流れ星
もうほとんど残されていない魔力を絞り出し、集めた全魔力を羽根へと集中させる!
ポン!ファサ…!
魔力を帯びた羽根は馴染みの黄色いマントに無事変わり安心したのも束の間、そのマントを勢いよく業火球に向かって振るった!
フワッ!
ズザザザー!
「いてて…」
(よし…!)
マントを振るうと火球は跳ね返り、軌道が反れた!その隙にマリオはスライディングの形を取りながらハンマーを拾ったのだ。そしてマントはすぐに羽根へと戻った。
「くそっ!!小癪な…!」
「やった…!」
この結果にクッパは驚き怒りを隠せない。ピーチも安堵していた。
だがそんな中、マリオはハンマーを手にした時から変な感覚に包まれていた。
(なんだろ…?ハンマーの力が僕の中に流れ込んでくる…。
これが…流れ星の力…?
いや、それだけじゃない…。
この、心が温かくなるような、優しさに包まれるような…とても安心できる力…。)
ふと彼は、ピーチの方を見た。するとピーチもマリオの方を見ていたようで、視線がピタリと合った。
彼女の表情は、先程の事で少し安堵はしていたものの、未だに不安は抜け切れない。…でも、その目に宿る光は諦めの色を帯びてはいなかった。
(あぁそうか…、彼女も戦っているのか…)
マリオはそう思った時、このハンマーの事も何か分かったような気がした。
そして、不安な表情を浮かべている彼女ににこっと微笑むと、彼女は一瞬驚いたようだったが、すぐに微笑み返してくれた。
それを見て少しほっとすると、マリオはクッパの方へと視線を戻した。
「ふん、そんな脆そうなハンマーを手にしたって結果は見えているぞ」
「さぁ、それはどうかな?」
「何?」
「物は見た目で判断しちゃいけないってことさ」
「小賢しい!そんなもの我輩の拳で粉々にしてくれるわぁああ!!」
ダダダッ!!
クッパはそう叫びながら走り出した!マリオもそれに応えクッパ目掛けて走り出す。
もう限界な身体は走るだけでも悲鳴を上げる。
マリオはその悲鳴を聞こえない振りし、更に歯を食いしばりながらハンマーを構え走る!!
「マリオ…!!」
(お願い…マリオにご加護を…!!)
ピーチはぎゅっと両手を組み願う…。
それに応えるかのように、流れ星は続々と落ちてきた。
今度はクッパではなく…
シューーン…
キラーン!!
「!?」
(流れ星が…ハンマーに吸収された…!?)
シューーン…キラーン!!
シューーン…キラーン!!
マリオが驚くのも無理はない。いくつもの流れ星がハンマーに落ち、ハンマーの中に入っていくのだ。
流れ星がハンマーに宿れば宿る程、ハンマーは眩しい程の光を帯び、超絶な魔力を持つハンマーとなったのだ!
「ぐっ…」
(くそ、眩しい…!)
クッパは眩しさのあまり目を細め、走るスピードも遅くなる。
マリオはその隙を見逃す気は無かった。
「クッパ!」
「!?」
「今日の所はこの一撃で終わりにするよ!」
「ぬかせぇっ!!」
ブンッ!!
クッパはそう言うマリオに目掛けて拳を繰り出す!
だが、眩しさのあまり標準を定めきれていないパンチは、マリオが避けるには容易なことで、虚しくも空を切る。
「!?どこだ…!?」
クッパは細めた目を開くとマリオの姿が見えず、若干の焦りが生じる。戦いの場において、敵の姿が見えないということは何よりも怖い事なのだ。
「ここだよ」
「!?な…!?」
(此奴、いつの間に…!)
マリオはいつの間にかクッパの背後を取っていた。体の小ささを利用して、パンチの瞬間、がら空きだった足の間をスライディングでくぐったのだ。
そしてクッパが振り返った時、マリオは既にハンマーを構え、今まさに振らんとしていた!
「しまっ…!」
(くそっ!この距離では避けきれん…!!)
「食らえぇえ!!」
ドゴオオオオオ!!!
クッパが振り返った瞬間、マリオはクッパの腹部に目掛けて、下から上へとハンマーを振り上げた!
「グフゥウ!!」
「ぐぐぐ…!」
攻撃は見事腹部に命中!マリオはそのままクッパを、自分の中に残っている全部の力を込め更に振り上げる!
「いっけええええ!!!」
ついにマリオはハンマーを振り切り、見事クッパを上空へと飛ばした!
「ぐわぁああああああ!!」
そしてクッパが飛んでいく先には…
彼がさっきまで乗っていた飛行船があったのである。
「だあああ!!?ちょ、ちょ、待て…!!」
クッパは焦るも、マリオ渾身の超絶な威力のハンマーによる一振りは、クッパほどの重量でも吹っ飛ぶ威力が損なわれる筈なく…
ドゴーーーン!!!!
「ぎゃあああああああああああ!!!!」
猛スピードで飛ばされたクッパは為す術も無く飛行船と衝突。
飛行船はその衝撃に耐えられる筈もなく爆破!
クッパは元来た方角へと吹っ飛んで行ったのだった。