イカ
〜海中〜
ブクブクブク…
落ちた天井のせいで底が抜け、深く暗い海底が崩壊している建物のあちこちから顔を覗かせていた。
どうやらマリオは壊れた天井や瓦礫と共に下のフロアへと落ちてしまったようだ。
イカの彼女の魔力のお陰で今までは照明がつき明るかったが、今はその照明が無く、一寸先は闇という状況に陥っていた。
暗い上に崩れた瓦礫も降ってくる中、ルイージは無我夢中で下へ下へと泳いでいく。
(兄さん…何処だ…⁉︎)
いくらマリオだからといってもそう長くは息は続かない筈だ。もっても後数分であろう。
焦るルイージ。
だが
(お、落ち着け、焦ったら何も見えない)
一度目を閉じ手を胸に当て、落ち着くと共に兄が何処にいるか意識を巡らしてみる。
(兄さん、何処…?)
意識を更に集中し、どんな変化も感じられるように神経を尖らせる。
すると…
…イ…ジ
「あ…!」
海の底から、微かだがルイージを呼ぶ声が胸に響いてきたのだった。
「兄さん!!」
ルイージは兄を心で呼びつつ、声を感じた方向に向けて全速力で泳ぎ始めた。
その声に反応するように、ルイージを呼ぶ声は次第にハッキリと大きく感じ取れるようになっていった。
暗さに順応し、辺りが少し見える様になってきた頃…
ルイージは建物の最下層付近に辿りついた。
浮力を無くした建物は既に底へ辿りついた故に、沢山の瓦礫が散乱し積み重なっていた。
マリオは何処か…?
無事を祈りながら探すルイージであったが、1つの瓦礫の山の前で止まった。
(ここだ!この瓦礫の山から兄さんの声を感じる…!)
そう感じたルイージはすぐさま近づき隈なく瓦礫の間を見て回る。
すると…
「いた!!」
なんと瓦礫の間にフィギュア化したマリオの身体が挟まっていたのだ!
やはり天井の落下の衝撃に耐えられなかったのであろう。不幸中の幸いで、マリオは窒息を免れていたのであった。
ルイージはすぐさまマリオを引き抜きにかかるも、瓦礫が重く中々引き抜くことが出来ない。
(こうなったら…)
ルイージはマリオに被さっている瓦礫に狙いを定め、全身に力を込め始めた!
(兄さん…)
「頼む、当たってよね…!
スーパージャンプパンチ!!」
ルイージはそう言うと拳を突き出し瓦礫に向けて勢いよくジャンプした!
彼のスーパージャンプパンチは当たりどころによって威力が全く異なる、所謂博打技だ。
当たりが悪ければカスった程度の威力にしかならないが、見事真を捉え突いた時…
ドゴッ!!
カッキーーーーーン!!!!
爆発的な威力を発揮することができるのだ。
不安定な技だが、これは不安定な彼だからこそ使える技なのである。
普段は臆病ですぐ迷う彼が覚悟を決めた時、放つ一撃は強く重く響くのだ。
ガラガラガラガラ!!
水中でも高威力のようで、見事ヒットした瓦礫は他の瓦礫を巻き込みながら高く舞い上がり、その隙にルイージはやっとの思いでマリオを引き抜くことに成功したのだ。
「兄さん!!良かった…!」
ルイージは引き抜いたマリオのフィギュアを抱き寄せ、もう離さないとばかりに強く抱きしめた。
その時
やっと見つけたぞ〜
パァアアアア!!
「えぇ⁉︎」
(その声は…⁉︎)
聞き覚えのある声が何処からともなく聞こえたかと思った瞬間、ルイージとマリオは突如現れた光に包まれた。
その光はすぐにまた消え、そこには誰も居なくなっていた。