お薬
~港街倉庫~
(うーん、困ったな…)
港の片隅にある古くなり使われなくなった倉庫内には沢山の木箱や段ボール、小さなコンテナが積み上げられていた。
そして目の前には忙しなく動いている、目と鼻と口だけが空いてる目隠し帽を被り、物騒なものを携帯している怪しい奴等。
そんな如何にも危ない倉庫の中で、1人ロープに縛られ椅子に座らされているマリオの姿があった。
~15分程前~
ワープ土管で移動したマリオは早速多くの積荷や怪しい集団が入っていく倉庫を見つけることができたのだった。
(さて、どうやって中に入ろうかな…)
現在マリオは倉庫から少し離れた建物の影に隠れ様子を伺っていた。
倉庫の周りを見渡すと、見張りをしている人影がいくつも見えた。正面突破は難しそうである。
(困ったな…、どこか手薄な所はないか…?)
キョロキョロと目を凝らして探してみると、屋根の方からなら侵入が可能そうなことに気が付いた。
(あ、屋根の上からなら行けそうかも!でも、問題なのは今の状態の身体能力だよね)
そう不安に思いつつも、マリオは軽くジャンプをした。
(…あ、意外といけそうかも)
大人の時と比べればパワーやジャンプ力は劣るものの、身軽さが上がったのかそれなりに高くジャンプが出来るようだ。
マリオは早速壁キックで登り、屋根伝いで倉庫の屋根に降り立った。
(随分古そうだな…。所々穴が空いてるぞ…)
マリオは空いてる小さい穴から中を覗くと、件の盗賊団と思しき集団が沢山の積荷を倉庫の中に搬入しているのが見えた。
(ビンゴだね…さてと…薬は何処かな?)
そう思いキョロキョロと見渡してみる。すると…
ガチャンガチャン…!
(?)
入り口から更に積荷が運ばれてきたのだ。その中にガラスが擦り合いぶつかる音がする木箱が1つ。
「おい手荒に運ぶんじゃねぇ!そん中は貴重な魔法薬が入ってんだぞ!」
「へ、へい、すんません…何せガラスで重くて…」
「ゴタゴタ言うんじゃねぇ!もうその薬には買い手がいるんだ!割ったらタダじゃ済まさんからな!」
「へ、へい!!」
「⁉」
(魔法薬!きっとあの箱の中に成長薬が…!)
ずっと探していた魔法薬はもう目と鼻の先だ。
そう思った矢先のことである…
バキバキバキバキ!!
「!?」
古くなった屋根はとうとう重みに耐え切れず大きな音を立てて崩れ落ちてしまった!
その中心にいたマリオは為す術も無く下に落ちてしまったのだった。
無事着地をしたものの盗賊団に取り囲まれ、ご覧の有様なのである。
(うぅ、我ながら情けない…)
そう悔いるマリオの目の前には何人もの盗賊団おり、そいつらが話しかけてきた。
「おいどうすんだよこのガキ!上から落っこちてきたぞ⁉ 」
「おいガキ、上で何してた。場合によっちゃガキだろうが生かして返す訳にはいかねぇ」
「…」
(フードとマスクしてて良かったな…表情も見られないし。とりあえず、言う訳にはいかないし、黙っとこ)
「ビビって声も出ないってか?」
「ションベンはすんじゃねぇぞ?ガハハハ!」
「お前の他に大人や仲間はいないのか?」
「…」ブンブン
マリオは首を横に振った。
「本当に1人で屋根の上にいたって言うのか?嘘臭ぇなぁ」
「まぁ、こんなガキ1人じゃ俺たちの邪魔なんてできねぇよ。それよりも、こいつの親から身代金を取った方が得ってもんよ!」
「おお!成程!」
「という訳で、おい小僧、お前の名前と親のことを吐いてもらうぜ」
そう言う男の手にはナイフが握られていた。男はナイフをマリオの顔に近づけ、今にも切ってしまいそうだ。
「ちゃんと言える口があるだろ?そうしなきゃ…お前の耳が無くなっちゃうぜ?」
「…」
(まずいな…)
まさか薬を飲んで子どもになってますって言っても信じて貰えるとは思えないし、下手に嘘をついてもボロが出る。
こんな身体で沢山の盗賊団に囲まれてる中逃げ出すことも難しい。
簡単に口に出せない状況に、マリオは冷や汗をかいていた。
「おい、いつまで黙ってんだ糞ガキが、そのフード取ってオメェの耳スパッて切りおとしてやろうかあ!」
痺れを切らした男は持っていたナイフを振り上げ、反対の手でマリオのフードを取ろうした。
その時である
ドカーーーン!!