はじめのキッス〈後編〉

そして今に至る。


僕は未だに思考が止まっている頭を何とかしようと、顔をブンブンと横に振り、両手で未だに熱い頬をペシペシと叩いた。

(ま、まずは落ち着かなきゃ。
そこから、なんで彼が来たのか考えよう)


ふと机を見ると、積み重なった書類の1番上に僕が用意してない書類を見つけた。

丁寧に付箋も付いていて、そこには『確認頼む』とフォックスの殴り書きのような特徴的な字が書いてあった。

(成る程、アイクはこの書類を届けに来てくれたのかな…?)


来た理由は分かったが、何故彼は僕にキスをしたのかという最大の謎は残ったままだ。


「何でなんだろう…?」


小首を傾げながらあれこれ考えてみる。

悪戯?

それとも起こそうとした?

寝首を掻けるほど隙を見せていると教えてくれたとか?


後は…試し行動?



説明しよう!

試し行動とは、大まかに言うと子ども達が親や教師などの大人に対して困らせるような行動をとり自分のことを受け入れてくれるのか試すことを言うぞ!


どれにしろ、僕は彼に試されているのか…?


「参ったな…」


彼は己の強さの為にここに入ったって言ってたから、さっきのは狸寝入りだったけど、こんな居眠りしてる所を見せてしまったから幻滅しちゃったのかも。

(きっとアイクは僕がリーダーとして相応しいのか試しているのかもしれない…!)


きっと僕が起きていると知った上であんな行動に出たのかも。
そしてリーダーだったらどんな対応をするのか見たかったとかなのかもしれない。

「これからは、アイクに認めてもらえるように頑張らないとね」

そう意気込んだ直後、僕は早くも壁にぶつかることになった。


「…そういえば…


どうやったら彼にリーダーとして認めてもらえるんだろうか…?」


威厳を示すとか?

でも、どうやって?


打開案が見つからないまま考え込む事約一時間。

どう考えてもアイクが認めてくれるような考えが浮かばずにいた。


「…駄目だ。このままじゃ埒があかない」

まだ手を付けてない書類もあるのに。ずっとこのことで時間を費やす訳にはいかなかった。

(明日誰かに相談してみよう)

そう思いながら、僕はアイクが持ってきたであろう書類に目を通し始めたのだった。
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