お薬

~ワルイージの家~


「成る程な、ちっちゃくなっちまった経緯は大体分かった。だが…」

そう言いワルイージは話をしてくれた2人を見る。

「中々面白いことになってんな」

「全然面白くないからっ!」

マリオの悲鳴に近いツッコミがとぶ。

「いやぁ、ただでさえ珍客の姫がいて、オマケにアンタ等がそんな格好で来るもんだからな」

そう言う彼の目の前には、ドレス姿から打って変わりワンピースにトレンチコート、頭にスカーフを巻きサングラスをつけお忍び姿のピーチ。そして彼女の膝の上には小さくなり、まるで幼稚園児になってしまったマリオ。
そんなマリオもいつもの服ではなく青いキャップに灰色パーカー、黒ズボンにマスク着用という普段とは全く違う印象の服装である。

「なぁ、写真撮っていいか?」

「やだよ!駄目に決まってるでしょ!」

「まぁいいじゃないマリくん!記念に一枚撮ってもらいましょうよ!」

「マリくん…?」

「ほらぁ、お姫様もそう言ってんだからさ」

「絶っ対にいやですっ!それに君のことだから絶対その写真をネタに色々揺する気でしょ!」

「ケッ、バレてたか。しょうがねぇなぁ」

「えー!撮らないのー?折角の記念に撮りたかったのにー」

そう残念がる姫を他所にワルイージは話を続けた。

「で?俺に用があるってことは何かしらの情報が欲しいってことなんだろ?」

ワルイージは副業で情報屋をしている。何故だか確かな情報が多いのでマリオはよく利用していた。
ワルイージの憶測は間違っていなかったようで、マリオはコクリと頷いた。

「そうなんだよ。とある窃盗団のことについて教えてほしいんだ」

「窃盗団?知りたいのは元に戻る薬じゃないのか?」

「いや、実は…」


~約1時間半程前~


バタン!!

2人の叫び声を聞きつけ、慌てた様子のキノピコがバルコニーの扉を勢いよく開け入ってきた。


「姫様!どうしましたか!!?」

「き、キノピコ!どうしよう!マリオが!」

「へ?…ってマリオさん⁉なんで小さくなってるんですか⁉」

「うーん、それは僕が1番知りたいです」

「そ、そうですよね、すみません…っ」

マリオの言葉にハッとしたように謝るキノピコの横でピーチは項垂れ溜息を吐いた。

「はぁ、まさかこんなことになるなんて…」



・・・。



「こんなこと…?」

「「ぁ」」

「姫、ちょっと、事情を伺ってもよろしいでしょうか?」

そう言うマリオは笑っていたが、小さくなってしまったのにもかかわらず、その背後にある威圧感の半端なさに、2人は観念し作戦のことを話すことになってしまったのだった。


事情説明後。マリオは手を頭にあて溜息をついた。

「はぁ、成程…、色々言いたいこともありますが、とりあえずミステールさんに薬のことについて聞きましょう」

「そ、そうよね!それがいいわ!とりあえず電話してみるわね」

ピーチは携帯電話を取り出しミステールに連絡を取ることにした。電話に出たミステールに起きた事を説明していく。


『ああん♡ごめんなさいねピーチ姫、どうやら貴女には惚れ薬じゃなくて若返り薬を渡しちゃったみたいなの』

「えぇ!?だからマリオがちっちゃくなっちゃったのね!どうしたらマリオを元に戻すことができるの⁉」

『時間が経てば元に戻るはずよ♡そうねぇ、マリオちゃんが服薬した量からすると、1ヵ月程はもつかしら』

「い、1ヶ月!?」

「ええええ!?そ、そんな悠長に待ってられませんよ!明日も仕事なんですからっ!」

(あの量で1ヶ月かぁ、かなり強力よね。ミステールさんは一体何歳なんだろう?)←

人知れず考え込むキノピコを他所に話は続く。

「仕事ならルイージに頼んだら?」

「確かに配管工の仕事なら頼めますが、この1ヶ月の間に万が一クッパ軍が攻めてきたら、僕がこんな状態ではきっとクッパには勝てないですし、貴女を守れなくなります」

「!?」

「第一それを全部ルイージに任せるのも大変だと思うし、僕自身が嫌なんです。…どうしました姫?顔が真っ赤ですが…?」

「い、いえ…大丈夫、何でもないの。そ、それは確かに大変よね、うん」

((無自覚って怖いわね…))

キノピコと電話越しのミステールは両手で顔を隠し茹で蛸のように真っ赤なピーチの胸中を察し、憐れむしかなかった←

「ミステールさん、もっと早く元に戻る方法ってあるかしら?」

『ああん♡実はね、その若返り薬と対をなす成長薬というものがあるの♡』

「本当!?」
『でもね』

「?」

『私の所には残念ながらその成長薬はないの。私が普段贔屓にしてる、カラカラタウンにある薬屋さんに行けばきっとあるわ』

「成程、じゃあ僕が買ってきます」

『あーん…マリオちゃん1人だけじゃあちょっと心配だわ』

「え?」

『私が行っているのは普通の薬屋じゃない、魔法薬のお店なの。今のマリオちゃんのような小さい子が行くお店ではないわ。冷やかしだと思われるのがオチよ』

「た、確かにそうかもしれません。どうしましょうか…」

「あ、ルイージなら大丈夫じゃない?頼んでみましょうよ」

「うーん、そうしたいのですが…。実は、今日はサラサランドの方に行っていていないのです。デイジー姫に会ってくるそうで」

「あー、それならしょうがないわね。キノピコ…も大変そうよね。お城のお仕事があるし」

「すみません、お役に立てず…」

「大丈夫だよ、ありがとうキノピコ」

落ち込んでるキノピコをマリオが慰めている中…

「フッフッフ…」

「「?」」

ピーチが突然笑いだしたのだ。

「もうこれしかないわね」

「?、何がですか?」


「決めたわ!私がマリオについていくわ!」


「「え、ええええええ!?」」

この姫の発言に、発言者以外の全員が驚いた。

「だ、駄目ですよ!何言ってるんですか!一国の姫君が気軽に出歩かれるのは周りが困ります!」

「でも、今日中に行かないと貴方が困るのよ?そんな身なりじゃあ貴方1人でなんて無理だって分かってるでしょ?この中で事情を知っていて予定も無くてすぐ動ける大人はこの私だけなんだから!」

「うっ…!そ、それはそうですが…」

「それに…、私のせいでこんな事になってしまったのだから、これ位は私にやらせてほしいの…」

ねぇ、いいでしょう?と、シュンとした目でピーチはマリオを見る。
当のマリオは、腕を組み考え込む。だが暫くすると諦めたようにはぁ…と大きく溜息をついたのだった。

「仕方がありません」

「⁉、じゃあ…」
「まず」

「⁉」

「きのじぃに相談してからにしましょう。きのじぃがOKなら僕は何も反対はしません」

「え、ええええええ!?」
(なんて無理ゲーなの⁉)

思ってもみない一言にピーチは顔を青ざめるしかなかった。突然の危ない外出にじぃの許可がおりるとは到底思えなかった。


だが、天の助けはあるものである。


「そこはきっと大丈夫です!」

そう言ったのはキノピコだ!

「「!!」」

2人が驚いている中、キノピコは話を続けた。

「きのじぃさんは今日大掃除で張り切り過ぎてギックリ腰になってしまったようで、先程接骨院へ行かれましたよ!18時くらいになるとおっしゃってました」

「しめたわ!こうなったらきのじぃが戻ってくるまでに行っちゃいましょうよ!」

「そうですよマリオさん!今の内に!帰ってこられるまで後2時間半です!」

ピーチとキノピコはじーっと懇願の目でマリオを見る。
マリオは観念したように今迄で1番大きな溜息をついた。

「…分かりました。お願いします」

こうして、ちっちゃくなったマリオとピーチは薬屋に行くことになった!
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