花火大会


「はぁ…」


ピーチは緊張が解れ、その場にへなへなと座り込んでしまった



「大丈夫ですか?」


マリオはピーチのもとへ近付き手を差し延べる




「…」




だが、マリオが尋ねても、ピーチは黙ったまま、座り込んで俯いたままだ





「?…姫?」





「…なさい」

「?」








「ごめん…なさい…」




震えた肩から漏れる、小さくも確かにきこえてくるその言葉




「いいえ…、貴女から目を離していた僕も悪いのです。」




「いいえ…っ!貴方が悪いんじゃないの…!」



そう言い顔を上げる彼女の目から、一筋のあついものが、頬をつたっているのが見えた…




全部私のせい…!



悪気の無い貴方の行動に拗ねて、貴方の前からいなくなったし



貴方が一生懸命私を探してくれるのを知ってるのに、来ないと思ってしまった。


それなのに、襲われた時貴方に救いを求めてた。なんて嫌な女なんだろう。




貴方に謝りたいことは一杯あるのに、何故か言葉が出てこなかった。





でも




「姫…、僕にだって悪い所はありますよ。ほら…、貴女にこんな嫌な思いをさせてしまったじゃないですか…」


スッ…



マリオは座り込んでいるピーチの前に片膝を下ろし、自らの指で彼女の涙を拭った



「貴女にとって、今日は特別な日だから、貴女に嫌な思いをさせたくなかった」

「…」




「数日前から、この日の事をクッパ軍が嗅ぎ付けていたんです」


「え!?」


これは、ピーチにとっては想像すらしていないことだった



「だから、折角貴女が立ち上げた花火大会をクッパに目茶苦茶にされたくなくて…。内心、自分でも分かってしまう位ピリピリしてたんですよ;」


そう言いマリオは、何かをごまかすかのように苦笑いをした




…そうか


「だから帽子を…」

「えぇ、万が一に備えて;」


だからさっきも…


必要以上に殺気立てて…



私、本当に…



何も分かってなかったんだ



「貴女の為にと思ってやっていたことなのに、かえって貴女を悲しい思いにさせていたのですね…、本当に…申し訳ないです…」



「いいえ…」


「?」





「貴方だけが悪いんじゃない。私も分かっていなかった、貴方のこと…!」


「ぇ?」


「貴方の気持ち全然考えていなかった。貴方はこんなにも私のことを考えてくれたのに…、私は自分のことしか考えてなかった…」


「姫…」




「だから…」









「ごめんなさい…」


彼の瞳に向けて放つこの一言が、意地っ張りの私にとってこんなにも自然と出てきたのには正直とても驚いていた


きっと、本当に、心の底から、出てきた言葉だからかなとピーチは思った



スッ…


「?」


いきなりマリオはピーチに手を差し延べた



「仲直り…しませんか?」

「…へ?」


「仲直りの握手です。仲直りする時は、こうして握手をするそうですよ」


「握手…」


「握手…します?」



「…えぇ」


そんなの…子どもの頃にしたっきりだっけ…


そんなことを思いながら、ピーチは手を差し出しマリオの手を掴む…



「「なーかなーおりーのーあーくーしゅ!」」



「…フフ」

「フフフ…」



握手をした後、何故か今までの事が馬鹿らしくなっちゃって…



私もマリオも一緒に笑ってた



仲直りして本当に良かった






そう思った時…






ドーンドドドーンドーン!!


「!?」



急に空が騒がしくなった




「あ!!」


マリオが時計を見て何故か驚いている


「?どうしたの?」

「姫!この花火もうフィナーレですよ!!」




・・・。





「ええええええ!!!?」




「嘘!?私全然見てない!!」
「ここからだと全然見えないですねぇ…;」


2人の居る場所はちょうど路地の入り組んだ所であり、花火が建物に隠れて全然見えなかったのだ!


「どうしよう…最後だけでも見れたらいいのに…」





「そうですね。見える位置に移動しましょう!」



ヒョイ



「え?;」



ピーチはマリオにお姫様抱っこされていた



「え?ちょ、どこ行くの」「捕まってて下さい!」



「え!?」
ピョイーン!!



「キャーーーー!!! 」


マリオはピーチを担いだ状態でジャンプした!


タンッタンッタンッ!


建物の間を壁キックで登り



スタッ!



見事、何処かのマンションの屋上に着地した



「姫、いいですよ」


そう言いマリオはピーチを降ろす



「ふぅ…。…わぁ!綺麗…!!」




ドーンドーンドドドンドーンドーン!!




このマンションの屋上からなら、会場で上がる花火を一望することができた



「良かったですね間に合って」

「えぇ…本当に良かった」


マリオと一緒に花火を見れて…



本当に良かった!




ドーンドーン!!



「ねぇマリオ」

「?」




「また来年も、一緒に花火見ましょうね」

「えぇ、そうですね」




この夏、今年からキノコ王国一になるであろう花火大会は、華やかに彩られる、沢山の大きく咲く花火達と共に、閉幕を向かえるのであった。




おわり



次、後書きとおまけ
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