お薬

~ピーチ城~

現在の時刻は既に18時を過ぎ、19時はおろかもうすぐ20時になろうとしていた。

正座しているピーチとマリオが見つめる先には、腕を組み仁王立ちをしているきのじぃの姿。先程までギックリ腰で通院していたなんて思えない姿である。

「姫!あんな大捕物をやっていた真ん中で何をしていたのですじゃ!病院から戻ってみれば姫が居なくなって爺はっ!爺はぁっ!もう心配で心配で腰の爆弾がまた弾けそうに!」

きのじぃが言った通り、あの後沢山の警察が倉庫内に押し寄せ、ノビていた盗賊団は全員御用となった。界隈では有名な盗賊団であったこと、盗品の国外への流出を阻止できたことにより、一夜にして国中が驚く大事件となってしまったのだった。
きっと何処ぞの情報屋が2人を心配して警察に通報でもしたのだろう。
そんな渦中にいた2人は当然警察へ事情を話す事になりこんな時間になってしまったのである。

姫の行方の探索をしている中の警察からの話で、心配からの怒りやら泣きやら入ったきのじぃの質問に、ピーチは悪びれることも無く堂々としていた。

「マリオを助けに行ってたのよ」

「マリオ殿!それは本当なのですかな⁉」

「は、はい…。それは本当です…」

「な、な、なんですとーー!!!?な、何故なのですか!?貴方程の方が盗賊団相手に姫君の力を借りなければならなかったとでもいうのですか!!?」

「い、いや、それは…」

現在マリオはなんとか成長薬を見つけだし元の姿に戻っていた(元に戻る前に警察が突入してきた為倉庫内の物を勝手に触ることが出来なくなり、元に戻る為に警察に全て事情を話さなければならなくなってしまったのだ。当然姫の事もバレてしまい、お城に『現場に姫君がいる』という警察から連絡が入ってしまったという経緯もあるぞ!)。
薬のせいで小さくなっていただなんて、今の状態のきのじいに言ってはたして信じてもらえるのだろうか?
その様な考えもあり、どう説明すれば良いのか困っているマリオだった。

そんな中…

「確かに今のマリオだったら私の力なんていらなかったわ」

「「⁉」」

ピーチが一言大きめの声でその言葉を発したのだ。いきなりの言葉にマリオもきのじぃも、そして遠くで見ていたキノピコを始めとしたお城の者達も驚きピーチを見た。

「でも今日は、私が用意した薬のせいで"可愛いマリくん"になってしまったのよ!だから今日一日は私がマリくんを守るって決めたの!」



・・・。



「ま、マリくん…?」


きのじぃからの戸惑いの発言を皮切りに、周りにいたキノピオ達から戸惑いと疑問の声がヒソヒソと上がり始めた。


「マリくんって…?」

「マリオさんのことだよな…?」

「え、可愛いってどういうこと…?」

「さぁ…?」

ヒソヒソ…


「!!!?」
(ああああああ!!やめてぇえええ!!!)

こんな恥ずかしい状況にマリオは心の中で叫ぶしかなかった!
そしてピーチはそれに追い討ちをかけていく。

「そうなの!ちっちゃくなっちゃって本当に可愛いかったのよ!街中歩くだけでも危なっかしくて手を繋いであげたりね!マリくんの手の届かない所があったからたかいたかいしてあげてね!それから…」

「待って…姫…お願い…待って…!」
(ああああああああああああああああ!!!!)


マリオにとっては情けなくて恥ずかしい情報をこれでもかという程周囲に開示しているのに対し、マリオは抗議するも夢中に話す姫には届かず、もう恥ずかしくて真っ赤な顔を両手で隠す事しかできなかったのである。


その後ピーチの情熱的な説明のお陰か、きのじぃの説教もすんなり終わり、帰り際…

「その、今日は大変だったのじゃな…。悪かったの…心中察しまするぞ…」

そうきのじぃに言われ、ポンと肩に手を置かれたマリオなのだった。


そして、大事件の中心に姫君と小さくなったマリオがいたという情報が警察からマスコミにバレ、マリオの家に沢山のマスコミが押し寄せ、翌日の新聞とニュースに載ることになるまで後数時間←


マリオの災難は続く(笑)


おわり


次、あとがきとおまけ
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