女のヒーロー
その数時間後
~キノコ王国とある山の山頂付近~
「はぁ、全く。こんな所までぶっ飛ばされていたとは…」
日が昇り始め、照らされてきた小高い山の山頂付近。呆れ溜息をついたのは子クッパ7人衆の長男ルドウィッグ。
たった一人の女の手により空の彼方へぶっ飛んで行ってしまった我が主を探し回って数時間。やっと見つけたと思ったら、こんな山の山頂で上半身を地面にめり込ませ、気絶しているのか全く動きがない。そんな主のしっぽを部下達総出で引っ張らせている状態にもはや同情してしまう程だ、とルドウィッグは思ってしまっていた。
「なぁ、父さんは死んじまったの?」
そう言い心配そうな顔をしているのは末っ子のラリーだ。彼等7人は幼い頃よりクッパに拾われ、血は繋がってこそいないがクッパを本当の父親のように慕っている。彼等の絆は固い。
「大丈夫よラリー、お父様はそんなことで死にはしないわ」
「本当か!ウェンディ!?」
「もちろん」
7人衆の紅一点、ウェンディがそう返すと、ラリーはぱっと笑顔を取り戻した。そんな中場を崩すような笑い声…
「ギャハハハ!底の見えぬ生命力だからなぁ!」
「…その笑い方下品よイギー」
イギーは、賢いが何を考えているのか分からない危険性を孕んでいる。7人の中でも、破天荒さは右に出るものはいない。特にウェンディは、その下品な笑い方を毛嫌いしていた。
「なぁ!ルド!!」
「なんだモートン?」
ルドウィッグに大きな声で話しかけてきたのはモートンだ。ルドウィッグは、名前が長いので、皆からルドと呼ばれているようである。
「親父を引っ張るの俺も手伝ってきていいかぁ!!」
「あぁ、勿論だ。行って来い」
「うおおおおおお!!よし!ラリー!レミー!引っ張りに行くぞ!!」
「おう!」
「ちょっ;なんでオイラまで行かなきゃなんないのさぁ!?」
「いいからボールから降りてこっち来いレミー!!親父の為だ!!」
「ちぇ、分かったよ;」
モートンは、7人の中でも腕っぷしには自信がある方だ。だから引っ張る仕事を自ら買って出たのであろう。
モートンとラリーの後をボールから降りながら追いかけていくレミーを見届けていると、ルドウィッグの隣にいたロイが話しかけてきた。
「なぁルド」
「なんだ?」
「親父殿をぶっ飛ばした女ってどんな奴だ?」
「赤い帽子に青いオーバーオールを着ていたそうだ。それ以上は俺も詳しくは聞いていない」
「ていうかロイ、アンタなんでその怪力女のこと知ろうとしてる訳?」
「親父殿はきっと目覚めたらその女の元へ行き攫うか殺すかするだろうからな。俺らが知っていなけりゃいけないだろうよ」
ロイは7人の中で一番冷静な男だ。そのサングラスのせいで一見荒っぽい奴だと思われがちではあるが。
ロイはウェンディの突っかかるような質問にさらりと返していく。
「親父が抜けるぞおおおお!!!」
ズッボオオオオオン!!!
「「!?」」
モートンの叫び声と共にクッパの上半身が1日ぶりに地上へと飛び出した!
ルドウィッグたちもクッパの元へと駆け寄る。
「親父!!」
「父さん!!」
「「クッパ様!!」」
部下達がそれぞれクッパに声を掛けていく。それ程彼等の忠誠心の凄まじさを物語っている。その声に応えるように、クッパは唸り声をあげ目を薄く開いたのだった。
「ぐうう…」
「あ!気が付いたみたい!」
「「クッパ様!!」」
「…ぐぁ…、お前達か…」
クッパは半身を起こし、手を首の後ろにあてポキポキと首の骨を鳴らした。長時間同じ姿勢のままで植わっていて身体のあちこちが悲鳴をあげているようだ。
「気分はどうだ?親父殿」
「あぁ、最悪だ…;体中が痛い…」
「だろうな」
そう言ってルドウィッグは苦笑する。彼も皆も、主がとりあえず生きている事に安心していた。
「…。ルドよ、ここは一体どこなのだ?」
「あぁ、ここはクッパ城から遠く離れた山の上だ。あの怪力女に飛ばされて」
「ここで親父殿は1日以上山に刺さっていたようだぜ?」
ルドウィッグの言葉にロイが付け加えるようにそう言った。これにはクッパも驚きを隠せない。
「何!?丸1日も!?というかあの女はどうしたのだ!?」
「すまない。俺たちが城に駆け付けた時には既にもぬけの殻だった。向かわせた尾行班も全滅。王子と行動を共にしているなら王宮に向かったとは思うが…」
「ぐ…そうか…」
(なんて女だ…。流石としか言えんな…)
こうなると予測できたのなら、7人衆を遠征に出させるべきではなかったか、と思いながら、最強を誇るクッパ軍を手玉に取るような女にクッパはより一層興味が湧いた。
(何としてもあの女の事が知りたい…)
そうクッパが思った時…
「ほぅほぅ…マリーちゃんねぇ…ギャハハハハ!」
「「!?」」
声のする方へ振りむくと、イギーが何故か新聞を読んでいたのだ。
「アンタ!それ今日の朝刊じゃない!?なんで持ってる訳!?」
「パクってきた」
「イギー!ちょっと見せるのだ!!」
クッパはそう言うや否やイギーから新聞をサッと奪い1面を見る。
するとそこには、王子の帰還と王子を助けた女の英雄のことがでかでかと書かれていた。
「流石マスメディア。やることが早いな…」
「此奴がマリーか!!」
「思ったより小っちゃいんだな!」
「へぇ、あの王子、そのマリーって子に告ってふられたみたいだね」
「プッ、何それダサくない?」
他のコクッパ達もクッパの周りに集まり口々にマリーについて語っていく。
「で、親父殿はこの女をどうするつもりなんだ?」
ルドウィッグの質問にコクッパ達全員の視線がクッパに集まる。この女の処遇がどうなるのか皆気になるからだ。
だが、クッパは彼等の予想とは全く異なることを言ったのだ。
「フッ、此奴はこの我輩を倒し、軍を手玉に取った女だ。より一層欲しくなった」
・・・。
「「え?」」
「決めた!この女を我輩のものにする!」
「「え、
えええええええええええええええ!!!?」」
誰もが予想していなかった発言に、彼等の驚きの声は山彦となってどこまでも響いていたのだった。
つづくかな?
次、あとがきとキャラ補足
~キノコ王国とある山の山頂付近~
「はぁ、全く。こんな所までぶっ飛ばされていたとは…」
日が昇り始め、照らされてきた小高い山の山頂付近。呆れ溜息をついたのは子クッパ7人衆の長男ルドウィッグ。
たった一人の女の手により空の彼方へぶっ飛んで行ってしまった我が主を探し回って数時間。やっと見つけたと思ったら、こんな山の山頂で上半身を地面にめり込ませ、気絶しているのか全く動きがない。そんな主のしっぽを部下達総出で引っ張らせている状態にもはや同情してしまう程だ、とルドウィッグは思ってしまっていた。
「なぁ、父さんは死んじまったの?」
そう言い心配そうな顔をしているのは末っ子のラリーだ。彼等7人は幼い頃よりクッパに拾われ、血は繋がってこそいないがクッパを本当の父親のように慕っている。彼等の絆は固い。
「大丈夫よラリー、お父様はそんなことで死にはしないわ」
「本当か!ウェンディ!?」
「もちろん」
7人衆の紅一点、ウェンディがそう返すと、ラリーはぱっと笑顔を取り戻した。そんな中場を崩すような笑い声…
「ギャハハハ!底の見えぬ生命力だからなぁ!」
「…その笑い方下品よイギー」
イギーは、賢いが何を考えているのか分からない危険性を孕んでいる。7人の中でも、破天荒さは右に出るものはいない。特にウェンディは、その下品な笑い方を毛嫌いしていた。
「なぁ!ルド!!」
「なんだモートン?」
ルドウィッグに大きな声で話しかけてきたのはモートンだ。ルドウィッグは、名前が長いので、皆からルドと呼ばれているようである。
「親父を引っ張るの俺も手伝ってきていいかぁ!!」
「あぁ、勿論だ。行って来い」
「うおおおおおお!!よし!ラリー!レミー!引っ張りに行くぞ!!」
「おう!」
「ちょっ;なんでオイラまで行かなきゃなんないのさぁ!?」
「いいからボールから降りてこっち来いレミー!!親父の為だ!!」
「ちぇ、分かったよ;」
モートンは、7人の中でも腕っぷしには自信がある方だ。だから引っ張る仕事を自ら買って出たのであろう。
モートンとラリーの後をボールから降りながら追いかけていくレミーを見届けていると、ルドウィッグの隣にいたロイが話しかけてきた。
「なぁルド」
「なんだ?」
「親父殿をぶっ飛ばした女ってどんな奴だ?」
「赤い帽子に青いオーバーオールを着ていたそうだ。それ以上は俺も詳しくは聞いていない」
「ていうかロイ、アンタなんでその怪力女のこと知ろうとしてる訳?」
「親父殿はきっと目覚めたらその女の元へ行き攫うか殺すかするだろうからな。俺らが知っていなけりゃいけないだろうよ」
ロイは7人の中で一番冷静な男だ。そのサングラスのせいで一見荒っぽい奴だと思われがちではあるが。
ロイはウェンディの突っかかるような質問にさらりと返していく。
「親父が抜けるぞおおおお!!!」
ズッボオオオオオン!!!
「「!?」」
モートンの叫び声と共にクッパの上半身が1日ぶりに地上へと飛び出した!
ルドウィッグたちもクッパの元へと駆け寄る。
「親父!!」
「父さん!!」
「「クッパ様!!」」
部下達がそれぞれクッパに声を掛けていく。それ程彼等の忠誠心の凄まじさを物語っている。その声に応えるように、クッパは唸り声をあげ目を薄く開いたのだった。
「ぐうう…」
「あ!気が付いたみたい!」
「「クッパ様!!」」
「…ぐぁ…、お前達か…」
クッパは半身を起こし、手を首の後ろにあてポキポキと首の骨を鳴らした。長時間同じ姿勢のままで植わっていて身体のあちこちが悲鳴をあげているようだ。
「気分はどうだ?親父殿」
「あぁ、最悪だ…;体中が痛い…」
「だろうな」
そう言ってルドウィッグは苦笑する。彼も皆も、主がとりあえず生きている事に安心していた。
「…。ルドよ、ここは一体どこなのだ?」
「あぁ、ここはクッパ城から遠く離れた山の上だ。あの怪力女に飛ばされて」
「ここで親父殿は1日以上山に刺さっていたようだぜ?」
ルドウィッグの言葉にロイが付け加えるようにそう言った。これにはクッパも驚きを隠せない。
「何!?丸1日も!?というかあの女はどうしたのだ!?」
「すまない。俺たちが城に駆け付けた時には既にもぬけの殻だった。向かわせた尾行班も全滅。王子と行動を共にしているなら王宮に向かったとは思うが…」
「ぐ…そうか…」
(なんて女だ…。流石としか言えんな…)
こうなると予測できたのなら、7人衆を遠征に出させるべきではなかったか、と思いながら、最強を誇るクッパ軍を手玉に取るような女にクッパはより一層興味が湧いた。
(何としてもあの女の事が知りたい…)
そうクッパが思った時…
「ほぅほぅ…マリーちゃんねぇ…ギャハハハハ!」
「「!?」」
声のする方へ振りむくと、イギーが何故か新聞を読んでいたのだ。
「アンタ!それ今日の朝刊じゃない!?なんで持ってる訳!?」
「パクってきた」
「イギー!ちょっと見せるのだ!!」
クッパはそう言うや否やイギーから新聞をサッと奪い1面を見る。
するとそこには、王子の帰還と王子を助けた女の英雄のことがでかでかと書かれていた。
「流石マスメディア。やることが早いな…」
「此奴がマリーか!!」
「思ったより小っちゃいんだな!」
「へぇ、あの王子、そのマリーって子に告ってふられたみたいだね」
「プッ、何それダサくない?」
他のコクッパ達もクッパの周りに集まり口々にマリーについて語っていく。
「で、親父殿はこの女をどうするつもりなんだ?」
ルドウィッグの質問にコクッパ達全員の視線がクッパに集まる。この女の処遇がどうなるのか皆気になるからだ。
だが、クッパは彼等の予想とは全く異なることを言ったのだ。
「フッ、此奴はこの我輩を倒し、軍を手玉に取った女だ。より一層欲しくなった」
・・・。
「「え?」」
「決めた!この女を我輩のものにする!」
「「え、
えええええええええええええええ!!!?」」
誰もが予想していなかった発言に、彼等の驚きの声は山彦となってどこまでも響いていたのだった。
つづくかな?
次、あとがきとキャラ補足