無自覚と嘘


ペラ…ペラ…


あれから10分は経っただろうか…。


本のページのめくれる音しか聞こえていない。


お互い無言のまま本を読み進めているのだ。


何故俺がこんなどうでもいい事を考えているのかというと…



…何故か落ち着かないからだ。


なんというか、そわそわする;



それが何故なのかと考えると、どう考えても原因は俺の隣で黙々と本を読んでいる此奴。


なんと言えばいいのか;まるで、公園のベンチで見ず知らずの奴が俺の隣に座っているような感覚だ…;


奴の事が気になって本の内容が頭に入ってこん;あぁ糞!やっぱり追い出しておけば良かった!


だが約束した手前…無下にするわけにもいかないだろうか…;


そう考えながら奴を視界の端におくと、奴の読んでいる本が目に留まった。



そういえば、此奴は何を読んでいるんだ?



そう考えると、無性に本の内容が気になりだしてくる。


なので俺は、気づかれないように本の内容を見てみることにした。


(えーと…何々…)


何か病気の名称なのか…?何か長ったらしい名前とこれもまた長ったらしい解説が本に載っているのだった。


内容は…文字が細かくそれに多く読む気にもならない。よく此奴はこんなもの読めるな;


 

その時…








コテン



「!!!?;;」



急に俺の肘辺りにきた軽い衝撃。そして張り付くような重みと温かみ…。



これは…まさか…;



そう思い俺は恐る恐る衝撃の来た方…、俺の隣に座っている奴の方へと目を向ける…



 



「…スゥ…スゥ…」


「!!!!?」



ね、寝てやがるーーーーーー!!!?;



俺の隣で読んでいたはずのマリオが何故か寝ている。そして何故か俺の肘あたりに寄りかかっているのだ。


い、いつからだ!?いつから寝てた!?;


内心パニック状態だ;
 


「お、おい、マリ…;」


俺は、奴を起こそうと声を掛けようとしたその時…



…ずるっ


「!?;」



声を掛ける際に体勢を変えた結果、奴は寄りかかっていた俺の腕からずり落ちた。


そしてずり落ちた先は…



ポフ


「っぐ…!!;」
(な、なんで…)



なんで俺の膝の上なんだあああああああああ!!?;


現在マリオの頭の位置はガノンの膝の上。つまり膝枕←


ていうかこれだけの衝撃にも関わらず何故起きない!?その前に何故眠いと分かっているのにここに来るんだ!?自分の部屋で寝ればいいだろうが!!



頭の中ではもうツッコミのオンパレードだ。


あぁもう畜生!早く起こそう!



俺はそう意気込み、奴の顔を覗きこんだ。







…覗きこむまでは今までの俺でいれたのかもしれない。覗きこむまでは。




「…スゥ……スゥ……」


「…っ…!//;」



奴の寝顔はそう、まるで子どもだ。無防備で、エネルギーの使い方が分からず電池が切れたように寝る子のようにただただ純粋に眠りに落ちている。


そんな奴を…俺は不覚にも…かわいいと思ってしまった…。


この感覚は何なんだ…?;此奴に対するこの感情は一体何なんだ?;


(ま、待て…、落ち着け…!!//;)


パシパシパシ!


とにかく訳が分からなくなった頭を何とかするために、持っていた本で頭を叩いてみる。


こんな訳の分からない所にこんな訳の分からない身体でいて、頭まで訳が分からなくなって堪るか!


そうやってやること数分…




「…はぁ…;;」


ようやく俺は落ち着きを取り戻しつつあった。


あれから此奴に抱いてしまった感情のことを考えた結果、"子ども故の可愛さ"と等しいものだということに結論付けた。


そう、無邪気に眠る子どものように。子どもは可愛い、それと一緒だ。きっとそうだ。…そうとしか納得がいかない。



俺が一人で勝手に慌てて、一人で勝手に落ち着き、一人で勝手に納得している中、マリオは相変わらず俺の膝を枕替わりにして眠りこけている。


こんなに騒いでいるのに起きないとは…。


まぁ、起きない理由はなんとなく分かる。乱闘以外に重役や事務まで、色々な仕事をマスターに押し付けられているからな。



…ほんとに此奴は…、雑務なら下に任せればいいものを…。


此奴はいつもそうだ。リーダーだからといって一人で背負い過ぎだ、だからこんなになるんだ。


同じ上に立つ者として、ここまで考えが違うのかと考えさせられる。



…だが



「はぁ…、仕方がない…」


俺は手に持っていた本を先程読んでいたページに開き、続きから読み始めた。





まだ寝かしておいてやる。

…俺がこの本を読み終わるまでは。


(まぁ、夕方までには読み終わるだろう)


そう思いつつ、ふと下で眠る奴の顔を見る。


「…」


相変わらず深い眠りに落ちている。まるで電池が切れたかのように。


今はまだ、眠らせておいてやろう。


子どものような、そして誰よりも働いている我がスマメンのリーダーに敬意を表し。



夕刻にはまだまだ、日は高い。



おわり


次、あとがきとおまけ
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