月日が流れた二月下旬。



『うへぇ………なにこれ、皆ヒーロー志望…？』



やってきました雄英高校、特待入試。


どうやら一般入試も同時に行うらしく試験会場には人、人、人。


こんなにヒーローになりたい人がいるのか……。


『気色わるっ………。』

そんな言葉を吐いて、会場に足を踏み入れた。





特待入試の試験は筆記と実技、そして面接。


筆記は単純明解で簡単、ミスはほとんど無いはずだ。

面接はまったく問題ない、演じるのは得意だし。

それにくーちゃんに言われて、毎日ヒーローニュースや番組にラジオなど……全部片っ端から見ていった。

嫌いな物を目と耳にして毎日ヒーロー漬け。
ストレスで吐きそうだった。


というか、吐いた。



………今のは忘れてほしい、うん。




それよりも問題は実技試験。
敵としてあちこち裏で動いてきた私が、ヒーローのように振る舞えるのか。

試験中うっかりボロを出すわけにいかないしね、集中しなくちゃ。


考えてるうちに実技試験の要項の説明が始まった。



「今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!」

会場に響くのはプレゼント･マイクの馬鹿デカイ叫び声だけ。
シーン……と静寂が訪れる。

あぁやだやだ、なんでこんなのがヒーローなんだか。


「こいつぁシヴィー!!!受験生のリスナー！実技試験の概要をサクッっとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?」




彼の話によれば、実技は演習場に配置された三種の仮想敵を個性で行動不能にしてポイントを稼ぐ試験。


行動不能ってことは、ぶっ壊しても問題無いわけだ。
いいね、単純で。

入試要項のプリントには四種のロボが記載されている。
あれ？三種って言ってたよね。


「質問よろしいでしょうか!?」


不思議に思っていると一人の受験生が声を張り上げた。
この大勢の中で挙手とかマジかよコイツ。

質問とか言って手を上げたメガネくんはあたしの思っていた疑問をそのまま訊いてくれた。

して、その答えは。


「そいつは０ポイントの仮想敵、言わば避けて通れるお邪魔ギミック！だがそれは一般入試だけだ！」

ん？
一般入試だけ？


「特待入試を受験するリスナーはコイツも行動不能にしてくれ！特別な才能を持つヒーローは壁を難無く越える!!」



なるほど、全てを制する事で全力を示せという事か。



本当にいいね、単純で。


思わずニヒルに笑ってしまう。




なんとも敵に優しい入試じゃないか。