寒空の下。夕焼けに照らされながら、西風に急かされるように速足で家路についている影が1つあった。

その影は途中のコンビニで買ったであろうものが入っているビニール袋を大事そうに抱え、自分の家に帰宅したのだった。


ガチャ


「ただいまルイージ」

「お帰り兄さん!…何か買ってきたの?」

「あぁ!今日は大分冷え込んできたからねぇ…」


この家の主であるマリオはそう言いながらガサガサとビニール袋からついさっき買ったばかりのものを取り出した。


「じゃーん!おでん買ってきたよ!」

そう言った兄の顔は嬉しそうな表情。彼の持っているおでんは買ったばかりな為かほかほかと美味しそうな湯気が立ち上っている。

「あー…、実はね兄さん」

「?」

そういう弟のルイージは嬉しさというよりも申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
マリオは何故弟がそんな表情をしているのか分からなかったが、その後の言葉を聞いてすぐに納得できたのだった。


「今日冷え込んでたからさ、僕も夕飯で作ってたんだよ…その…おでん…」

「あらら…」


ルイージの視線の先にはおでんが入っているであろう鍋がコンロの火にかけてあるのが見えた。


「…これからご飯を買ってくる時は連絡するね;」

「うん;」



食べたくなるものも一緒なのは双子故か。



≪鍋≫
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