花火
~スマブラ館屋根裏部屋~
ヒュー…
ドーン!!
遠くから聞こえる花火の音…。
一瞬だけ咲く淡い光に照らされながら、彼はこの部屋から出ようとする僕の腕を掴んだ。
「なぁマリオ…、暫く…2人で見ていないか?」
「…え?」
そう言われた時、僕はその手を振り払うことが出来なかった。
≪花火≫
1、2時間前。
今日は年に1度の花火大会の日。バーベキューをする為の木炭を探しに、僕は倉庫代わりとなっているこの屋根裏部屋に来ていた。
随分奥へ仕舞い込んでいたらしく、無事見つけ出したのは良かったものの、部屋は散らかり放題…。
流石にこのままではいけないと思い、丁度僕を呼びに来てくれた子ども達にこの部屋の荷物の整頓をしてから行くと告げ、木炭を託した。
荷物を整頓し始めてから暫くしてやってきたのがクッパだった。
何故ここに来たのか分からなかったけれど、柄にも無く整頓を手伝ってくれたんだ。
意外な事もあるもんだと感心していた時…。
ヒュー…
ドーン!!
外ではもう、花火が夜空に上がり始めていた。
整頓もだいぶ終わっていたからクッパにそろそろ戻ろうと告げ、この部屋を出ようとした時…。
彼はガシっと僕の腕を掴んだんだ…。
「…」
あの台詞の後から彼は何も言わず、熱い視線で僕を見つめ、より一層強く僕の腕を掴んで離さない。
だがその表情はどこか切なげで、いつもの傲慢さが嘘のようだった。
いつもらしくない彼に、僕にも若干戸惑いが生じる。
「どうしたのクッパ…?;」
「……すまんな…;」
「!?;」
(い、いつものクッパじゃない…!?;)
長い沈黙の後に訪れた突然の謝罪に半ばパニックだ。
きっと明日は雪が降るのではないかとも思ってしまう。
「ほ、本当にどうしたの!?何か悪いものでも食べた!?;」
「何故そうなるのだ;」
「え?他に理由があるのかい?;」
「当たり前なのだ!;」
我輩をなんだと思っているのだ!?と付け加えながら、クッパは呆れたようにそっぽを向いた。
それじゃあ…
「他の理由って何…?」
ドーンドーン
花火が忙しなく夜空へ上がる。天窓から漏れる淡い光に照らされた彼の表情は、またさっきの切ない表情に戻っていた。
あぁ、またその顔…
その顔は、僕を不安にさせる…
「それは…言えん…」
「…;」
「だが…」
クッパは元々握っていた僕の腕を引っ張った。
突然の事に僕は対処が間に合わず、足の踏ん張りが効くことなく体勢が崩れた。
「うわっ;」
がしっ!!
床に倒れることを想定し僕は咄嗟に目を瞑ったが、想定していた痛みは来ることなく、代わりに何かに包み込まれるような感覚が生じていた。
「へ?;」
周りを確かめる為目を開けると、そこはクッパのお腹の部分(甲羅って言った方がいいのかな?)が見えた。この時に初めて僕はクッパに抱きしめられている事を理解した。
それと同時に、驚きと恥ずかしさが身体から込み上げて、頬が熱くなった…。
「く、クッパ…どうしたのいきなり…?//;」
「すまない…暫く、…このままでいさせてくれ…」
「え…?」
僕は驚き咄嗟にクッパの顔を見た。クッパも僕の方を見ていたようで、目と目が合った。彼は未だにあの表情のまま…。
「ぁ…;」
僕はその目と表情を見て反射的にのけ反ろうとしていた…が、クッパは僕を強く抱きしめていて僕と彼との距離は変わっていない。
「クッ…」
「マリオ」
「…?;」
「…お願いだ…」
「…!?//;」
動揺から、離してもらえるよう頼もうとした矢先のその言葉…。
駄目だ…。
そんな表情で、お願いまでされてしまったら…
もう僕は…ここから離れられないじゃないか…。
…傍にいてあげたくなっちゃうじゃないか。
「…//」
「?」
「…分かった…、このままで、いてあげる…//;」
そう言い僕は彼からの目線を外し、恥ずかしさから彼の胸へ赤く火照った顔を埋めた。
彼はその行動に応え、僕の頭をそっと撫でる。何故かその手つきがとても優しく、僕の不安な心を和らげる。
あぁ、きっと彼は…不安だったんだな…。
だから僕も不安になったんだ…。何となく、彼に撫でられながらぼんやりとそう思った。
なら、まだいてあげよう。彼の不安が取り除けるまで。時間の許す限り…
ドーンドンドドーン
花火は激しくも儚く夜空に咲き誇る。
その一瞬の淡い光のように、この時間もまた優しくも儚い。
おわり
次、あとがきとおまけ
ヒュー…
ドーン!!
遠くから聞こえる花火の音…。
一瞬だけ咲く淡い光に照らされながら、彼はこの部屋から出ようとする僕の腕を掴んだ。
「なぁマリオ…、暫く…2人で見ていないか?」
「…え?」
そう言われた時、僕はその手を振り払うことが出来なかった。
≪花火≫
1、2時間前。
今日は年に1度の花火大会の日。バーベキューをする為の木炭を探しに、僕は倉庫代わりとなっているこの屋根裏部屋に来ていた。
随分奥へ仕舞い込んでいたらしく、無事見つけ出したのは良かったものの、部屋は散らかり放題…。
流石にこのままではいけないと思い、丁度僕を呼びに来てくれた子ども達にこの部屋の荷物の整頓をしてから行くと告げ、木炭を託した。
荷物を整頓し始めてから暫くしてやってきたのがクッパだった。
何故ここに来たのか分からなかったけれど、柄にも無く整頓を手伝ってくれたんだ。
意外な事もあるもんだと感心していた時…。
ヒュー…
ドーン!!
外ではもう、花火が夜空に上がり始めていた。
整頓もだいぶ終わっていたからクッパにそろそろ戻ろうと告げ、この部屋を出ようとした時…。
彼はガシっと僕の腕を掴んだんだ…。
「…」
あの台詞の後から彼は何も言わず、熱い視線で僕を見つめ、より一層強く僕の腕を掴んで離さない。
だがその表情はどこか切なげで、いつもの傲慢さが嘘のようだった。
いつもらしくない彼に、僕にも若干戸惑いが生じる。
「どうしたのクッパ…?;」
「……すまんな…;」
「!?;」
(い、いつものクッパじゃない…!?;)
長い沈黙の後に訪れた突然の謝罪に半ばパニックだ。
きっと明日は雪が降るのではないかとも思ってしまう。
「ほ、本当にどうしたの!?何か悪いものでも食べた!?;」
「何故そうなるのだ;」
「え?他に理由があるのかい?;」
「当たり前なのだ!;」
我輩をなんだと思っているのだ!?と付け加えながら、クッパは呆れたようにそっぽを向いた。
それじゃあ…
「他の理由って何…?」
ドーンドーン
花火が忙しなく夜空へ上がる。天窓から漏れる淡い光に照らされた彼の表情は、またさっきの切ない表情に戻っていた。
あぁ、またその顔…
その顔は、僕を不安にさせる…
「それは…言えん…」
「…;」
「だが…」
クッパは元々握っていた僕の腕を引っ張った。
突然の事に僕は対処が間に合わず、足の踏ん張りが効くことなく体勢が崩れた。
「うわっ;」
がしっ!!
床に倒れることを想定し僕は咄嗟に目を瞑ったが、想定していた痛みは来ることなく、代わりに何かに包み込まれるような感覚が生じていた。
「へ?;」
周りを確かめる為目を開けると、そこはクッパのお腹の部分(甲羅って言った方がいいのかな?)が見えた。この時に初めて僕はクッパに抱きしめられている事を理解した。
それと同時に、驚きと恥ずかしさが身体から込み上げて、頬が熱くなった…。
「く、クッパ…どうしたのいきなり…?//;」
「すまない…暫く、…このままでいさせてくれ…」
「え…?」
僕は驚き咄嗟にクッパの顔を見た。クッパも僕の方を見ていたようで、目と目が合った。彼は未だにあの表情のまま…。
「ぁ…;」
僕はその目と表情を見て反射的にのけ反ろうとしていた…が、クッパは僕を強く抱きしめていて僕と彼との距離は変わっていない。
「クッ…」
「マリオ」
「…?;」
「…お願いだ…」
「…!?//;」
動揺から、離してもらえるよう頼もうとした矢先のその言葉…。
駄目だ…。
そんな表情で、お願いまでされてしまったら…
もう僕は…ここから離れられないじゃないか…。
…傍にいてあげたくなっちゃうじゃないか。
「…//」
「?」
「…分かった…、このままで、いてあげる…//;」
そう言い僕は彼からの目線を外し、恥ずかしさから彼の胸へ赤く火照った顔を埋めた。
彼はその行動に応え、僕の頭をそっと撫でる。何故かその手つきがとても優しく、僕の不安な心を和らげる。
あぁ、きっと彼は…不安だったんだな…。
だから僕も不安になったんだ…。何となく、彼に撫でられながらぼんやりとそう思った。
なら、まだいてあげよう。彼の不安が取り除けるまで。時間の許す限り…
ドーンドンドドーン
花火は激しくも儚く夜空に咲き誇る。
その一瞬の淡い光のように、この時間もまた優しくも儚い。
おわり
次、あとがきとおまけ