があがり、母親は隣りの子どもを振り返った。
しかし、手を繋いで隣りにいたはずの我が子が消えている。
「え・・・」
母親は戸惑いながら、後ろを振り返った。
そして、すぐ戦慄してその場に凍りつくように立ち尽くす。
地面につく程の長い垂髪。
着崩れてはだけた十二単からのぞく腕と足は蜘蛛のように長く、四つん這いで立っている。
目は鬼のように吊り上がり赤く、口は肉食の獣のように大きく引き裂いており、唇には血の色のような紅を差している。
『額多之君』だ。
母親はすぐに理解した。
こいつが、この村を恐怖で支配するバケモノなのだ。
恐怖のあまりに意識が朦朧とする。
しかし、
「おっかあ!おっかあーっ!」
我が子の叫びで、我に返る。
我が子が、『額多之君』の大きな手に鷲掴みされるように抱きかかえられている。
「あ・・・あぁ・・・」
助けなければ。
そう思うのに、身体が動かない。
「おっかあ!助けて、おっかあ!」
その間に、『額多之君』は子どもを連れて雑木林の中に姿を消した。
やがて、子どもの声も聞こえなくなった。
「うっ、ううっ・・・」
夜の闇と静寂の中にただひとり残された母親は、地面に突っ伏してただ涙するしかなかった。
「ごめんね・・・ごめんね・・・」
ーーーそうして流された幾つもの涙が、土の中に滲み込んで、滲み込んで、滲みこんでいき・・・。
この糠田が森の土地にある呪いが生まれた。
それが、私。
私は、ずっと土の中で眠り続けていた。
いつか、外の世界に出られる日を夢に見ながら。
永遠と思えるような永い永い日々を。
だけど、その日は突然やって来た。
「・・・んー・・・」
目が覚めて、ゆっくりと身体を起こす。
(さっきまで新幹線に乗っていたのに)
また糠田が森に戻ってきている。
(そっか。あのウニ頭のコ・・・伏黒君に祓われちゃったんだ)
それから、私はひとつ腕と背中を伸ばした。
「んーっ!また振り出しかぁ~」
そしておもむろに歩き出し、このちっぽけな村を散歩することにした。
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