第16話 五条の事情
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キスをした。
そして、手を繋いで京都の街を一緒に歩いた。
「えーっ、それってもう付き合ってるようなもんやん!」
と、モイちゃんが言った。
そう言われて顔を赤らめたのは、
「で、でも、告白されたワケじゃないし・・・。いつもと違う状況で浮かれてただけかもしれないし」
専門学校の友達のひとり、りっちゃんだ。
京都からの帰りの新幹線の中で、りっちゃんが話し始めたのは、以前から片思いをしていた男の子と一緒に現地実習の自由時間を過ごし、そういうことになったということだった。
「浮かれてただけ、なんてノンキ言ってる場合ちゃうで!自分の方からガンガン押していけばええやん。な、鶴來ちゃん?」
「・・・・・・」
「鶴來ちゃん?」
モイちゃんが話を振ってきたけれど、私は自分のことで頭がいっぱいだった。
(・・・浮かれてただけ)
確かにそうかも。
非日常な雰囲気に浮かれて、あんなこと。
「!!」
その瞬間、『あんなこと』を思い出して私の顔は火を噴き出さんばかりに赤くなる。
(わ、私もなんであっさり受け流してんのーっ!?)
やっぱり浮かれてたんだ。
あぁ、浮かれてあんなことを許すなんて一生の不覚!
「あかん、こりゃ聞いてへんわ」
と、モイちゃんは私のことを放ってりっちゃんに話を続けた。
「えぇか?これは最大のチャンスや」
「でも、彼が何考えてるのかわからなくて・・・」
「それをハッキリさせるために問いただすんやん、なんでキスしたんやって!ここで有耶無耶にしたらあかん!」
そんなふたりの横で、
(わからない・・・)
私はひとり唸っていた。
(五条さんが何考えてるのかわからない)
そりゃあ、わかる訳ない。
だって、
『んー・・・、わかんない』
って、本人が言ってるんだもん。
(私にわかる訳ないじゃない!)
と、唸る私の隣でりっちゃんも同じように唸っていた。
「でも、やっぱり本当の気持ちをきくのが怖くて・・・」
「もー!ハッキリさせたいんかそうじゃないんか、どうしたいんや!?」
そうだ。
私はどうしたいっていうの?
(付き合いたい?五条さんと?)
いや、そんなんじゃない。
(私は・・・)
これまで通り、「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」を繰り返して。
一緒にご飯を食べながら、お互いの一日の出来事を報告し合って。
時々は一緒にスウィーツ作りをしたり、お店に買いに行ったりして。
そんな日々をずっと続けていけたら。
「・・・・・・」
いや、ずっとは無理だ。
だって、専門学校を卒業したら私は糠田が森へ帰るんだから。
(それに、五条さんだって)
『アンタは五条家の当主だろう?』
東堂君の言葉を思い出した。
五条さんには、背負うものがあるんだ。
私は、それを一緒に背負うことなんて出来ない。
だけど。
『その首謀者ってのが、僕の親友でさ』
『僕がこの手で処刑したんだ』
『ね、散々だったって言ったでしょ』
そう言って伸ばされた手は、まるで縋り付くかのように思えて、いつまでも握り返していたいと思った。
「・・・・・・」
ふと車窓の外に目を遣ると、いつのまにか景色がネオンに煌めく夜の東京に変わっていた。
ほんの少しの間しか離れてなかったのに、懐かしく感じる。
懐かしいなんて、変なの。
上京したばかりの頃は、見るもの全てが珍しくて非日常だったのに。
(帰ってきたんだ)
今は、この景色が日常になった。
現実に戻って、さっきまでの浮き足だった気持ちは既に落ち着きを取り戻していた。
そして、手を繋いで京都の街を一緒に歩いた。
「えーっ、それってもう付き合ってるようなもんやん!」
と、モイちゃんが言った。
そう言われて顔を赤らめたのは、
「で、でも、告白されたワケじゃないし・・・。いつもと違う状況で浮かれてただけかもしれないし」
専門学校の友達のひとり、りっちゃんだ。
京都からの帰りの新幹線の中で、りっちゃんが話し始めたのは、以前から片思いをしていた男の子と一緒に現地実習の自由時間を過ごし、そういうことになったということだった。
「浮かれてただけ、なんてノンキ言ってる場合ちゃうで!自分の方からガンガン押していけばええやん。な、鶴來ちゃん?」
「・・・・・・」
「鶴來ちゃん?」
モイちゃんが話を振ってきたけれど、私は自分のことで頭がいっぱいだった。
(・・・浮かれてただけ)
確かにそうかも。
非日常な雰囲気に浮かれて、あんなこと。
「!!」
その瞬間、『あんなこと』を思い出して私の顔は火を噴き出さんばかりに赤くなる。
(わ、私もなんであっさり受け流してんのーっ!?)
やっぱり浮かれてたんだ。
あぁ、浮かれてあんなことを許すなんて一生の不覚!
「あかん、こりゃ聞いてへんわ」
と、モイちゃんは私のことを放ってりっちゃんに話を続けた。
「えぇか?これは最大のチャンスや」
「でも、彼が何考えてるのかわからなくて・・・」
「それをハッキリさせるために問いただすんやん、なんでキスしたんやって!ここで有耶無耶にしたらあかん!」
そんなふたりの横で、
(わからない・・・)
私はひとり唸っていた。
(五条さんが何考えてるのかわからない)
そりゃあ、わかる訳ない。
だって、
『んー・・・、わかんない』
って、本人が言ってるんだもん。
(私にわかる訳ないじゃない!)
と、唸る私の隣でりっちゃんも同じように唸っていた。
「でも、やっぱり本当の気持ちをきくのが怖くて・・・」
「もー!ハッキリさせたいんかそうじゃないんか、どうしたいんや!?」
そうだ。
私はどうしたいっていうの?
(付き合いたい?五条さんと?)
いや、そんなんじゃない。
(私は・・・)
これまで通り、「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」を繰り返して。
一緒にご飯を食べながら、お互いの一日の出来事を報告し合って。
時々は一緒にスウィーツ作りをしたり、お店に買いに行ったりして。
そんな日々をずっと続けていけたら。
「・・・・・・」
いや、ずっとは無理だ。
だって、専門学校を卒業したら私は糠田が森へ帰るんだから。
(それに、五条さんだって)
『アンタは五条家の当主だろう?』
東堂君の言葉を思い出した。
五条さんには、背負うものがあるんだ。
私は、それを一緒に背負うことなんて出来ない。
だけど。
『その首謀者ってのが、僕の親友でさ』
『僕がこの手で処刑したんだ』
『ね、散々だったって言ったでしょ』
そう言って伸ばされた手は、まるで縋り付くかのように思えて、いつまでも握り返していたいと思った。
「・・・・・・」
ふと車窓の外に目を遣ると、いつのまにか景色がネオンに煌めく夜の東京に変わっていた。
ほんの少しの間しか離れてなかったのに、懐かしく感じる。
懐かしいなんて、変なの。
上京したばかりの頃は、見るもの全てが珍しくて非日常だったのに。
(帰ってきたんだ)
今は、この景色が日常になった。
現実に戻って、さっきまでの浮き足だった気持ちは既に落ち着きを取り戻していた。
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