流れ星
「マリオが…!?」
「…はい、そのようで…」
私は、キノじぃからのその一言にショックを隠し切れないでいた。
流星群を見る約束の電話をした2日後、突然の依頼でマリオは近隣のとある国へ行かないといけない事になったの。
流星群が来る時間までには帰ってくるから…。
そう告げて彼は出掛けて行った。
そして今日が、流星群が来る日。…彼が帰ってくる筈の日。
だけど、帰って来たのは、彼と共に出発したはずのカメラマンのジュゲムだけだった。
余りにもショックなお土産を引っ提げて…。
「カメラマンの話によりますと、依頼を終えたマリオ殿は、キノコ王国に帰る途中鉢合わせたクッパ軍と交戦し、一緒にいたカメラマンを逃がしたそうですじゃ。そしてそのままマリオ殿との連絡が取れず…」
「行方不明…」
今でもこれが夢の中なんじゃないのかと疑ってしまいたくなる程の事実に眩暈がする。そんな私の状態も知らないでキノじぃは説明を続けていく。
「はい…。今現在、我が王国もルイージ殿を筆頭に捜索隊を立ち上げ、マリオ殿が交戦した現場に向かっております」
「マリオ…」
その後のキノじぃの話も、私の事を心配して来てくれたキノコ大臣の話も全く頭に入ってこなかった。
~ピーチ城ピーチの部屋~
「…」
私は自分の部屋で一人、ベッドに腰掛けながら窓から見える空をぼんやりと見ていた。公務があったけれど、私にとっても、そして王国にとっても一大事で公務どころじゃなかった。
私自身余りにもショックすぎて、何も手につかない…。
頭の中ではあの日のマリオとの会話が嫌でもぐるぐると回っているの。
そして、脳裏に焼き付いているあの笑顔…。
その彼の笑顔を思い出す度に、目からじわっと熱いものが込み上げてくる…。
「マリオ…」
その時…
♪~♪~
「?」
突然携帯の着信音が鳴りだした。確認すると、電話の相手はデイジーからだった。
私は通話ボタンを押し電話に出た。
「もしもし…」
『はぁい、元気…ではないわよね』
「どうしたの…?」
『…。ルイージから話は聞いたわ。マリオ、見つかってないんですってね』
「えぇ…」
そして暫しの無言が続く…。そんな元気のない私の様子を察してなのか、デイジーは一言私に訊ねた。
『…ねぇピーチ、貴女どっかで諦めてない?』
「え…?何を?」
『マリオは生きてるって思う事』
「!?」
ドキリ…
彼女からその言葉を聞いた時、何故か心臓がはねた。
そうは思っていない筈…筈なのに…何故私はこうも動揺しているの…?
「…」
答えられない私に、デイジーはため息をついた。
『落ち込む気持ちは分かるわ。とても辛いわよね。でも、今1番辛い思いをしているのは貴女じゃなくて、他でもないマリオなのよ?』
「それは…分かって…」
『いいえ、分かってない』
「!?」
『他の皆はマリオを助けようと頑張っているのに、貴女は何もしてないでただ落ち込んでいるだけなの?』
「それは…っ」
違う!…そう言おうと思ったけれど、その一言が出せなかった。…出せれなかった。
『マリオを信じなさい!そして貴女が今出来ることは何!?貴女がそんなんじゃ、助かる命も助からないわよ!』
「!」
信じる…。
そうよね。私が信じていなきゃ、今頑張っているマリオや皆の思いを裏切っているのと同じになっちゃうわよね。
…よし!
「分かったわ…」
『?』
「お陰で目が覚めたわ。ありがとデイジー!」
『いえいえ、我が国も全力で応援するわ!何か協力してほしいことがあったら言って頂戴!』
「うん!ありがと!」