はじめのキッス〈後編〉
「⁉」
いきなりアイクが僕の話を遮るように叫んだ。
更に驚き固まっている僕の両肩をガシッと掴んできた。僕はますます驚き肩がビクッと跳ね上がる。
「俺は…」
アイクは僕の目線に合わせるよう、片膝を着き僕の目を見据えた。
まるで怒っているような、悲しんでいるような、なんとも言い難い複雑な表情をしていた。
「アンタのことが心配だから……この仕事が、アンタがこんなにしんどそうになるまでやることだとは、俺には思えない」
「…」
アイクがこんなにも僕のことを心配してくれていたなんて…。
嬉しいような、新人に心配されるなんてリーダーとしてなんとも情け無いような…、そんな感情が入り混じりなんとも言えない心情だ。
「だから、もっと周りを頼ってくれ。もっと自分を大事にしてくれ。無理ならせめて、俺にも仕事をくれないか?」
「ええ⁉」
思ってもみない提案だ。まさか彼の口からそんな言葉が出るとは思わず驚きの声が出る。
「ま、待ってアイク!そうやって僕のことを心配してくれるのは嬉しいけどそこまでしなくても大丈夫だから!」
「そんな訳ないだろ!今の仕事量でここまで追い込まれてるじゃないか!」
「でも君にはこんな仕事よりも自分の目標に向かって頑張って欲しいんだよ!」
「だからってアンタが犠牲になることなんてないじゃないか!」
「でも僕はリーダーだ!ここの環境を君や皆にとってより良いものにしないといけない!」
「確かにそうだ…だがその中にアンタも当てはまるはずだ!アンタにとっても、より良い環境でいてほしいし乱闘してもらいたい!」
「⁉」
アイク…、そこまで僕のことを…。
でも、何故こんなにも気にかけてくれるのだろうか…?
「アイク…何故僕のことをそんなに心配してくれるんだい?」
「それは、…アンタの笑顔が好きだから…アンタには笑顔でいてほしいんだ」
そう言うとアイクは僕への目線を逸らした。彼の顔は僕が見ても分かる程赤かった。
確かに、赤面する気持ちは分かる。そんな照れ臭いこと言ったら、僕だって赤面する筈だ。
だって今現在、その言葉を聞いてしまった僕の顔も火がついたように熱いんだ。
「…あ、ありがとう…」
あぁ、恥ずかしい。語尾に行くにつれ消え入りそうな声になっていく…。
そんな中
「んんっ!!」
「「!?」」
お互い赤面している中の響いた咳払いの声に僕等は思わずビクッとしてしまう。そして慌てて声のした方に振り向くと、そこには書類を抱えたフォックスが立っていたのだった。
「お取り込み中のとこ悪いんだがいいか?」
そういえば僕は今アイクに肩を掴まれていたんだった。
僕とアイクはハッと気付き、慌てて距離を取った。
「マリオ、ちょっとこの書類を確認してほしい。大丈夫そうだったらマスターに渡してくれ」
「う、うん」
「それでアイク」
「⁉」
「ちょっと話がある。ついてきてもらえるか?」
そう言うフォックスはとてもにこやかな顔をしていた。でも、何故だろうか、何故か彼の背後にはとてつもない威圧感があるような、彼の言葉に逆らってはいけないような気がしてならない。
「わ、分かった」
アイクもそう感じていたのかもしれない。彼は若干ビクビクしながら、僕に書類を渡し図書室を出て行くフォックスの後を追っていった。
パタンと扉が閉まった音がし、1人残された僕は、「はぁ…」とその場に座り込み、片手で顔を覆った。
(どうしよう…。頭が追いつかない…)
思い出すのは、先程のアイクとのやり取り…
物凄く心配されて、そして物凄く照れ臭い、いやもう恥ずかしいことを言われて、もう頭が、胸が一杯なんだ。
(こんなんじゃ、仕事になんないよ…)
そう思い、僕は誰にでもなく更に顔を手で隠す。
この燃えるような顔の火照りは、暫く消えてはくれなかった。
おわり
次、あとがきとおまけ
いきなりアイクが僕の話を遮るように叫んだ。
更に驚き固まっている僕の両肩をガシッと掴んできた。僕はますます驚き肩がビクッと跳ね上がる。
「俺は…」
アイクは僕の目線に合わせるよう、片膝を着き僕の目を見据えた。
まるで怒っているような、悲しんでいるような、なんとも言い難い複雑な表情をしていた。
「アンタのことが心配だから……この仕事が、アンタがこんなにしんどそうになるまでやることだとは、俺には思えない」
「…」
アイクがこんなにも僕のことを心配してくれていたなんて…。
嬉しいような、新人に心配されるなんてリーダーとしてなんとも情け無いような…、そんな感情が入り混じりなんとも言えない心情だ。
「だから、もっと周りを頼ってくれ。もっと自分を大事にしてくれ。無理ならせめて、俺にも仕事をくれないか?」
「ええ⁉」
思ってもみない提案だ。まさか彼の口からそんな言葉が出るとは思わず驚きの声が出る。
「ま、待ってアイク!そうやって僕のことを心配してくれるのは嬉しいけどそこまでしなくても大丈夫だから!」
「そんな訳ないだろ!今の仕事量でここまで追い込まれてるじゃないか!」
「でも君にはこんな仕事よりも自分の目標に向かって頑張って欲しいんだよ!」
「だからってアンタが犠牲になることなんてないじゃないか!」
「でも僕はリーダーだ!ここの環境を君や皆にとってより良いものにしないといけない!」
「確かにそうだ…だがその中にアンタも当てはまるはずだ!アンタにとっても、より良い環境でいてほしいし乱闘してもらいたい!」
「⁉」
アイク…、そこまで僕のことを…。
でも、何故こんなにも気にかけてくれるのだろうか…?
「アイク…何故僕のことをそんなに心配してくれるんだい?」
「それは、…アンタの笑顔が好きだから…アンタには笑顔でいてほしいんだ」
そう言うとアイクは僕への目線を逸らした。彼の顔は僕が見ても分かる程赤かった。
確かに、赤面する気持ちは分かる。そんな照れ臭いこと言ったら、僕だって赤面する筈だ。
だって今現在、その言葉を聞いてしまった僕の顔も火がついたように熱いんだ。
「…あ、ありがとう…」
あぁ、恥ずかしい。語尾に行くにつれ消え入りそうな声になっていく…。
そんな中
「んんっ!!」
「「!?」」
お互い赤面している中の響いた咳払いの声に僕等は思わずビクッとしてしまう。そして慌てて声のした方に振り向くと、そこには書類を抱えたフォックスが立っていたのだった。
「お取り込み中のとこ悪いんだがいいか?」
そういえば僕は今アイクに肩を掴まれていたんだった。
僕とアイクはハッと気付き、慌てて距離を取った。
「マリオ、ちょっとこの書類を確認してほしい。大丈夫そうだったらマスターに渡してくれ」
「う、うん」
「それでアイク」
「⁉」
「ちょっと話がある。ついてきてもらえるか?」
そう言うフォックスはとてもにこやかな顔をしていた。でも、何故だろうか、何故か彼の背後にはとてつもない威圧感があるような、彼の言葉に逆らってはいけないような気がしてならない。
「わ、分かった」
アイクもそう感じていたのかもしれない。彼は若干ビクビクしながら、僕に書類を渡し図書室を出て行くフォックスの後を追っていった。
パタンと扉が閉まった音がし、1人残された僕は、「はぁ…」とその場に座り込み、片手で顔を覆った。
(どうしよう…。頭が追いつかない…)
思い出すのは、先程のアイクとのやり取り…
物凄く心配されて、そして物凄く照れ臭い、いやもう恥ずかしいことを言われて、もう頭が、胸が一杯なんだ。
(こんなんじゃ、仕事になんないよ…)
そう思い、僕は誰にでもなく更に顔を手で隠す。
この燃えるような顔の火照りは、暫く消えてはくれなかった。
おわり
次、あとがきとおまけ